2021-03-05
家計を支えているご家族が亡くなられてしまった時に遺されたご家族が金銭的な援助を受けられる遺族年金の1つに「遺族厚生年金」があります。遺族厚生年金は遺されたご家族にとって大変助かる制度ではありますが、受給要件や必要な書類が分かりづらい面があります。
そこで今回は、遺族年金の1つである遺族厚生年金を受給できる条件や申請の期限などについてご紹介します。
遺族年金は、家計を支えられていた国民保険もしくは厚生年金保険の被保険者が亡くなられた場合に、ご遺族が受け取ることができる年金になります。
ただし一口に「遺族年金」といっても実際には何種類かあり、それぞれ申請をする管轄が異なるだけでなく、必要な手続きも異なることもあります。あらかじめ遺族年金の手続きに関する情報を集めておけば比較的スムーズに手続きを進めることができますので、事前にしっかり確認しておきましょう。
なお、その他の遺族年金である「遺族基礎年金」に関しては、以下の記事で取り上げておりますので、ぜひご参照ください。
遺族年金の1つである遺族基礎年金とは?受給条件や申請に必要な書類をご紹介
遺族厚生年金は、厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方などが亡くなられた際にその方に生計が立てられていたご遺族に支給されます。サラリーマンのように事業所に勤務されていた従業員が主になります。
遺族厚生年金の申請先は「年金事務所または年金相談センターの窓口」、申請の時効期間は「5年」です。
遺族厚生年金の受給要件にも、亡くなられた方とご遺族に条件がありますので、注意しましょう。なお、遺族基礎年金と同様に保険料納付要件を満たしていることが必要になりますので、注意しましょう。
・亡くなられた方に関する条件:以下の4つのいずれかに該当する
1)厚生年金被保険者の方が在職中に亡くなられた場合
2)被保険者であった間に初診日がある傷病により、被保険者の資格を喪失した後、その初診日から5年以内に亡くなられた場合
3)障害厚生年金又は障害共済年金(1級、2級)の受給権者が亡くなられた場合
4)受給資格期間が25年以上の方又は老齢厚生年金等の受給権者の方(受給資格期間が25年以上の方に限ります。)が亡くなられた場合
※ 1~3は「短期要件」、4を「長期要件」と言います。
※ 遺族厚生年金の額については、短期要件であるか長期要件であるかによって計算方法が変わってきます。
※ 短期要件と長期要件の両方に該当する場合は、ご遺族からの申し出がなければ「短期要件」に該当することになります。
・ご遺族に関する条件
遺族厚生年金が支給されるご遺族の範囲は、亡くなられた方によって「生計を維持されていた(※1)」方で、以下の表に該当する方になります。また、遺族厚生年金が支給される方には優先順位がありますので、その点に関しましても以下の表にまとめさせていただきます。
順位 | 亡くなられた方との関係 | 年齢要件 |
---|---|---|
1 | 妻 | 年齢要件なし ※2 |
夫 | 死亡当時55歳以上で、支給開始は60歳 ※3 ※4 | |
子 | 死亡当時18歳到達年度末まで、または20歳未満の1級または2級に該当する障害の程度の状態にあること ※5 | |
2 | 父母 | 死亡当時55歳以上で、支給開始は60歳 |
3 | 孫 | 死亡当時18歳到達年度末まで、または20歳未満の1級または2級に該当する障害の程度の状態にあること |
4 | 祖父母 | 死亡当時55歳以上で、支給開始は60歳 |
※1 「生計を維持されていた」とは、将来にわたって年収850万円以上の収入を得られない状態を指します。
※2 30歳未満で子のいない妻の場合、遺族厚生年金の支給は5年間となります。
※3 夫は遺族基礎年金を受給中の場合に限り、遺族厚生年金も合わせて受給できます。
※4 遺族厚生年金の受給権が子にある期間においては、その間夫に対する遺族厚生年金は支給停止となります。
※5 遺族厚生年金の受給権が妻にある期間においては、その間子に対する遺族厚生年金は支給停止となります。
遺族厚生年金の支給開始時期は、ご遺族が妻や子(孫)であれば死亡日の翌月からになります。ただし、夫・父母・祖父母が対象者である場合には、上記の表にもあるように60歳になってからになりますので、注意が必要です。
遺族厚生年金の申請手続きを行うにあたって様々な書類を用意しなければいけません。書類に不備があると受給できるまでの期間が延びてしまいますので、事前に必要書類を確認しておきましょう。
・年金請求書
・年金手帳
・戸籍謄本:受給権が発生して以降、6か月以内に発行されたものが必要です。
・住民票の写し(世帯全員分):住民票コードが記載されており、個人番号が記載されていないものが必要です。
・故人の住民票の除票
・収入が確認できる書類:年金請求者と子の2種類の所得証明書などの書類が必要で、子どもに収入がない場合は学生証などが必要です。
・自治体に提出した死亡証明書
・受取先金融機関の通帳等
・印鑑
・第三者行為事故状況届
・交通事故証明または事故が確認できる書類
・確認書
・被害者が扶養していたことがわかる書類:健康保険証の写し・源泉徴収票・学生証の写しなどが該当します。
・損害賠償金の算定書:すでに損害賠償が決定している場合に必要です。示談額がわかるものを用意しましょう。
・年金加入期間確認通知書:死亡者が共済組合に加入されていた期間がある場合
・年金証書:他の公的年金から年金を受けている場合
・合算対象期間が確認できる書類:状況により異なる
遺族年金の受給条件や手続きに必要な書類については、遺族年金の種類によって異なりますので事前にしっかり準備を整えるようにしましょう。なお、社会労務士に代理手続きを依頼するのもよいでしょう。費用はかかってしまいますが、専門家による確実な仕事が期待できるので安心して任せられるでしょう。
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