2024-02-16
訃報とは突然に聞かされるものですが、即座に返さなくてはならないのがお悔やみの言葉やメールです。そのような時には、故人様を敬う言葉を使用しなければなりませんが、普段使用しない言葉は咄嗟に浮かばないものです。
故人様とメールを伝えてきた方の関係は続柄によってさまざまですが、それぞれに呼び方が決まっています。そこで事前に敬称を把握しておけば、いざという時に使用しやすいでしょう。そこで本記事では、お悔やみでよく使用されているご尊父、ご岳父との違いや正しい使用方法まで例文つきでご紹介していきます。
ご尊父(ごそんぷ)とは、第三者の父親に対する敬称です。「御尊父」と記載することもあります。親しい間柄でしたらお父様を使って問題ないこともありますが、ご尊父はお父様よりもさらに敬う気持ちを強めた言い回しであることは覚えておきましょう。
なお、ご尊父でも丁寧な言い回しではありますが、お悔やみの言葉として使用する際には「ご尊父様」と伝えることが一般的です。
ご尊父は父親を敬う言葉で、かつては公家や武家など身分の高い方々の間で使われていた敬称でした。なお、この言葉を自身の父親に使用してはいけません。ご尊父はあくまで、相手の実父を敬うための言葉なのです。
ご尊父と似たような言葉で、ご岳父(ごがくふ)という言葉があります。ご岳父もまたご尊父と同様に、父親を敬う言葉です。ただし、この言葉はご自身の配偶者の父親への敬称として使う言葉となります。つまり、ご尊父は第三者の父親を示すのに対し、ご岳父は義理の父親を指すのです。
なお、ご岳父のほか同じ意味で、「阿翁(あおう)」「岳翁(がくおう)」「岳丈 (がくじょう)」という言葉もありますが、現代で使用されることは少なくなりました。
ご尊父は、日常的な場面で使用されることはほとんどありません。では、どのような場面に用いられているのかというと、主に格式のある特別な場面で使用されています。
一つ目は、訃報のお返し(お悔やみ)をメールでお伝えする場面です。相手の父親ならご尊父様、母親ならご母堂様と書きましょう。メールは訃報で使うのには、ややカジュアルな位置づけです。したがって、文面自体が軽い印象になりすぎないよう、注意を払う必要があります。
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続きを読む二つ目はご葬儀でお会いした際、お悔やみの言葉として弔意をご家族の方へ伝える場面です。ただし、親しい間柄で、ご尊父様などの敬称を使用すると、妙に堅苦しく言い回しが不自然になってしまうこともあります。そのため、場合によっては「お父様」を使用した方が良い場面もあるのです。
ただし、仕事関係の方や目上の方には「ご尊父様」を用いるべきでしょう。敬称の使用は、相手との関係性を加味しながら使い分けるスキルが必要となります。
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メールの場合、件名にどこの誰からのお悔やみなのかを分かりやすく明確に記載します。会社関係の場合は会社名、部署、氏名を入れましょう。相手への気遣いと故人様を偲ぶ気持ちを書き、最後に返信不要の文言を付けます。
件名 (株)〇〇(会社名) 〇〇部の〇〇(名前)です
ご尊父様のご逝去を悼み 心よりお悔やみ申し上げます
ご家族のお悲しみはいかばかりかと存じますが どうかご自愛ください
ご尊父様のご冥福を心よりお祈り申し上げます
なお ご返信にはお気遣いなくお願いいたします
件名 〇〇より お悔やみ申し上げます
ご尊父様の訃報を伺い 大変驚いています
突然のさなかでご無理をされていないか心配です
何か力になれることがございましたら いつでもお声がけください
今はただ心からご尊父様のご冥福をお祈りいたします
なお ご返信のお気遣いは不要です
一般的な文例として、以下の二点を挙げました。メールの文書よりも固くなりますが、敬称を用いた上で故人様の死を悼み、喪主やご親族をいたわる気持ちをしっかりとお伝えすることが大切です。また、句読点や忌み言葉を使わないよう、配慮しましょう。
①ご尊父様の突然のご逝去の報に接し 心よりお悔やみ申し上げます
ご遺族皆様のお悲しみをお察し申し上げますとともに 謹んでご冥福をお祈りいたします
②ご尊父様のご逝去の報に接し ご家族皆様のお悲しみをお察し申し上げます
衷心より哀悼の意を表します
キリスト教式のご葬儀へ送る弔電は、「冥福」や「成仏」を使用しないよう、気を付けながら作成しましょう。
①神の御許に召されましたご尊父様が 安らかにご永眠されますようお祈りいたします
②ご尊父様の悲報に接し 悲しみにたえません
安らかにご永眠されますようお祈りいたします
では、ご尊父様、ご岳父様以外の敬称にはどのような種類や言い回しがあるのでしょうか。代表的な例を一緒に挙げますので、ぜひご参照ください。
・父親、母親…ご尊父、御母堂(ごぼどう)
・義父、義母…ご岳父、ご岳母(ごがくぼ)、ご外母(ごがいぼ)
・夫、妻…ご主人(ごしゅじん)、ご令室(ごれいしつ)
・祖父、祖母…ご祖父(ごそふ)、ご祖母(ごそぼ)
・兄弟…ご令兄(ごれいけい)、ご令弟(ごれいてい)
・姉妹…ご令姉(ごれいし)、ご令妹(ごれいまい)
・息子、娘…ご子息(ごしそく)、ご令嬢(ごれいじょう)
・伯父、伯母(両親の兄姉)…ご令伯(ごれいはく)
・叔父、叔母(両親の弟妹)…ご令淑(ごれいしゅく)
・甥、姪…御令甥(ごれいせい)御令姪(ごれいめい)
お悔やみの言葉を伝えるにあたり、敬称の次に注意しておきたいのは「忌み言葉」です。ここからは、避けるべき言葉の代表例を解説していきます。
忌み言葉とは、不吉を連想させるため、弔事の場面での使用を避けるべき言葉を指します。代表的な例としては、終える・終わる・無くす・散る・消える・去る・迷う・悲惨・災難・大変・忙しい・浮かばれない・4(死)・9(苦)などです。
また、忌み言葉には、生死を直接連想させるような言い回しも入ります。例えば、死ぬ・死亡・生死・急死などがこれに当てはまります。基本、ネガティブな言葉を使わないようにすることを念頭に置くようにしましょう。
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例としては、重ね重ね・次々と・追って・返す返す・再三・色々・たびたび・いよいよ・みるみる・くれぐれ・わざわざ・しばしば・しみじみなどです。特に「重ね重ね」は、「重ね」の一文字だけでも重ね言葉となってしまいますので、使用しないように注意しましょう。
ご遺族が信仰している宗教によっても、使用してはいけない言葉がありますので配慮するようにします。例えば神道やキリスト教の場合、仏教でのみ使用するべき、あの世・往生・冥福という言葉を使用しないように気を付けなければなりません。
また、浄土真宗では他力本願での成仏が教えの基本となっているため、「ご冥福をお祈りいたします」という言葉はNGとなります。シンプルに「お悔やみ申し上げます」とお伝えすれば良いでしょう。
訃報を受けた時は、ご遺族の気分を害するようなお返事ならないようにも注意をしなければなりません。ご遺族を励まそうとして「頑張って」と伝えたり「早く忘れた方がいい」などの声掛けをしたりすると、辛い思いをしているご遺族の神経を逆なですることになりかねません。
また、故人様の死因を伺うことや、お相手に負担を掛けてしまう長話も避けて、お悔やみの言葉は簡潔にお伝えするよう心がけましょう。
突然知らされる訃報に対し適切な対応をするためには、敬称の使い方を押さえておくことが大切です。いざという時に迷うことなくお悔やみが伝えられるよう、例文を参考にして日頃から備えておきましょう。
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