2023-08-10
氏子とは神社に祀られている氏神を崇敬する方々を指します。しかし、具体的にどのような立場の人なのか、どんなことをする人なのか分からないという方も多いでしょう。本記事では、多くの謎に包まれた「氏子」について、その役割や氏子総代の意味について詳しく解説します。
氏子とは、自らが住んでいる土地を守っているとされる「氏神(うじがみ)様」に帰依しており、守護を受ける方々のことを指します。
古代において、氏神を信仰し同族で団結していた方々は氏人(うじびと)と呼ばれていました。その頃の氏神様は「氏人の祖先神」という位置付けでしたが、中世以降には氏神様への認識に変化が現れます。
それは、人々が生まれた土地を守る産土神(うぶすながみ)や、特定の建造物や神社を守る鎮守神(ちんじゅがみ)として扱われるようになったことです。この変化と同時に、氏人の呼び名も氏子へと変わって呼び伝えられるようになりました。
氏子と同様でよく耳にするのが「檀家(だんか)」です。氏子と檀家は非常によく似ており、間違って覚えている方も少なくありません。しかし、信仰の対象やその内容には違いがあります。
氏子は神道(氏神様)を信仰して仕える方、檀家は特定の寺院に使える信徒になります。神社なら氏子、寺院なら檀家と覚えると簡単です。氏子は神社へ祀られた氏神を敬い、さまざまな行事の手伝いや神社への寄付を行う一方で、檀家は寺院に対しお布施などの支援をしていきます。
氏子は、氏神様への信仰心を持って神社の運営を助ける役割を担います。その役割とは、神社で行われる神事(祭事)への参加や運営の手助け、神社への寄付などです。
祭りでは山車を引き神輿を担ぐ行事へ参加し、地域活性化へ貢献します。また、神職の方と協力して、お札や縁起物を販売する手伝いも行います。もちろん、境内の清掃やしめ縄作りにも協力を惜しみません。
また、神社を運営していくためには資金も必要です。建物の修繕費、祭事に使う衣装代、儀式に必要な神具を新調するための費用など、準備した資金の用途は多岐にわたります。
しかし、国から補助が出ることはありません。そのため、運営の費用は神社がその全額を負担することになります。氏子はその出費を少しでも軽くするために、手伝いや寄付で神社を助けているのです。
氏子の代表者は、「氏子総代(うじこそうだい)」と呼ばれています。氏子総代は、氏子の集まり(氏子中)から選出された、代表格の世話人です。神職の方々と協力しながら、神社の運営を主だって助けていく中心的な役割を担います。
氏子総代の具体的な仕事は、氏子をまとめたうえで、その司令塔になることです。神社における運営や行事活動に関しては発言権もあり、神前協議へ参加したり、大事な会議の議長を務めたりします。
ただし、そのほかの作業内容については、氏子たちの仕事と大差ありません。神社の清掃や運営、さまざまな神事におけるサポートを皆で協力し合いながら行っていきます。監督の仕事がメインになるものの、状況に応じて働き手としての役割を果たす必要がある役割ともいえます。
では、「氏子になり氏神様をお支えしたい」と考えた場合、どのような手続きが必要になるのでしょうか。まず、氏子になるために必要な資格は特にありません。氏神様のもとに住む方なら誰でもなることが可能といわれています。
どこの神社が氏神様にあたるのかは、「神社庁」に電話をかけて確認するのが一番早い方法です。あるいは、近くの神社へ直接問い合わせ、氏子区域を伺っても良いでしょう。管轄区域の中に自分の住所があれば、そこが氏神神社です。
なお、その昔、氏子と認められるためには「氏子入りの儀式」を行う習慣がありました。儀式と聞いて「大変そうだな…」と思う方も多いでしょう。しかし、近年では一部の地域でしか行われておらず、比較的簡単な方法で氏子になることが可能です。
先にも述べたように、どの神社の氏子になれるかは、現在住んでいる住所によって決まります。就職や結婚、新居を構えたなどの理由で引っ越した場合は、その移転先が氏子として仕えることのできる場所となります。
新しい土地で氏子入りを果たすべく最初に行うことは、「氏神様の神社へ参拝しご挨拶すること」です。このとき、初参拝のタイミングとしては、「初詣や七五三といった節目が妥当では?」と考える方も多いでしょう。
しかし、地域によっては「氏子入り」といった神事が執り行われる場合もあります。そのため事前に行事の有無を確認し、臨機応変に行動することが大切といえます。
子どもが生まれた際、生後1ヶ月程度で氏神神社へ初めてのお宮参りを行うと、氏子入りだとみなされるのが現代の考え方です。神社へ足を踏み入れる際にはお赤飯を持ち込み、その場で額に墨をつけたり意図して子どもを泣かせたりします。これは、氏神様に子どもの泣き声を聞かせ、新しい氏子として認識していただくための行為です。
地域によっては、「7つまでは神の子でありそれ以降は人間になる」という考え方から、7歳の年で氏子と認められる制度があります。また、江戸時代の成人が15歳だった名残から、15歳で氏子入りを認めるといった考え方もあるので、不安な方は寺院の方に聞いてみると良いでしょう。
昨今では、少子高齢化の影響から、氏子が減少傾向にあるといわれています。そもそも、氏神様を信仰する家系ではない方や、慣例行事として参拝を行っている方は氏子になった自覚がない場合が多いため、そういった方々からの協力を得ることはできません。そのため、祭典の手伝いや寄付も年々減少しています。
むしろ、体調の悪化や年齢、仕事が多忙であるとの理由で、神事の手伝いや寄付が億劫になってしまう方が増えているようです。このような状況が続き、残念ながら経営が困難になる神社も珍しくありません。また、広い敷地の一部をどこか別の団体へレンタルしたり、さまざまな催し物を行って資金を調達したりするなどの工夫を凝らし、今後の経営存続のため注力していく神社も多く見られるようになりました。
神社へ寄付するためのお金は、神社の改築や修繕、新築の必要経費に充てられます。これは、「御奉賛(ごほうさん)」とも呼ばれています。また御奉賛は、古来より伝わっている「クラウドファンディング」のようなものです。
ご縁のある神社や好きな神様、氏神様が奉賛金を募っていれば、「協力したい」と思うのが心情です。また、実際に寄付をすれば、きっと嬉しい気持ちになるでしょう。なお、神様へのご奉仕になる御奉賛を行うと、限定の御朱印帳や貴重な神札などの返礼品をいただけることもあるので、気になる方は一度試してみると良いでしょう。
ただし、金銭的に余裕がない場合、無理をして奉賛金を支払う義務はありません。奉賛金への考え方も地域によってさまざまですので、どのようにすれば良いか分からない場合は、近所の方々や同じ氏子同士で相談してみると良いでしょう。
本来の氏子とは、同じ苗字を持つ同族が一丸となって氏神様を崇拝し支えていくというものでした。しかし現代では、同じ土地に住むさまざまな方々が氏子となり、氏神様に守られながら互いに支え合う関係性に変わっています。
現在住んでいる土地の氏神様を知り敬えば、土地への愛着はいっそう深まるはずです。氏神様は人生に良い影響を与える尊い存在なので、興味をお持ちの方は、少額の寄付から始めてみてはいかがでしょうか。
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