2025-03-14
僧侶がバチを使い、お経をあげながら叩く木魚(もくぎょ)は、日本人ならほとんどの方が目にしたことがあるのではないでしょうか。木魚はその名のとおり魚の姿が象られており、仏教の儀式には欠かせない大切な仏具の一つです。当記事では、この木魚の意味や由来、使い方などについて詳しく解説いたします。
木魚とは、僧侶が読経をする際に、バチで叩いて音を鳴らす法具です。「杢魚」とも書かれますが読みは同じで、丸っこい形をしていて、真ん中に割れ目があるため、一見鈴のように見えるかもしれません。しかしながら、よく見ると魚がモチーフとなっており、鱗などが彫ってあるものが多く見られます。
木魚は、僧侶が読経しながらバチといわれる棒でポクポクと叩くため、僧侶が腰かける位置からほど近い右側の位置へ設置されます。また、一般の方がご先祖様や故人様をご供養するため、読経する際に用いることも多く、ご家庭では仏壇の右側に置かれるのが基本です。
日本で最初に木魚が用いられたのは、室町時代の禅宗寺院です。最初の木魚は、山梨県の雲光寺に生えていた広葉樹から作られました。この木魚には「応永4年」と彫られているため、室町時代のものと推測されています。
木魚は、最初はご供養のために用いられたわけではなく、修行中の僧侶たちに食事の時間を知らせるための合図として使用されていました。御霊をご供養するための法具として本格的に広まったのは、江戸時代からだとされています。黄檗宗の開祖である隠元隆琦(いんげんりゅうき)が、江戸時代に来日した際、読経とともに木魚を叩くことで現在のスタイルを確立したといわれています。
現代で広く使用されている丸い形の木魚が広まったのは、明治時代からです。なぜ木魚が魚の形に彫られたのかというと、魚は瞳を閉じないことから、その様子にあやかって「寝る間も惜しみ修行に没頭しなさい」との教えにつながったためとされています。現在流通している木魚にも魚の鱗が彫られているのは、遠い昔から伝えられる教えの名残といえるでしょう。
ここからは、読経中に木魚を用いる理由について解説いたします。
木魚が寺院で使用される理由の一つとして、お経のリズムやテンポをつかむためのものと認識されています。木魚の音があれば、複数人での読経もきれいにそろえやすいです。
お経は長時間続けられることが多く、抑揚もほとんどないため、眠気を誘うこともあるかもしれません。そこで木魚の音が入れば、参列者の眠気を覚ましてくれる効果が期待できます。
木魚の音は煩悩を払い、その音を耳にする方の心身を浄化する力があると信じられています。読経と木魚のハーモニーは、煩悩を消滅させ、悟りの境地へ導かれる力にも貢献しているのです。
遠い昔、日本における木魚の役割は、僧侶たちに時刻を伝えることでした。現代においては読経をする際に、専用の座布団へ木魚を置き、木魚専用のバチでリズムよく叩いて使用されます。木魚に空いている穴は、叩く方とは反対側に向けて置きます。
木魚は、仏教の全ての宗派が使用しているわけではありません。木魚を主に使用する宗派は、禅宗・浄土宗・臨済宗・黄檗宗・曹洞宗・真言宗・天台宗です。なお、宗派によってリズムや叩き方は異なります。
浄土真宗・日蓮宗・法華宗では、木魚を使用しません。浄土真宗では、阿弥陀如来様の手による「他力本願」で即成仏されるといった教えがあり、般若心経を唱えないことから木魚も使うことはありません。日蓮宗や法華宗では、木魚の代わりに木柾(もくしょう)を使用します。木魚と同じ木製ですが、木柾は円盤の形をしており、カンカンと鳴るのが特徴です。
木魚は、主に僧侶がお経をあげる際に使用されています。木魚が用いられていることには、さまざまな意味や歴史背景があり、現代にまで引き継がれている伝統的な法具です。木魚に関しての理解が深まれば、より穏やかな気持ちで供養に臨めるでしょう。
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