2024-11-29
仏事に参列する際は、香典をお渡しするのが通例です。香典とは、故人様にお供えするお香や供花の代わりとして、参列者が持参する金銭のことです。香典には、格式の高いご葬儀、そしてその他の法事で古くから言い伝えられているマナーや渡し方など、さまざまな決まりがあります。
そこで当記事では、香典の意味や使用すべき袋の選び方、金額相場をご説明していきます。
香典(こうでん)は、お通夜やご葬儀、告別式に出向く際、故人様へお供えするものの代わりとしてご遺族に差し出すお金です。香典には、故人様の冥福を祈り、ご遺族への弔意を示す意味が込められており、仏事の場面や参列者の立場によって金額が異なります。
香典は「香奠」とも書かれ、この「奠」の字には、故人様へ捧げる供物との意味が示されているのです。昔の日本では、多くの場合ご自宅でご葬儀が行われていました。そこへ訃報を知った参列者が各自でお香を持参し、祭壇前で焚いてからご葬儀の準備を手伝うことが恒例だったのです。
現代では、葬儀社がご葬儀の準備を引き受けるようになったため、ほとんどの地域でご近所や親戚などが出向いて手伝うようなやり取りは不要になっています。そこで参列者は、お香や供物の代わりとして香典を包むよう変化していったのです。
香典の原点をさかのぼると、その始まりは室町時代とされています。ただし、ご葬儀で互いに金銭をやり取りしていたのは上流階級の方たちだけで、それ以外の人々は食べ物を供物として持ち寄っていました。
やがて線香が普及し始めると、お通夜では多くの方々が線香を持参するようになりました。人々は「死者は四十九日まで香りを食して過ごす」と信じ、死者を弔うため線香を用いたのです。また、線香の香りは死者の匂いに引き寄せられる獣除けとしても用いられており、さらには悪霊除けにも有効と信じられてきました。古くからの「死者に線香を贈る」といった習慣は、現代の仏事における香典の礎となったのです。
現代における香典の金額は、相場から大きく外れてしまうと、ご遺族に対して失礼にあたります。また、参列者の年齢や故人様との血縁の濃さ、付き合いの深さ、地域によっても差があるため、金額は慎重に決めると良いでしょう。
なお、ご自身が喪主である場合などは、どの年代であっても香典の用意は不要です。また、ご家族として一緒に住んでいる場合、学生の場合は香典を包まなくて構いません。ただし、経済的に独立している場合は、同居している場合でも香典を包みましょう。
故人様が知人やご友人である場合は、生前どの程度のお付き合いだったかによっても金額が変わります。ここからは、それぞれ年齢別における金額の相場を解説していきます。
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続きを読む両親(義両親)の場合は30,000~100,000円が相場ですが、一番多く包まれている金額は50,000円といわれています。兄弟姉妹は30,000~50,000円、祖父母へは10,000~20,000円、その他のご親族は5,000~10,000円が相場です。
また、勤務先や取引先の方、そのご家族の方への香典は5,000円、ご友人は3,000~10,000円、ご近所の方は3,000~5,000円が目安です。
30代の場合も考え方は同じですが、20代のときより多めの金額を包むことが多いです。両親(義両親)には50,000~100,000円、兄弟姉妹は30,000~50,000円、祖父母へは10,000~30,000円、その他のご親族は10,000~20,000円が相場です。
勤務先やそのご家族の方への香典は5,000円、取引先の方には5,000~10,000円、ご友人は5,000~10,000円、ご近所の方へは5,000円ほどが相場とされています。
40代の場合は、両親(義両親)には50,000~100,000円、兄弟姉妹、祖父母へは30,000~50,000円、その他のご親族は10,000~20,000円が相場です。
勤務先やそのご家族の方への香典は5,000円、取引先の方には5,000~10,000円、ご友人は5,000~10,000円、ご近所の方は5,000円ほどが目安です。
50代の場合は、両親(義両親)には50,000~100,000円、兄弟姉妹へは30,000~50,000円、祖父母へは50,000円、叔父や叔母(伯父、伯母)に対しては20,000~30,000円、その他のご親族は10,000~20,000円が相場です。
勤務先やそのご家族の方への香典は5,000円、取引先の方には5,000~10,000円、ご友人は5,000~10,000円、ご近所の方は5,000円ほどが目安です。
ここからは、忌日法要や年忌法要に参列する場合に包む、香典の金額目安を解説していきます。ただし、ご遺族の判断で「香典を辞退したい」といった連絡があった場合には、持参しないようにしましょう。
初七日法要とは、故人様が亡くなった日から7日目に行う追善供養です。しかしながら、現代ではご葬儀で全ての読経や焼香を終えた後、同日に初七日法要を行う「繰り上げ初七日法要」が増えています。
初七日法要は、本来7日後に行うのが正式な形であり、再度参列者に呼びかけ、改めて7日後に初七日法要を行うご遺族もいらっしゃいます。ご葬儀の際、後日の初七日法要に招かれた場合は、改めて香典を包む準備をしましょう。
両親(義両親) | 10,000~100,000円 |
兄弟姉妹 | 10,000~50,000円 |
ご親族 | 10,000~30,000円 |
友人や知人 | 5,000~10,000円 |
なお、会食が行われた場合は、食事代として5,000円を別の封筒に包み、香典とともにお渡しします。初七日法要が同日に行われる案内があった場合は、上記の表の半額を目安として、ご葬儀の香典と別にして包みます。ただし、ご葬儀当日に初七日法要を行う旨を知らされなかった場合は、ご葬儀の香典のみでも構いません。
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続きを読む故人様が亡くなってから四十九日目に行う法要を、四十九日法要といいます。四十九日法要は、読経や焼香のほか、仮位牌から本位牌へ魂を移し替えたり、納骨を行ったりなどの儀式も行われる重要な法要です。
四十九日法要に招かれた場合も香典は必要になりますが、金額相場は初七日法要と同じと考えて差し支えありません。
故人様が亡くなってから満1年目の命日に行う年忌法要が、一周忌法要です。年忌法要の中で、最も重要とされている法要となります。
両親(義両親) | 10,000~50,000円 |
兄弟姉妹 | 10,000~30,000円 |
ご親族 | 5,000~10,000円 |
友人や知人 | 5,000~10,000円 |
なお、会食が行われた場合は、食事代として5,000円を別の封筒に包み、香典とともにお渡しします。
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続きを読む故人が亡くなってから満2年目の命日に行われる年忌法要を三回忌法要といい、故人様のご冥福をさらにお祈りするための追善供養です。
両親(義両親) | 10,000~30,000円 |
兄弟姉妹 | 5,000~20,000円 |
ご親族 | 5,000~20,000円 |
友人や知人 | 3,000~20,000円 |
なお、会食が行われた場合は、食事代として5,000円を別の封筒に包み、香典とともにお渡しします。
七回忌以降の法要における香典の目安は、以下の通りです。会食が行われる場合は、食事代として5,000円を別の封筒に包み、香典とともにお渡ししましょう。
両親(義両親) | 10,000~50,000円 |
兄弟姉妹 | 5,000~30,000円 |
ご親族 | 5,000~30,000円 |
友人や知人 | 5,000~30,000円 |
香典をお渡しする際は、袋の選び方や書き方などにも決まりがあります。相手の方に失礼のないよう香典を包むためにも、事前に確認しておきましょう。
香典袋と一口にいっても、さまざまな種類があります。故人様が信仰していた宗教や金額によって入れる袋は変わりますので、選び方を間違えないようにすることが大切です。
袋の特徴 | 5,000円以下 | 10,000~20,000円 | 100,000円以下 | 100,000円以上 | |
仏教 |
・白い無地の封筒 ・水引あり ・蓮の絵 |
水引が印刷されている |
・白黒もしくは双銀色で紐状の水引 ・水引の紐は7~10本 |
・紐状の水引10本、双銀色 |
・紐状の水引10本、双銀色 ・ヒダ折り付きの和紙製 |
神道 |
・白い無地の封筒 ・水引あり |
仏教と同様 | 仏教と同様 | 仏教と同様 | 仏教と同様 |
キリスト教 |
・白い無地の封筒 ・十字架の絵 ・百合の絵 |
基本水引不要 | 基本水引不要 | 基本水引不要 | 基本水引不要 |
宗教不明 |
・白い無地の封筒 ・水引あり |
仏教と同様 | 仏教と同様 | 仏教と同様 | 仏教と同様 |
水引の付いているものは、全て結び切りを選びましょう。なお、関西地方で10,000~50,000円を包む場合は、白黒ではなく白黄を選びます。
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宗教によって、表書き(香典の表面に記載する名目)の内容や、項目ごとの記入場所も変わりますので注意しましょう。基本的に、全て縦書きで記載します。
中袋がある香典袋は、まず表側の半分から上に「御霊前」と記載します。宗教によって名目が変わりますので、下記表をご参照ください。半分から下はフルネームを記載し、裏側は未記入で構いません。
中袋がない香典袋は表側の半分から上に「御霊前」と記載します。宗教によって名目が変わりますので、下記表をご参照ください。半分から下はフルネームを記載し、裏側左下に住所と金額(旧字体)を記入します。枠がプリントされている場合は、プリント枠に合わせて記載しましょう。
香典の表側/半分から上に書く名目 | |
仏教 |
・「御霊前」(四十九日前迄/薄墨で記載) ※浄土真宗では「御霊前」は使用しない ・「御仏前」(四十九日~/濃墨で記載) |
神道 |
「御玉串料」「御神饌料」「御榊料」 四十九日前迄/薄墨で記載 四十九日~/濃墨で記載 |
キリスト教/カトリック |
「御花料」「御ミサ料」 四十九日前迄/薄墨で記載 四十九日~/濃墨で記載 |
キリスト教/プロテスタント |
「御花料」「献花料」「忌慰料」 四十九日前迄/薄墨で記載 四十九日~/濃墨で記載 |
宗教が分からないご葬儀における香典の表書きは、いずれも薄墨の「御霊前」で問題ありません。
ま香典袋に氏名を書く場合、表側の水引の半分から下にフルネームで記載します。四十九日を迎えるまでは薄墨で、四十九日以降は濃墨で記載しましょう。
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金額は、縦書きの旧字体を用いましょう。
・3,000円…金参阡圓也
・5,000円…金伍阡圓也
・10,000円…金壱萬圓也
・30,000円…金参萬圓也
・50,000円…金伍萬圓也
・100,000円…金拾萬圓也
中袋裏側の左下側に郵便番号、住所を縦書きで記載します。その左側下に、住所よりも一回り大きな字で氏名(フルネーム)を記入しましょう。
また、3人までの連名の場合は、裏側に全員の郵便番号と住所、フルネームを縦書きで記載します。4人以上であれば、代表者の郵便番号や住所、フルネームを縦書きで記載します。そして、中に人数分の住所、名前、金額を書いた白無地紙(半紙・奉書紙)を入れましょう。
お札は、折り目が付いているものを用意します。お札の肖像画は袋の裏面に向け、下向きにそろえて袋に入れましょう。
香典は、あらかじめ弔辞用の袱紗(ふくさ)に入れておきます。会場に付いたら受付で記帳を行い、香典袋を袱紗から取り出してお渡ししましょう。
その際に掛ける言葉は、「この度はご愁傷様です」「お悔やみ申し上げます」などが妥当です。控えめなトーンでお伝えしながら、両手でお渡しします。
香典を包む機会は、人生にそう何度もあることではありません。しかしながら、香典をお渡しすることは伝統的な行為であるため、いくつかのルールがあります。あらかじめルールやマナーを身につけておけば、いざというときにもスマートに対応できるでしょう。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
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