2024-03-01
「御母堂」は、故人様の死を悼むご葬儀の場でよく使用されます。ご葬儀は、人生において経験する機会の少ないフォーマルな儀式です。このような場面で、どなたかを指し示す言葉を使う場合は、お相手に最大の敬意を払う必要が出てきます。
敬意を払った呼び方にはさまざまな種類がありますが、御母堂はその中の一つです。そこで本記事では、ご葬儀で故人様に用いられる敬称である御母堂の意味に加え、使い方などを詳しく解説していきます。
御母堂とは、ご葬儀など格式の高い場で用いられる、第三者の実母を敬うための敬称です。あくまで御母堂は他人からの敬称なので、自分の母親に対して使用することのないよう、くれぐれも気を付けましょう。
御母堂(ごぼどう)の「母堂」という言葉の由来は、昔の日本で高貴な身分の方が、自身の母親を「母堂」と呼んでいたことが始まりとされています。
身分の高い方が使用していた母堂は、やがて日本全国に広がり定着しました。しかしながら、身分の差がなくなった現代で日常使いされることはほとんどなく、冠婚葬祭のような格式を重んじる場所で使用される方向へと変わったようです。
現在では、自身の母親を母堂と呼ぶことはありません。あくまで自分の母親以外の母親を呼ぶ時に「御」を付けた上で敬称として用いることが、御母堂の正しい使い方になりました。
母親を指す敬称には、御母堂だけではなく、御岳母(ごがくぼ)や御丈母(ごじょうぼ)といった言葉もあります。似たような言葉のため混同されやすいですが、指し示す相手が違うので注意しましょう。
御母堂は、他人の母親を敬うための敬称でしたが、御岳母と御丈母は他人の母親には使いません。この呼び方は、あくまで配偶者の母親向けの敬称です。主に御岳母は夫の母、御丈母は妻の母を示すといわれており、身内だけに用いられる言葉だと伝えられています。
第三者の母親を敬うための敬称である御母堂は、主にご葬儀などの弔事で使用されることが一般的です。では、どのような場面で多く用いられているのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
メールやラインで訃報を受け取った時には、お悔やみの言葉を返信することになります。大切なご家族を亡くされた方は、大変悲しい思いをされていることでしょう。デリケートな気持ちになっているお相手に、最大の敬意を払うためにも、文章には「御母堂」といった敬称を意識して使うことが大切になります。
お相手の負担を少しでも軽くするためにも、お悔やみと気遣いの気持ちを伝えつつも長い文章にならないように気を付けて作成しましょう。
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弔電の手配はインターネット、もしくは電話で行います。お通夜かご葬儀が始まる前には届くよう、速やかに手続きを行いましょう。なお、申し込み後2~3時間でお相手に届きます。
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・ご友人宛ての場合
親しい方ならば、硬い表現を駆使する必要はありません。ただし、文章は崩しすぎないようにすることがポイントです。ある程度文章が整うよう意識して、短くまとめましょう。
この度は御母堂様のご逝去の報に接し、心からお悔やみ申し上げます。
皆様の悲しみを考えると、慰めの言葉もありません。
私にできることがあれば、いつでも連絡してください。
なお、返信のお気遣いは不要です。
・同僚、部下宛ての場合
仕事関係の方は、特に敬称が抜けることのないよう意識して書きます。気遣う文面には、仕事に関して安心させる一言があると、より丁寧な印象を与えられます。
この度は御母堂様の突然の訃報に驚き、悲しみを深くしています。
大変な時期とは思いますが、どうか無理せずご自愛ください。
仕事についてはどうか気にせず、ご家族とのお時間を大切になさってください。
故人様の安らかなご永眠をお祈りしております。
なお、返信不要です。
・上司宛ての場合
上司の方宛ての場合も、敬称に気を付けます。もしもご葬儀に参列する予定が立たない場合は、お詫びの一言も入れると良いでしょう。
この度は突然のご不幸、まことに残念でなりません。
御母堂様のご逝去を悼み、心より哀悼の意を表します。
本来であればご弔問に伺うべきところではありますが、略儀ながらメールにて失礼いたします。
なお、ご返信は不要でございます。
・取引先宛ての場合
ビジネスライクな文章を心がけ、きちんとした文面を意識しましょう。文面にはお悔やみの気持ちと気遣い、伺えない謝罪を盛り込み、コンパクトにまとめます。
御母堂様のご逝去の報に接し、心からお悔やみ申し上げます。
本来であれば直接お伝えすべきところを、略儀ながらメールでのお悔やみとなり、大変申し訳ございません。どうか、お力落としなさいませんように。
なお、返信のお気遣いは不要でございます。
弔電でお悔やみを伝える場合、最も注意すべきなのは故人様に対する敬称を忘れないことです。また、お相手の宗教によって使ってはいけない言葉もありますので、それを避けるようにして、心のこもった文面を送りましょう。ここでは、一般的な文例を2パターンご紹介いたします。
御母堂様のご逝去を悼み、悲しみに暮れております。
ご生前の優しかったお人柄を思うと、まだ信じられない気持ちでいっぱいです。
謹んでお悔やみ申し上げますとともに、心からご冥福をお祈りいたします。
御母堂様の突然の悲報に接し、驚いております。
皆様のお気持ちを思うと、胸が痛む思いです。
今はただ安らかに旅立てるよう、心よりお祈り申し上げます。
敬称は、お相手と故人様の間柄によって呼び方が変わりますので注意が必要です。以下の一覧で、さまざまなパターンの敬称を確認してみてください。
なお、「御」「様」を付けない「母堂」だけでも敬称に当てはまりますが、ご葬儀で使用する文面に関しては、「御」「様」を付けることで二重敬語となっても問題はないとされています。
・父、母 → 御尊父(ごそんぷ)様、御母堂(ごぼどう)様
・夫、妻 → 御主人(ごしゅじん)様、御令室(ごれいしつ)様
・息子、娘 → 御子息(ごしそく)様、御子女(ごしじょ)様
・祖父、祖母 → 御 祖父(ごそふ)様、御祖母(ごそぼ)様
・兄弟 → 御令兄(ごれいけい)様、御令弟(ごれいてい)様
・姉妹 → 御令姉(ごれいし)様、御令妹(ごれいまい)様
・伯父、伯母 → 伯父上(おじうえ)様、伯母上(おばうえ)様
・叔父、叔母 → 叔父上(おじうえ)様、叔母上(おばうえ)様
・甥、姪 → 御令甥(ごれいせい)様、ご令姪(ごれいめい)様
ここからは、お悔やみの言葉を送る際に留意すべき事柄をお伝えいたします。
不幸が続くこと、死、別離を連想させる言葉を「忌み言葉」といいます。お悔やみの言葉や弔電、ご葬儀中も、忌み言葉を使用することのないように気を付けましょう。
亡くす、死ぬ、忙しい、苦しむ、消える、散る、去る、引き続き、また、再びなど
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重ね重ね、返す返す、度々、次々、再三、時々、くれぐれ、しばしば、重々、どんどん、わざわざなど
忌み言葉は、宗教ごとにも存在します。お相手の家の宗教を確認し、忌み言葉を発することのないよう意識して行動しましょう。
・神式、キリスト教での忌み言葉 → 供養、往生、冥福、冥途、成仏
・浄土真宗での忌み言葉 → 冥福、霊前
・仏教全般の忌み言葉 → 迷う、浮かばれない
ご葬儀では、ご遺族の心情を考えて言葉を選ぶことも大切です。タブーとして挙げられるのは、故人様の死因を尋ねることなどです。故人様の死の原因を思い出させれば、大切な方を亡くされ深く傷ついているご家族の傷をさらに抉ることになりかねません。
なお、ご遺族に対する励ましの言葉もあまり好ましくはありません。大切な方を亡くされた直後に、がんばるように促したり、泣くことを我慢させたりするのは非常に酷なことだからです。励ますことでかえってご遺族の心に負担を掛けることのないよう、くれぐれも気を付けましょう。
御母堂は、自分の親以外の母親に対し敬意を込めて呼ぶ時に使用されます。この呼び方はご葬儀などお悔やみの場で用いられることが多いですが、何らかの式典などでご存命のうちに使われることもあります。
御母堂は、日常生活でほとんど耳にしない敬称です。ただし、この敬称について基本的な知識さえ身に着けておけば、万が一の際に失礼のないよう立ち回れます。今後起こりうるさまざまな場面に備えるためにも、この記事をお役立ていただければ幸いです。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
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