2020-07-03
お通夜式の前には、故人様のご遺体をお棺に納める「ご納棺の儀」が執り行われます。ご納棺の儀というと、納棺師や納棺の儀式が描かれた映画が公開されたことで、ご存じという方もいらっしゃると思いますが、ご納棺の儀はどのような流れで行われるでしょうか。どのような方が立ち会うのでしょうか。また、立ち会う際の服装はどうすればよいのでしょうか。
そこで今回は、ご納棺の儀の一連の流れと儀式に立ち会う方、そして、どのような服装で立ち会うのがよいのかについてご紹介します。
ご納棺の儀は、故人様の旅立ちが安らかであるよう祈りながら、「末期(まつご)の水」からはじまり、「湯灌(ゆかん)」で身体を清め、死装束(しにしょうぞく)に着せ替え、死化粧を施した故人様をお棺に納め、副葬品を納めるまでの一連の儀式のことをいいます。基本的には、故人様と関係が深かったご遺族、親族が立ち会います。地域により故人様と親しかった友人・知人も立ち会うことがあります。
ご納棺の儀は、一般的にご遺体の安置後から親族が集まってくるお通夜式の前までに執り行われます。そのため、遅くともお通夜式が開式する1時間前までには終えられるようにします。
なお、ご納棺の儀は本来、故人様が亡くなられてから自宅に安置された際に執り行われるのですが、最近では病院や施設などで亡くなられた後に自宅に戻らないということも増えております。このような場合、ご納棺の儀はお通夜式を執り行うご葬儀会場などで執り行うこともあります。
先でも述べましたが、ご納棺の儀は末期の水から始まり、湯灌、死化粧、死装束の着付け、副葬品を納めるという一連の儀式をいいます。それでは、それぞれがどのように執り行わるのか、そしてその際の注意点などについて以下で見ていきましょう。なお、ご納棺の儀において必要なものは葬儀社が用意してくれますので、ご安心ください。
末期の水は、「死に水を取る」ともいわれ、故人様の口元に水を含ませる儀式のことをいいます。喪主を筆頭として故人様と血縁が近い方から順番に、枕元に近づき、箸の先につけた脱脂綿や筆などを水に浸してから、故人様の口元を湿らせます。
末期の水は、お釈迦様がお亡くなりになる前に、水を欲したことから始められたといわれています。ただし、宗派や地域によっては行わないこともあるので、事前に確認が必要です。
湯灌とは、ご遺体を入浴させて洗い清めることをいいます。もしくは、簡易的にお湯やアルコールなどでご遺体を清拭(せいしき)することをいいます。故人様の身体を清めることで、現世での悩みや苦しみ、穢れを洗い流し、来世での功徳をお祈りします。
死化粧とは、故人様に施す化粧のことをいい、「エンゼルメイク」と呼ばれることもあります。基本的に髪型や身なりを整え、必要があれば爪を切り、男性は髭を剃り、女性は薄く化粧をします。安らかなお顔で眠っているように見える死化粧を施すことにより、生前の故人様に近づけ、ご遺族の悲しい気持ちを和らげるという役割があります。
死装束とは、故人様に着せるお見送りのための衣装をいいます。仏式での一般的な死装束は、西方浄土に旅立つ旅姿である経帷子(きょうかたびら)・天冠(てんかん)・手甲(てっこう)・脚絆(きゃはん)・白足袋(しろたび)・草鞋(わらじ)・を身につけます。さらに、三途の川を渡るための六文銭(を模した紙)を頭陀袋(ずだぶくろ)に入れ、杖を持たせます。
なお、最近は生前故人様が愛用していたスーツやドレスのほかにも、旅立ちを美しく着飾るフューネラルドレスなどを死装束として選ばれる方も多くなってきています。
死化粧まで終えたら、ご遺体を棺に納めますが、その際、故人様が旅立つ際に持たせたい物、故人様からお棺に入れてほしいとお願いされた物などを副葬品として納めます。ただし、メガネや入れ歯、硬貨など、燃えにくいものやご遺骨を傷つける恐れがあるものは納めることができません。
どのような副葬品を納めることができるかに関して、以下の記事でさらに詳しくご紹介していますので、関心のある方はぜひご参照ください。
お棺に納められるもの、納められないもの
ご納棺の儀は、お通夜式の前にするものなので、喪服を着るべきか悩まれる方もいらっしゃると思いますが、ご納棺の儀は地域によって、喪服でなければいけないところや平服でもよいというところもあります。そのため、ご遺族が「楽な服装で」というのであれば、「平服」で立ち会います。ご納棺の儀のすぐあとに、お通夜式が行われる場合は「喪服」を着用して立ち会うのが無難でしょう。ご心配な方は、ご親戚や葬儀会社に尋ねるとよいでしょう。
ご納棺の儀は、故人様が安らかにあの世へ旅立つための準備になるとともに、ご遺族がゆっくりと故人様と最も近くで過ごすことができる最期の時間になります。死装束や副葬品などは時代の流れの中で様々な変化が生じてきましたが、ご納棺の儀で執り行われる一連の儀式が、お棺に納める前の故人様とのかけがえのないひと時ということは、今も昔も変わりません。後悔が残らないようにできるだけのことは全てやっておきましょう。
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