2025-02-28
お盆は、古くから伝えられている夏の伝統行事です。お盆は、ご先祖様や故人様の御霊が年に一度だけ戻ってくる大切な時期とされており、さまざまな場所でご供養が行われています。
神式でご葬儀をされた場合も、祖霊はあの世から戻ると伝えられています。そこで今回は、神道におけるお盆の過ごし方、神主様をお迎えするためのマナーについて解説いたしますので、ぜひ参考になさってください。
毎年夏になるとお盆を迎えますが、この時期には「ご先祖様や故人様の御霊が年に一度だけ戻る」とされており、祖霊を敬いご供養を行うのが一般的です。この教えは仏教だけに留まらず、神道にも遙か昔より深く根付いています。
神道は、もともと日本の民族的な宗教です。神道では「人が亡くなるとその御霊は神となる」と信仰されており、故人様は神様となって残された方々を見守り続けると伝えられています。そこで、お盆の時期に御霊を家へお招きし、お祀りする慣習が古来より続けられていました。
一方、仏教のお盆では、祖霊を自宅にお招きしてから「盂蘭盆会(うらぼんえ)」を行います。盂蘭盆会にはお釈迦様に関する由来があり、餓鬼道へ堕ちた目連尊者の母親をご供養するため、お釈迦様が弟子の目連に教えを説いたのが始まりだとされています。仏教が中国から伝来して、盂蘭盆会は日本で広く受け入れられ、次第に神仏や先祖崇拝が融合する形となり、現代では同じ時期にご供養する形にまとまりました。
仏教と神道のお盆では、祖霊への感謝やご供養の気持ちを持つことは同様ですが、発祥や考え方に違いがあるため、お盆期間の過ごし方にも若干の相違がみられます。
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続きを読むお盆は、神道と仏教の両方で根付いている習慣です。仏教のお盆には、あの世からこの世に祖霊が戻るため、手厚くご供養していくという意味があります。神道はそれに加えて、子々孫々の長寿や健康、季節の変わり目などをお祝いするといった前向きな考え方が根付いています。
また、細やかな内容については仏教と同様に地域差があるため、気になることがある場合は周囲の方に相談してみましょう。ここからは、神道におけるお盆の過ごし方について解説していきます。
迎え火と送り火は、あの世とこの世を行き来される祖霊が、迷わないようにするために行われる儀式です。これは、仏教のものと意味もやり方も同じです。13日の夕方に迎え火を焚き、16日の夕方には送り火を焚きます。
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続きを読む七日盆の時期に入ったらお墓参りに出向き、落ち葉やゴミを拾ったり、墓石や墓石周りの神具を清めたりなどの清掃を行います。
きれいにした花立てには、榊を供えましょう。次に神具へ御神酒と水・米・塩を供え、墓石にお水を掛けた後、二拝二拍手一礼(にれいにはくしゅいちれい)を行います。神道の場合、お線香は必要ありません。また、迎え盆当日(13日)にもお墓参りを行いますが、忌中の場合は拍手の音を立てないようにしましょう。
お盆の時期には、神棚や祖霊舎(それいしゃ)を清めます。祖霊舎とは、ご先祖様や故人様の御霊を祀る社で、仏教での仏壇にあたります。素材はデリケートに作られているものが多いので、水や洗剤を用いることせずに、ふわふわな毛並みのハタキなどで優しく掃除しましょう。
祖霊舎の前に、精霊棚(しょうりょうだな)を作る地域もあります。飾り方は仏教の精霊棚と同様、真菰(まこも)で編まれた敷物を置き、その上に盆花やお供え物、精霊馬、団子などをお供えします。両脇には盆提灯も飾り、初中元には白提灯を用意しましょう。
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神主様をお迎えする時の服装は、黒や暗い灰色のスーツ、無地の白シャツなど、落ち着いた平服を着用しましょう。仏教では、初盆のみ喪服を着用する習慣がありますが、神道の場合は、初中元(初盆)であっても平服のほうが良いとされています。
神主様をお呼びする場合、祭祀料(さいしりょう)を用意する必要があります。相場は10,000〜50,000円ですが、地域や神社によって金額が異なるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
お金を入れる袋は白無地や奉書紙、黒白の水引、黄白の水引(結び切り)がついた熨斗袋を選びます。濃墨の筆ペンか筆を使用して、表書きは上部に「御祭祀料」「御礼」と記入し、下部にはフルネームを記載しましょう。
中袋の表中央には縦書きの旧漢字で金額を記入し、裏側の左下には代表者の郵便番号・住所を縦書きで記載します。お渡しするタイミングは、仏教と同じく儀式がすべて終わった後です。切手盆か袱紗に乗せてから、「本日はありがとうございます」といった謝辞とともに両手で差し出します。
お盆の時期は、仏教だけではなく神道においても、祖霊をお迎えする大切な時期として位置づけられています。考え方や迎え方は異なるもの、ご先祖様や故人様の御霊を敬い、感謝の気持ちを込めてお祈りすることに違いはありません。日本の伝統を深く理解しておけば、より穏やかな気持ちでお盆を過ごせるでしょう。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。