2025-03-21
数珠(じゅず)は、仏式のご葬儀において仏様を拝む際に手に掛けて使ったり、読経・念仏を唱えたりする際に使われる仏具です。日本では、仏式のご葬儀に会葬する際に数珠を持つため、数珠は比較的私たちの生活に馴染みのある仏具でしょう。
では、この数珠をお通夜式やご葬儀・告別式で使う際に、正しい持ち方や取り出すタイミングなどはあるのでしょうか。ご不幸は急に訪れます。いざという時慌てないためにも、今回は宗派に関係なく使用することができ、最も店頭などで見かける略式数珠の正しい使い方や持ち方などについてご紹介します。
数珠とは、仏教専用の法具です。寺院や地域によって誦数(ずず)や念珠(ねんじゅ)、珠教(じゅず)と表現されることもあり、呼び方もさまざまです。
数珠は、古くからの言い伝えにより、人々が手にすることで厄払いや魔除けの効果があると信じられてきました。また、数珠を持ちながら念仏をあげれば煩悩が消し去られ、ご先祖様や故人様のご供養につながったり、心の迷いが解けて真理に気づけたりなど、特別な力が宿っているとされています。
数珠は、あくまで僧侶が念仏を唱えるための法具であり、一般の方が必ず持たなくてはならないという決まりはありません。しかしながら、近年における数珠は、僧侶の念仏で使用される用途のほか、仏事に参列する方々がそれぞれで持つことがマナーとなっています。
また、数珠に使用される玉の大きさには男女差があります。男性の数珠は一粒で10~12mm、女性は6~8mmのものが一般的です。
数珠は、本式数珠(ほんしきじゅず)と略式数珠(りゃくしきじゅず)の二種類に分けられます。ここからは、数珠それぞれの意味や詳細を解説していきます。
本式数珠とは、108の玉で作られた数珠です。宗派ごとに組み方や素材、呼び名が決められ、宗派から正式に認められているものです。
本式数珠の玉で使用される108の数には意味があり、一つひとつに人の煩悩を司る仏が宿っていると考えられています。数珠を持ち念仏を唱えれば、悪しき煩悩が消滅され、代わりに高徳を得られるといった教えが伝えられています。
略式数珠は「片手数珠」とも呼ばれ、さまざまな量販店やインターネットなどで販売されているものです。略式数珠は、日本国内のお通夜やご葬儀で最も多く使用されています。
略式数珠は、本式数珠とは違い玉の数は少なめです。玉の数もさまざまな種類がありますが、素材や色に決まりはありませんので、好きなものを選んで問題ありません。
ここからは、具体的な数珠の持ち方についてお伝えしていきます。
①持参した数珠は、女性は手持ちの鞄に、男性はスーツの内ポケットなどに入れておきましょう。
②ご葬儀中は、房を下に向けた状態で左手に持っておきましょう。
なお、ご焼香の順番ギリギリで数珠を取り出すのはマナー違反ですので、着席した時点ですぐに取り出しておくことをおすすめします。
③合掌の際、数珠は左手に掛けたまま手を合わせます。
地域や宗派によって、両手に掛けて合掌する場合もあります。
④僧侶の読経中、焼香の際なども、数珠の房を下にした状態で左手に持ちます。
地域の習慣や宗派、寺院の考えにより作法が異なる場合もありますので、事前に周囲の方々に確認しておくと間違いがありません。
お通夜やご葬儀で数珠を手にするのは、式の最初から終わりまでです。数珠を鞄やポケットから取り出すタイミングは、ご自身の席に着いた時と覚えておけば間違いがありません。取り出した直後は、房部分を下に向けて、左手に持っておきましょう。
焼香の際は、数珠を左手に掛けて持ったまま右手で焼香します。故人様の遺影に向かって合掌する時は、数珠を両手に掛けましょう。焼香から戻る際は、房を下に向けた数珠を再び左手に持ってから、静かに席に戻ります。
数珠にはマナー違反となる扱い方がありますので、注意が必要です。以下に注意点をまとめましたので、ご参照ください。なお、ここで紹介する注意点に関しては、略式数珠だけでなく本式数珠にも当てはまります。ぜひ覚えておきましょう。
お通夜式やご葬儀・告別式の際に席を立つ際に、椅子の上に数珠を置きっぱなしにするのはマナー違反となります。衣類のポケットやバッグにしまい、ハンカチがあればその上に数珠を置いてから席を立ちましょう。
数珠を家族で共有したり、知人と貸し借りするなど、1つの数珠を複数人で扱ったりすることがあります。しかし、数珠は持ち主のお守りのような役割もあるため、他人と共有したり、貸し借りしたりするものではありません。数珠はご葬儀や法要の時に必ず必要というものではありませんので、数珠を持っていなかったり、数珠を忘れたりした場合は数珠なしで参列しましょう。
なお、地域や習慣、その家のしきたり、ご葬儀の規模などによっては数珠の作法に違いが生じることもあります。ご心配な時は、菩提寺や周囲の方に確認すれば安心です。
本来は、お経を読む回数を数える道具である数珠。『数を念ずる』『数を記す』ためのものとして『数珠』と呼ばれるようになったと言われています。そんな数珠は、現在の仏式のご葬儀や法要には欠かせないものになっています。数珠の正しい使い方を守ることは、故人様への哀悼や敬意など真摯な想いを行動として表すことでもあるのです。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。