2024-12-20
お盆では、仏壇前もしくは横に盆棚(ぼんだな)を設置し、豪華な飾り付けをします。これは、日本に伝わる古くからの慣習で、ご先祖様や故人様の御霊をお迎えしてご供養するためのものです。そこで今回は、盆棚飾りの手順や基本的な道具、それぞれが持つ意味について詳しく解説していきます。
盆棚は、お盆時期に仏壇の前、もしくは横に設置する棚のことです。盆棚は精霊棚(しょうりょうだな)とも呼ばれており、お位牌や豪華な盆飾りを安置するための大切な道具です。なお、普段は折り畳んで収納しておきます。
お盆は全国的に旧盆(月遅れ盆)の8月13~16日の4日間に行われるのが基本です。また、東京や横浜、静岡の都市部では7月13~16日の新盆と呼ばれる時期にお盆のご供養を行います。
飾り付けは、基本お盆の月に入ってから行うのが一般的なので、それぞれの月1日目から盆棚を取り出して用意を始めましょう。
ここでは、盆棚の飾り方を順番にご説明していきます。以下の手順に従って設置してみましょう。
①お盆の月初めに盆棚を組み立て、仏壇の前や横に設置します。
②盆棚に掛け布を敷きましょう。※宗教や宗派によって異なる場合があります。
③真菰(まこも)と呼ばれるゴザを敷きます。
④お位牌を仏壇から取り出し、盆棚の一番上の中央奥に安置します。
⑤お位牌の両脇に供花、霊前灯を設置しましょう。
⑥中段にお供え物を置き、最下段にはお参り用の仏具(香炉・火立て・ろうそく・線香・おりん)や着火ライターを並べましょう。
⑦盆棚の両脇には白提灯、初盆以外なら模様のついた提灯を配置し、手前に座布団を敷きます。
⑧盆棚の4隅に竹の棒を建て、上部に真菰縄(まこもなわ)を張ります。
ここからは、お盆飾りにおける基本的な道具とその意味をご紹介いたします。
真菰とは、稲の茎を乾燥させ編んで作られたゴザのことです。真菰には薬用成分が含まれているとされ、その昔お釈迦様が、病にかかった方々を真菰の上に寝かせて治癒させたと語り継がれています。
この言い伝えから、真菰には邪気払いの効果もあると信じられており、お盆飾りの重要な敷物として用いられるようになりました。現代においても、さまざまなお盆飾りを安置する前に真菰を敷く習慣が残っています。
真菰縄は邪気を祓う効果があり、お盆飾りにプラスすることで結界の役割を担うとされています。真菰縄は、よじってある部分を少し緩めてから鬼灯(ほおずき)や果物を差し込み、盆棚の四隅に立てた竹に結んだり引っかけたりして飾ります。
お盆飾りには、そうめんも用います。そうめんは、「細く長い幸せが続くように」といった願いが込められた縁起物です。魂の往来で用いられる精霊馬の手綱、お帰りの際にお土産を括るための綱の役割も兼ねています。
そうめんは、茹でない状態の束を飾るのが一般的です。また、茹でてから麺つゆが添えられたものをお供えする地域もありますので、飾り方はご家庭によってさまざまです。
お盆飾りに、昆布を用いる地域もあります。昆布は「喜びが訪れる」と信じられている縁起物です。お好きな長さにカットしたら、鬼灯や果物とともに真菰縄へ差し込み、一緒に飾ると良いでしょう。
鬼灯も、盆飾りにおいて大切な道具のひとつです。盆提灯や迎え火と同じで、ご先祖様や故人様の魂を迷わせないための目印になるとされています。真菰縄に吊り下げたり、花と一緒に活けたり、お供え物と一緒に並べたりなど、工夫して飾ると良いでしょう。
お盆のお供えに欠かせないのが、生花です。お盆に飾る花は、盆花(ぼんばな)とも呼ばれています。ご先祖様や故人様に華やかな香りを楽しんでいただくため、感謝と祈りを込めて飾ります。種類はお盆の季節に咲く花が良いとされており、持ちの良い花を選ぶのが一般的です。
初盆では白い花を意識して飾りますが、次のお盆以降は色があるお花を飾って構いません。リンドウや菊、トルコキキョウ、キンセンカ、カーネーション、スターチス、ガーベラ、胡蝶蘭などが向いています。生花店やスーパーで、束になって販売されているお盆用の花を購入しても良いでしょう。
一方で、トゲのあるバラやアザミ、毒入りの水仙やスズラン、あじさい、チューリップ、ポピー、香りが強すぎるといわれるキンモクセイやカサブランカは、盆花には向いていません。
精霊馬は、短く切った割り箸や楊枝を、茄子やキュウリに足として4本さし、動物のような形にしてから飾るものです。なお、キュウリは馬を、茄子は牛を象っており、茄子は精霊牛とも呼ばれています。
精霊馬は、ご先祖様や故人様の魂があの世とこの世を行き来するための乗り物です。この世へお越しになるときにはキュウリ(早足の馬)、あの世へ戻る際には茄子(ゆっくりとした歩調の牛)をお使いいただくという考えに基づいています。
なお、使用済みの精霊馬は食さないのがルールです。塩で清め半紙に包んで処分したり、送り火で燃やしたり、寺院でお焚き上げしてもらったりなどの方法があります。
水の子とは、キュウリや茄子を賽の目に切って洗ったお米と混ぜ、水を注いだものです。お皿の上に蓮の葉を敷き、その上に乗せて飾ります。水の子はご先祖様や故人様のためではなく、餓鬼道に堕ちた霊やその他の浮遊霊を供養するための道具で、お盆の間は毎日取り替えます。
なお、使用済みの水の子は食しません。塩で清めてから半紙に包み燃えるゴミとして処分するか、送り火で燃やしましょう。ご家庭に庭があれば、そこへ埋めて土に還す方法もあります。
みそはぎは紫色の可憐な花で、盆花、精霊花とも呼ばれています。役割は水の子と同じで、餓鬼や浮遊霊の喉の渇きを潤し、穢れを祓う力があるといわれています。みそはぎは数本で束ね、お水を張った皿の上に乗せて、水の子の横に供えましょう。
十三仏とは、故人様を極楽浄土へ導いてくれる守護仏です。一人の明王(不動明王)、七人の菩薩(弥勒菩薩、普賢菩薩、文殊菩薩、観音菩薩、勢至菩薩、虚空蔵菩薩、地蔵菩薩)さらに五人の如来(大日如来、阿弥陀如来、薬師如来、釈迦如来、阿閦如来)で構成されています。お盆飾りでは十三仏の掛け軸が多く用いられ、お位牌の後ろに掛けられます。
今回ご紹介したお盆飾りは、あくまで基本的なものに過ぎません。地域やご家庭によっては違うものが飾られることもあります。
例えば、水の子を飾るための「水棚」を餓鬼(無縁仏)のために用意して、玄関外に設置するご家庭もあります。これは、ご先祖様や故人様以外の無縁仏をご供養すると同時に、自宅へ入らないようにするための対策です。作り方や飾るタイミングは、地域によって異なるようです。
また、ご供養に使う水は、「閼伽水(あかみず)」や「浄水」とも呼ばれます。 水は汲んだ直後の水道水をお供えすれば問題ありません。 器に閼伽水を入れたら、みそはぎの束を乗せてお供えします。みそはぎは浄化力の高い花とされており、ご先祖様がお留守になったお墓に悪霊を寄せ付けないためのお守りとして、閼伽水とともに供える方も少なくありません。
加えて、長崎の一部では「盆菓子」と呼ばれる色鮮やかな細工菓子が供えられます。京都でも盆菓子用に飾り菓子が作られていますが、淡い色の細やかな細工のため、長崎で作られる菓子とは見た目が異なります。
ここからは、盆棚の飾りにおけるよく見かける疑問を解説していきます。
お盆中であっても、仏壇への飾りは不要です。どうしても仏壇にも何か供えたい場合は、霊供膳(れいぐぜん)やお団子、霊前灯が良いでしょう。しかしながら、お位牌やご本尊をすべて外に出して盆棚に飾るご家庭が多いため、お盆期間中の仏壇には何も飾らないか、あるいは扉を閉めておくという考えが一般的です。
お供えした霊供膳は早めに下げて、ご家族でいただくようにしましょう。痛んでしまった場合は処分します。また、盆棚を置くスペースがない場合は、仏壇自体を盆棚として使用しても構いません。
その昔は、「お盆飾りの使い回しは良くない」といわれていましたが、近年ではその限りではありません。ただし、使い回しできるものとそうでないものがあります。翌年も使って良いとされているものは、以下の道具です。
・盆棚
・色つきの盆提灯
・十三仏の掛け軸
・真菰のゴザ(地域によっては処分が推奨されることもあります)
・お膳、盛器
・蓮の葉(レプリカなら翌年も使用可能)
・精霊馬(布製や陶器、ガラス、木製など、食べられないものであれば使用可能)
蓮の葉や生花、本物の茄子やキュウリで作った精霊馬、砂糖菓子など、消費期限のあるものや生ものは、衛生上の観点からその年限りでお焚き上げを行います。また、精霊馬以外で食べられるものがあれば、ご家庭でいただきましょう。
仏壇専門店であれば、どこのお店にも盆棚が販売されています。ホームセンターやネットショップでも手に入るほか、ご葬儀の祭壇を保管しておいて、そのまま盆棚として再利用される方もいらっしゃいます。
盆棚飾りについては、宗教ごとに考え方が異なります。浄土真宗の場合、「故人様は亡くなった時点で仏様になる」と考えられているため、お盆に霊が戻るという概念自体がなく、盆棚も設置されません。
また、お盆期間中の真言宗では、一口大に切った精進料理を毎日作ってお供えします。曹洞宗では、お供え料理を仏様のほうへ向け、お箸も奥に設置します。盆棚に使う掛け布に白色のものを用いるのも、曹洞宗の特徴です。
このように、宗派によって細かな部分に違いが見られるため、もしも不明な点がある場合は、同じ宗派の寺院、または菩提寺へ問い合わせてみましょう。
古くから伝えられているお盆の飾り付けは、年に一度ご自宅に戻るご先祖様や故人様の御霊を敬って弔うための大切な行いです。用意するものや飾り方にはさまざまな意味が込められていますが、それぞれが持つ意味を理解することで、より穏やかな気持ちで故人様を供養できるでしょう。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
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