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葬儀の事例

葬祭ディレクターの印象に残った
ご葬儀を紹介します。

故人様の好きだった曲でお別れを
 6人の家族葬を希望されていた喪主様。故人様の好きであった「ふるさと」をシンセサイザーを使用して曲をささげたいというご希望がありました。

 しかし、自宅安置だったため、会社や喪主様宅への問い合わせが多発。そこで近所の方のみという条件で式にお招きすることになりました。お通夜が終わり、一般の方は20名ほど参列していただき、喪主様も驚かれていましたが、この時、さらなる感動が待ち受けているとは私も思いもしませんでした。

 式の中でご住職が退席し、シンセサイザーで曲を流し、非常に感動的な流れとなり、お花入れが終わり、お蓋締めの際に一人の会葬者様がおもむろにふるさとを小さな声で歌いだしたのです。すると、その歌が自然と他の方へと伝わっていき、最後は全員の大合唱となりました。普段冷静な喪主様も涙を流し、大きな声で歌われており、その姿、その雰囲気がどれも印象的で感動に包まれた素敵な式でした。


音楽葬


奥様からご主人へ受け継がれたもの
 庭作業の好きだった奥様を亡くしたご主人。葬儀が終わり、ふと庭を眺めながら亡くなった奥様を思い出す。そこに庭作業をする奥様を重ね、「あの花を大事にしていたな。」とご主人も庭作業を始めてみる。葬儀の時は、奥様の好きな色の花をたくさん飾り、喜んでくれていただろうかと考えていた。
 庭作業は思いのほか大変で最初はなかなかうまくできなかったが徐々に慣れてきた。そんなある日、1匹のアゲハチョウが庭に舞ってきた。奥様が大事にしていた花にとまる。今まで庭でアゲハチョウを見たことが無かったご主人は「きっと、庭作業をする私を心配して見に来たのかな。」しばらくするとアゲハチョウは再び舞いはじめ、どこかへ飛んで行ってしまった。
 それから毎日のようにアゲハチョウが庭を舞うようになり、まだ自宅にある遺骨の傍に奥様の好きだった花を飾った。「私は大丈夫だから、心配しなくてもいいよ。あの花も大事に育てるから。」そうつぶやき、手を合わせる。「きっと葬儀にも満足してくれていたに違いない。」遺影の顔が少し笑っているように見えた。

 その話を後日聞かせていただいた際、感動するとともに、本当に素敵なご夫婦だったのだろうと心から感じました。


一般葬


葬儀と結婚式をひとつに
 過去に4回喪主を経験し、その4回とも依頼した葬儀社が違うというお客様とのエピソードです。

 普通なら一度頼んだ葬儀社の方が、施行担当者や金額面でもある程度の目安が付くのがこの業界かと思います。私は打合せの際に、なぜ前に依頼をした会社に頼まず違う会社に依頼をしたのかを伺いました。これは葬祭ディレクターとしてどうしても聞いておきたかったからです。

 お客様は、前に頼んだ葬儀社は金額が高ったので仮に同じ内容であったとしても前より安いところでと考えていたそうです。実際、御不幸がある数カ月前に弊社に「事前相談」にお越しになり前もって金額面も確認をしていたので安心して御依頼頂けたかと思います。

 さらに私へのハードルが上がったのは葬儀社は違っても4回とも、場所は同じということ。勿論、以前に依頼した葬儀社より、金額、サービス、満足度すべてにおいて「良くなければならない」という事は当然です。

 打合せはスムーズに進みましたが喪主様や御家族の希望は「結婚をしていない伯母なので、華やかに送ってあげたい。伯母の結婚式と葬儀を両方してあげたい」という希望でした。

 飾る祭壇は従来ある白木祭壇では無く、生花で作成するお花の祭壇。故人様の好きだった色や花を伺い、できる限り希望に添えるようにしたいという一心でした。生花祭壇を作る中で大きく作る為には、それなりの費用が掛かります。ただ、事前にお見積りを提示している上で多額な花祭壇になっては「前に依頼をした葬儀社」と変わらない話になってしまいます。
 そして迎えたお通夜当日、打合せの際はカタログでしかお客様に伝えられなかった祭壇が初めて自身の目で見て頂く瞬間です。正直、この時が一番私達担当者は緊張する瞬間でもあります。理想以上のものを、その金額の中で提供する。という事をモットーに当日まで打合せを重ね、担当者として従事してきました。

 そして、告別式が終わり、お骨が御自宅に帰る際、私も一緒に伺い納骨までの後飾り段を作りに行きました。最後、喪主様に挨拶をし失礼する時に「これからは御社に全て任せるから辞めないでがんばってくれよ。今までの葬儀の中で一番良かった上に金額も安かった、何もいう事はない、本当に2日間お世話になりました」と頭を下げられました。

 「伯母様の葬儀と結婚式」家族葬の中で、金額だけじゃなく、ありきたりなものでも無く、本当にオリジナルな式にするというのが、これから多くなっていく家族葬の在り方だと感じます。
ただ人を呼ばないから費用面を抑えるのではなく、すべてをこんな形で送ってあげられることが葬祭ディレクターとしてのやりがいではないかと心から感じたご葬儀でした。


家族葬


葬儀の思い出話に花が咲く
 とんかつ屋のご主人が亡くなり、喪主を務める奥様と葬儀の打合せを行いました。奥様のご希望は、お店のお客様に弔問に来ていただいて、主人を偲んでもらいたいとの事。
 担当者は2つの提案をしました。1つ目は「大将!毎度!」とお店に来る雰囲気で弔問に来てもらい、女将さんが「いらっしゃい!おかえりなさい!」と出迎える事。2つ目は費用は掛かるが、式場の入り口をお店の入り口と同じようにドアの作製をしてお店ののれんを飾り、入り口に出前用の岡持ちが付いたバイクを置き、お客様を迎えることでした。

 お通夜の当日、お客様が式場に到着するとお店と同じ門構えに驚き、入り口を入ると割烹着姿の女将さんが「いらっしゃい!」と皆さんを出迎える。式場に入ると故人を偲ぶ導線として、遺品コーナーが設けられており、パネルに沢山の写真や遺品の装飾。
 出棺当日、お客さんには笑われたが、担当者がご主人愛用のバイクにまたがり、霊柩車・ハイヤー・マイクロバスを先導して火葬場へと向かう。当然のことですが、火葬場の職員、同業葬儀社の方々にも笑われました。火葬が終わり、またもバイクで先導して式場へと戻る途中でバイクがガス欠となり、ハイヤー・マイクロバスを先に式場へと向かわせ、急いでガソリンを入れて式場へと向かうと初七日法要も済んでおり、皆さん精進落としを行っていおりお寺の住職を含め親族に再度笑われました。
 葬儀全てが終了し、担当者が御自宅にお邪魔すると葬儀の思い出話に花が咲いていた。女将さんからは、色々有りましたけど、思い出に残るお葬式でしたと言われ、これからもこの世界でがんばっていこうと思えたご葬儀のひとつとなりました。


一般葬


心が変化する瞬間
 これはお孫様の気持ちの変化に感動したエピソードです。A君はおじい様が大好きで、可愛がってもらっていました。この日も、おじい様と普通に遊んでもらい、自宅に帰りました。
その晩、おじい様が突然倒れて、翌朝亡くなられました。

 通夜までは3日間あり、当社霊安室で安置されており、毎日ご両親とお参りに来ていました。その時も、笑顔で「じいじ、今日ね・・・」と、話しかけておりました。

 そして、通夜を迎え、たくさんの方がおじい様とお別れし、涙を流している方や、笑顔で語りかけている方、いろいろな方がおじい様とお別れしているのをそばで何気なく見ていたA君。でも、従兄の子と一緒になって会場を駆け回り、いつも遊んでいるのと変わらない様子でした。

 葬儀当日も昨日と変わらない様子のA君、式の最中も落ち着かない様子でした。葬儀が終わり、喪主(A君の父)の挨拶時、代表席から一緒に立ってお父さんの挨拶を隣で聞いていたA君。時折、お父さんの方を見つめ、お父さんの言葉をじっと聞いている様子でした。そして、最後のお別れ。お花入れが始まりました。A君もはじめはたくさんのお花を棺の中に入れるのが面白い様子でした。おじい様の棺がたくさんのお花で埋め尽くされ、いよいよ蓋を閉じるとなった時。
 今まで、笑顔も見せていたA君が突然「じいじ!じいじ!」と大きな声で呼び始めました。それを見ていた、ご両親、親戚の方が、声を抑えて泣いている姿がありました。A君は大きな声でじいじと呼びながら、大きな声で泣いていました。

 A君の心の中はわかりませんが、7歳ながらに葬儀を通じて、人が亡くなり、たくさん方がお別れし、大人の表情や感情を肌で感じているうちに、本当に大切な人がいなくなるのは本当に悲しいものなんだ、もうじいじと遊べない、いなくなっちゃいやだ、等々の気持ちが生まれ、死について学んだ瞬間なのかもしれません。




一般葬