2020-09-11
年末の時期に日頃お世話になっている方々にお贈りする「お歳暮」。「一昔前に比べると、お歳暮の慣習が薄れてきた」などと言われることもありますが、まだまだ盛んに行われています。そんなお歳暮ですが、ご自身が喪中だった場合やお贈りする予定の相手が喪中の場合、お歳暮をお贈りしてもいいのか悩まれる方は少なくないと思います。
そこで今回は、喪中の際のお歳暮に関する考え方やマナーに関してご紹介します。
お歳暮は、「歳暮」すなわち「年(歳)の暮れ」に1年間お世話になった方々へのお礼や感謝の気持ちと「これからも宜しくお願いします」との想いも込めて贈り物をする習慣を指します。日本でのお歳暮の歴史は室町時代が始まりとされており、その後江戸時代に商人が年末に贈り物を持参して挨拶周りをした習慣が広まっていき、明治には現在のようなお得意様やお世話になった方々にお贈りする形になったと言われています。
お歳暮はもともと、お正月にご先祖様の霊をお迎えする「御霊祭」のお供え物、つまり新年に向けて福を招くためのお供え物として贈られていました。塩鮭や餅、鰤(ぶり)などの年越しの際に必要な物や年神様のお神酒(みき)のつまみとなるような数の子やスルメといった珍味が定番とされていました。
お歳暮によく似た言葉として「お中元」があります。ともに、「日頃お世話になっている方々への感謝の意味を込めてお贈りするもの」ではありますが、いくつか違いもあります。以下では、よく似た言葉である「お歳暮」と「お中元」の違いについて見ていきましょう。
お歳暮が先に述べたように「年(歳)の暮れ」にお贈りするのに対し、お中元は6月中旬~8月半ばまでにお贈りします。
お歳暮には、1年間お世話になった方々へのお礼や感謝の気持ちと「これからも宜しくお願いします」という想いが込められています。一方のお中元には、お贈りする時期もありますので夏の暑さに対する暑中見舞いの気持ちと「半年間お世話になりました」という想いが込められており、両者で意味合いが異なります。
お歳暮とお中元はどちらもお贈りする品物としては食品が多いですが、その品物にも違いがあります。お歳暮が年末にお贈りするということでお正月にご家族やご親戚が集まった際にみんなで食べられるようにハムやお肉類、スイーツなどが選ばれます。一方のお中元では、そうめんやゼリーなどの食欲が落ちがちな夏場でもおいしく食べられたり、涼がとれる物が選ばれます。
さて、本コラムにおいて一番のテーマである「お歳暮は喪中にお贈りしても大丈夫なのか?」ということですが、お歳暮は日頃お世話になっている方々への感謝の意味を込めてお贈りするものであり、御年賀などのお祝い事とは異なります。
そのため、たとえお歳暮をお贈りする側やお歳暮を受け取る側が喪中であっても、お歳暮をお贈りしても問題ありません。
ただし、「忌中」の場合はお歳暮をお贈りするのは控えるのがマナーとされています。忌中は、故人様の魂が現世から旅立つ四十九日までの期間を指しますが、昔から死を「穢れ」ととらえていた日本では、死による穢れを他者にうつさないように、忌中では外部との接触をなるべく避け、身を慎まなければいけません。
お歳暮をお贈りするのであれば、忌中は避け、四十九日が過ぎた忌明け後にお贈りするようにしましょう。
お歳暮をお贈りする際や受け取った際にご自身やお相手が喪中期間の場合、気を付けたいことがいくつかあります。特にお歳暮をお贈りするお相手が喪中の場合には、お相手の悲しみに対する気配りは欠かせません。そこで、以下で喪中のお歳暮に関する注意点をまとめさせていただきます。
喪中のお歳暮では、熨斗(のし)や水引が通常のお歳暮とは異なりますので注意が必要です。通常のお歳暮では蝶結びの紅白の水引が書かれた熨斗紙を使用しますが、喪中の際のお歳暮では水引がない無地の掛け紙、または短冊を使用しましょう(短冊は略式になります)。なお、これに関してはご自身が喪中であってもお相手が喪中であっても同様です。
お歳暮をお贈りする際は、お歳暮を故人様宛にお贈りしてはいけません。お歳暮を引き続きお贈りする場合は故人様のご家族宛てにお贈りしましょう。ただし、お歳暮はお世話になった方々に感謝の気持ちをお伝えするためにお贈りするものですので、お世話になった故人様のご家族であってもお付き合いがそれほどなければ、それを機にお歳暮をお贈りするのをやめるのが一般的です。
お歳暮をお贈りする際は、品物と一緒に手紙を添えるのがマナーです。もし、お歳暮に手紙を同封できない場合には、お歳暮が到着するのを見計らって手紙が届くように郵送しましょう。なお、お歳暮をお贈りするお相手が喪中の場合は、手紙を同封するにしろ別送するにしろ、「祝いの言葉」の使用は避けましょう。
ご自身のご家族がお亡くなりになり、喪中の時その故人様宛にお歳暮が贈られてきた場合は、どうすればいいのでしょうか。この場合、先方はご不幸を知らないか、ご不幸を知る前にお歳暮の手配をしてしまったと考えられますので、贈り物に対するお礼状を出しましょう。そのお礼状には、贈り物のお礼のほか、当人が亡くなられたことを知らせる内容にします。
喪中の際に贈ってはいけない品物というのは特になく、お歳暮のマナーとして贈ってはいけないものを守っていただければ問題ありません。ただし、一般的な弔事でのマナーとして、祝い事を連想させる紅白の品物は避けるようにしましょう。
ご自身やお相手が喪中であった場合、お歳暮をお贈りするのを躊躇してしまいがちですが、気を付けるべきマナーをおさえていればお世話になった感謝の気持ちとしてお歳暮をお贈りしても問題ありません。大切なのは、お歳暮を贈る時期や熨斗紙などのマナーを守り、お歳暮をお贈りする方に不快な思いをさせないように配慮することです。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
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