2023-12-01
仏教では、故人様が亡くなった後四十九日の法要を境にして忌明けとなりますが、神式では「50日祭(ごじゅうにちさい)」という儀式で忌明けを迎えられます。ただし現代の日本では、仏教上での法要を行う場合がほとんどであり、神式の儀式を経験されている方はほんのわずかです。したがって、神式についての詳細はあまり知られていません。
そこで当記事では、神式で執り行われる50日祭についてのご説明と、その準備の手順や当日の流れ、さらに50日祭のマナーについても解説していきます。
50日祭は、仏式の四十九日法要と同様に、この儀式を以って忌明けとなります。ただし、神式の50日祭では法要という言葉は用いられず「霊祭(または式年祭)」と呼ばれ、かつての式典は盛大に執り行われていました。
しかしながら、核家族化が進んだ現代では、ご葬儀の際に50日祭も同時に行われたり、ご家族だけの少人数で行われたりすることも多くなってきました。
霊祭は、神社で行われることがありません。あくまで神式では「死は穢れである」という考え方のため、喪中の方々を神社に入れること自体がタブー視されています。したがって50日祭は、神社以外の斎場や自宅で行われるのが一般的です。
なお、仏教においての四十九日は、この日を以って「故人様が仏様になる」と伝えられていますが、神道においては、50日祭はこの日を以って「故人様がご家庭を守る守護神になる」と信じられています。したがって、この霊祭以降は忌明けとなり、故人様はご家庭の神棚へ祀られることになるのです。
いざ、ご自身が神式の50日祭を準備するお立場になられた 場合、一体どのような流れで準備を進めるべきなのか迷われる方も多いでしょう。そこで、事前準備に関する流れを簡潔にまとめましたので、ぜひご参照ください。
50日祭を行うには、神社の神官と打ち合わせをする必要があります。参列する方々の都合を加味しながら、ある程度の日程を決めてから神官へ依頼しましょう。日程は、命日のすぐ手前の土・日・祝日へ設定するのが一般的です。
50日祭の日程が決定したら、次に会場を手配します。ここでは参列者へ案内を送る前段階になるため、おおよその人数で予約を取りましょう。会場の担当者とは、お斎(おとき)のための会場や食事の手配に加え、当日の日程・時間帯・連絡先などを話し合います。
なお、50日祭の日程が忘年会や新年会のハイシーズンと被っている場合は、早めに予約を取るよう心がけると良いでしょう。なお、予定人数と来場予定の人数に差異が出た場合は、分かった時点で会場へ連絡します。最終人数の確定は、遅くとも前日までには行っておきたいところです。
また、ご自宅で50日祭を行う場合、会場を押さえる必要はありませんが、事前に仕出し弁当を注文しておくと良いでしょう。
次に、50日祭へ お招きしたい方々へ案内状を送ります。内容としては、参列者へのお礼・案内文・会場の場所・日時を記載し、出欠確認を取る項目も設けましょう。返事をいただくために、往復はがきを使用するのが一般的です。
なお、案内状を作成してくれるサービスもありますので利用されると便利ですし、お招きする方が少人数の場合は電話で連絡を済ませても問題ありません。
50日祭を行うにあたり、必要になるのが祭祀料です。祭祀料とは、儀式を執り行ってくれた神社と神主に対する お礼のことで、仏教ではお布施の位置付けとなります。
神主の人数や儀式の内容によってかなりの違いは出てきますが、50日祭でお渡しする祭祀料の相場としては、神主一人に対して30,000~50,000円ほどが一般的な額です。ただし、同時に納骨を行う場合はさらに50,000~70,000円ほどの金額が必要になります。
ただし、この金額はあくまで一つの目安にすぎません。
50日祭当日では、祭壇を設置します。これは、お飾りやお供え物を安置するためのものです。祭壇上には、以下の品物を飾り付けていきましょう。
・八足の三段棚
・白い布
・故人様の遺影、遺骨
・霊璽(れいじ)
・徳利2つに酒を入れたもの
・水器
・三方(さんぼう)
・榊の入った榊立て2つ
・ろうそくを立てた火立て2つ
・お供え物
・お供え物を乗せるための皿
まず、八足の三段棚を設置したら、白い布を覆い被せます。上段には故人様の遺影、遺骨を飾り、中段の真ん中には霊璽を安置して、両側に榊の入った榊立てを設置しましょう。下段の両端にはろうそくを立てた火立てを設置し、中段、下段の隙間にお供え物を安置していき、完成です。
さまざまな準備を重ね、50日祭の当日を迎えた際、霊祭はどのような形で執り行われるのでしょうか。お祀りしている神様や土地柄によって、流れには異なる部分も出てきますが、当記事では一般的な順序をご説明していきます。
献饌とは、祭壇や墓前にお供え物を行う儀式です。お供え物には故人様が生前好んでいたものや、米・酒・乾物・塩・海産物を使います。なお参列者は、お菓子や果物をお供えするの が一般的ですが、近年ではお供え物の代わりとして「御供物料」を包むケースが増えています。お供え物は、祭壇上の三方に乗せて配置していきましょう。
祝詞とは、お祀りされた神様へ向かって唱えるための言葉であり、神事によってその内容は異なります。神主が祭壇の前で祝詞を奏上しますが、この儀式は仏式での読経にあたります。
玉串は、榊の枝に紙垂(しで)と呼ばれる白い紙を結びつけたものです。玉串を参列者が順番に祭壇へ捧げる儀式を「玉串奉奠」といい、この儀式は仏式での焼香にあたります。
玉串奉奠の方法は、まず神官から玉串を授かります。この時、右手で玉串の根元をつかみ、左手で支えるように持ちましょう。この状態で祭壇の前に進んだら、玉串の根元をご自身の方へ向けて、玉串の先を祭壇へ向けます。次に根元を左手に持ち替え、時計回りに半回転させたら、根元を祭壇の方へ向けて玉串を捧げましょう。
玉串を祭壇に捧げた後は、二礼二拍手一礼を行います。ただし、拍手の部分で音を立ててはいけません。拍手は、音を立てない「しのび手」で行うようにします。
なお、玉串奉奠は行う順番が決まっており最初に喪主、次にご遺族、ご親族、故人様の友人知人と続けられるのが一般的です。
玉串奉奠までの儀式を終えた後、次に行うのは「直会」です。祭壇に安置されたお供え物を下げ、参列者でいただきます。参列者はお供え物やお神酒をいただくことで、神様とのつながりをより深め、神力を分けてもらえるのです。
神道では、故人様が亡くなるとその穢れから神様を守るため、神棚の扉を閉じて白い紙で封じます。清祓の儀は、この白い紙を剥がし、再び神棚の扉を開ける儀式です。神棚が元に戻された時点で、ご遺族は忌明けとなります。
清祓の儀が行われるタイミングは、50日祭の翌日です。しかしながら、儀式の簡略化が進んでいる近年では、50日祭当日に清祓の儀が行われるケースが増えました。
50日祭へ出席するにあたり、相手の方に 対して失礼にあたらないよう、さまざまなルールに気を配る必要があります。こちらでは、服装や玉串料に関する細やかなマナーをご紹介いたします。
まず、喪主やご遺族は、正喪服を着用するのが基本です。一般の参列者は、準喪服と呼ばれる服を着用します。
男性は黒いスーツとネクタイを着用し、結婚指輪以外のアクセサリーは外します。靴下や靴などの小物も黒で統一しましょう。また、女性は黒いワンピースかツーピースを着用し、結婚指輪と真珠のネックレス以外のアクセサリーは外すようにします。靴下やストッキング、靴などの小物も黒で統一しましょう。なお、数珠は必要ありません。
50日祭に参列する場合、お供え物を準備するほか「玉串料(たまぐしりょう)」の用意も必要になります。玉串料とは、仏式の香典と意味合いは同じです。ただし、香典とはマナーが違う部分もありますので、相手の方に 失礼のないようにするためにも注意が必要です。
封筒の表書きは、上段中央に「御玉串料」もしくは「玉串料」と記入します。その際は薄墨の毛筆、または薄墨の筆ペンを使用します。
なお、市販の封筒には既に表書きが記入されているものがありますので、そちらを購入されても問題ありません。下段にはご自身のフルネームを記載しましょう。なお、裏にはご住所とお名前(フルネーム)、内袋がない場合は金額も記載します。
玉串料は、御供物料とは別にして包むのがマナーです。また、用意する封筒は、弔辞用の封筒(不祝儀袋)にしましょう。ただし、仏教を連想させる蓮の花や、キリスト教を彷彿とさせる十字架のような、他の宗教のモチーフが描かれていない袋を選びます。
なお、水引は結び切りかあわじ結びの形にしましょう。色は黒白が基本ですが、関西の場合は地域によって黄白が用いられることもあります。近場にお住まいの方は封筒を購入する前に、周囲の方へ確認すると良いでしょう。
次にお札の入れ方ですが、向きは全て同じ方向に揃えるのが基本です。また、中袋の裏面から開けた時にお札の人物画が見えるように入れるのが一般的です。地域によっては、違う向きが推奨されている場合もありますので、周りの方へ確認してみましょう。
玉串料を会場へ持参する際は、落ち着いた配色の袱紗に包みます。色は紫や灰色、紺などがおすすめです。玉串料は、会場へ到着後、最初に施主の方へ挨拶をする際のタイミングでお渡しするのが良いでしょう。
神式の50日祭は、故人様の御霊をご家庭の守り神としてお迎えするための神聖な儀式であり、忌明け前に執り行われます。基本は仏教の四十九日と変わらない部分が多いものの、やはり仏教と神道ではその特徴にさまざまな違いがあります 。しかしながら、その内容などを事前にある程度把握できれば、いざという時の役に立つでしょう。
今後50日祭に関しては、執り行う側であったり、参列する側であったりと、時と場合によってさまざまな立場に立つ時があるかもしれません。そういった時は、この記事をご参考にしていただければ幸いに存じます。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
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