2025-02-21
奉書紙(ほうしょし)は最高級の和紙であり、国や行政機関が使用する公用紙として知られています。奉書紙には和の雰囲気と高級感があり、使い道もさまざまです。
特にご葬儀でよく見掛ける奉書紙ですが、主にどのような場面で用いられるのでしょうか。当記事では、奉書紙の特徴や詳しい使い道、奉書紙による弔辞の書き方などを解説していきます。
奉書紙は、「ほうしょし」または「ほうしょがみ」とも呼ばれる高級な和紙です。室町時代では、クワ科の植物、楮(こうぞ)の繊維から作られており、幕府の公文書に使用されていました。当時は公文書の命令が「奉(ほう)」と呼ばれており、その文書で主に使用されていたため、奉書紙と名付けられたといった説があります。
なお、現代で使用される奉書紙の主な原材料は、機械漉きのパルプです。奉書紙には表と裏があり、表はツルツル、裏面はザラザラしている特徴があります。
ここからは、ご葬儀での奉書紙の使用方法について、詳しく紐解いていきます。
奉書紙は、お布施を包むのに用いられます。現代では100円ショップなどで手に入る厚手の白い封筒でも失礼にあたらないとされていますが、正式な方法でお渡ししたい場合は奉書紙と半紙を用いると良いでしょう。
なお、半紙にお金を包んだ状態のものを「中包み」といいます。奉書紙でお布施をお渡しする場合は、先にお金を半紙で包み、中包みの状態にしましょう。
・半紙を横に向け、向かって左側が上になるよう斜めに設置します。
・お札は肖像画を上にして、半紙に向かい縦に乗せます。お札に合わせながら上下を折り曲げましょう。
・左側を、お札に掛からないよう半分ほど折り曲げます。
・次にお札を隠すイメージで、お札の真左を折ります。
・右側の余った部分を、お札部分に巻き付けるよう折り曲げ、お札が完全に包めたら完成です。
・奉書紙のザラザラな面(裏側)を上にして縦に置きます。
・中包みを中央に縦方向で置きます。
・奉書紙に向かって左側を、中包みに向かって折り込みます。
・続けて右側を折り込みます。
・下側に余った面を、中包みに向かって折り込みます。
・最後に上部を中包みに向かって折り込んで完成です。
奉書紙に弔辞を書く場合は、大きめサイズの奉書紙と薄墨の筆、または筆ペンを用意します。字はツルツルの表面へ書くので、奉書紙は表面に向けます。弔事を書き終えたら、書き終わった側(左側)から文の先頭に向けて蛇腹に折り曲げていきましょう。
最後に、文字を書いた奉書紙を、同じ種類の奉書紙で包みます。包む用の奉書紙は、蛇腹に折りたたんだ弔辞が丁度三つ折りに包める大きさで切り、裏側を横に向け、原稿は縦に置きます。原稿は少し右側に寄せるように置き、右側・左側・上・下の順で折り曲げて包みましょう。
ここからは、弔辞を作成するためのポイントを解説していきます。
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続きを読む奉書紙を表面へ向けたら、右側に10cmほどの空白を設けましょう。文章は全て縦書きです。最初に「弔辞」と書き、行間は一列分開けながら書きます。不幸が重なる行為は禁忌とされているため、1枚の奉書紙に文字を全て収めるように書くのがマナーです。
なお、弔辞は最初に別の紙へ下書きをしてから、バランスを考えつつ奉書紙へ清書してください。最後に年月日、署名を記入します。
弔辞の内容に、これといった決まりはありません。ただ、故人様の死を悼む気持ちを込めることを念頭に置いて文章を考えると良いでしょう。
内容としては、故人様を偲ぶ文章から始めます。次の主題では、故人様とのエピソードや、故人様への想いを綴りましょう。最後に、ご遺族へ弔辞を捧げる文章を書いて結びます。
文章の中に忌み言葉や重ね言葉、そして「死」などに関する直接的な言葉は使用を控えるなど、マナーにも注意を払うことが大切です。「ご逝去に接し」「ご他界を伺いまして」といった、故人様を敬う気持ちを伝える言葉を選びましょう。
弔辞の容量に決まりはありませんが、ゆっくり読んで3~5分程度を目安とします。文字数は1000文字前後、原稿用紙では2~3枚程度が妥当といえるでしょう。
奉書紙は、大手の文房具店または100円ショップ、あるいはネット販売で手に入れることができます。なお、販売店によっては折り曲げてある奉書紙の式辞用セットもあります。そちらを購入すれば、折り目のバランスを考える手間が省けるので便利です。
ご葬儀や法要などで奉書紙を使う行為は、日本の伝統的な文化です。近年では必ずしも奉書紙を用いる必要はありませんが、相手の方々に心からの敬意を示せる行為ですので、ぜひ使用してみることをおすすめします。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。