2024-09-06
現代の寒中見舞いといえば、喪中の方とやり取りするためのはがきというイメージを持つ方が多いでしょう。かつて寒中見舞いは、暑中見舞いと同じく、差し出す相手の方の体調を気遣う季節の挨拶状でした。しかしながら、今は主に喪中の方とのやり取りとして差し出されることがほとんどです。
ここでは、寒中見舞いの正しい書き方やマナー、差し出す時期などをご紹介いたします。
そもそも寒中見舞いとは、その名のごとく最も寒い冬の時期に相手の方を気遣って差し出す季節の挨拶状です。しかしながら現代では、お正月を祝えない喪中の方や、旅行や帰省でお返しの年賀状が遅れてしまった方に対して差し出す年賀状の代わりへと、用途が変化しています。
寒中見舞いを届ける時期は、松の内から立春までの間です。松の内とは、年神様がいらっしゃるお正月の期間に正月祝いの装飾をする時期を指し、年明けから7日、地域によっては15日までと定められています。
つまり、寒中見舞いは松の内が終わってから立春までの期間に、相手の方へ届けられるものと覚えておきましょう。
年内に喪中はがきが届いた場合、喪中の方に年賀状を出すことは控えなければなりません。本当は年賀状を出さないだけでも良いのですが、松の内が過ぎた頃にお返しとして寒中見舞いを書くと、相手の方へ丁寧な印象を与えることができます。
基本の書き出しは、「寒中お見舞い申し上げます」で問題ありません。ただし、相手の方が目上や上司の方だった場合、書き出しはより丁寧な言葉を選べば良い印象を与えられます。その際は、「寒中謹んでお見舞い申し上げます」「寒中御伺い申し上げます」などがおすすめです。
また、時候の挨拶や祝いの言葉、忌み言葉は用いず、頭語・結語・句読点は省略して縦書きで記載します。なお、文章の最後には日付、氏名、連絡先も明記しましょう。
喪中はがきをいただいた場合の例文は、以下のようなものがあります。
寒中謹んでお見舞い申し上げます
○○様のご逝去を悼み 謹んでお悔やみ申し上げます
ご服喪中につき 年頭のご祝詞を控えさせていただきましたが 皆様いかがお過ごしでしょうか
昨年も大変お世話になり ありがとうございました
向寒の折からお身体を大切に どうぞ良いお年をお迎えください 本年もよろしくお願い申し上げます
喪中であることを知らず、年賀状をお送りしてしまった場合の例文は以下のようなものがあります。
寒中お見舞い申し上げます
先日は○○様の喪中を存じ上げず年賀状をお送りしてしまい 大変失礼いたしました
心よりお詫び申し上げますとともに ○○様のご冥福をお祈りするばかりでございます
まだまだ寒い日が続きますので 風邪など召されませぬよう どうかご自愛くださいませ
喪中の方が寒中見舞いを書くケースは、年末にご家族が亡くなり喪中はがきを出せなかったがために、年賀状もお断りすることができなかった状況、または全ての方へ喪中はがきを出せずに年賀状をいただいてしまったパターンなどです。
内容としては、年賀状のお礼、喪中になったため年賀状が書けなかったこと、そして連絡が遅れたお詫びを記載する必要があります。また、時候の挨拶や祝いの言葉、忌み言葉は用いず、頭語・結語・句読点は省略し縦書きで記載するという注意点は、お返事の場合も同じです。
ここからは、喪中の方から寒中見舞いを送る例文を記載いたしますので、ご参照ください。
まず、年末に故人様の不幸があった場合の例文をご紹介いたします。
寒中御伺い申し上げます
このたびはご丁寧なお年賀状を頂戴いたしましてありがとうございました
昨年12月○日 ○○の○○(記入者との続柄と故人様の氏名)が永眠し 年頭のご挨拶を差し控えさせていただきました
旧年中にお知らせが行き届かずご挨拶が遅れましたこと 深くお詫び申し上げます
本年も変わらぬお付き合いのほどよろしくお願いいたします
まだまだ寒さが続きますが どうかお身体を大切にお過ごしください
喪中はがきを出せず、年賀状が届いた場合の例文は以下のようなものがあります。
寒中謹んでお見舞い申し上げます
厳寒の候 お変わりはありませんか 新年のご祝詞をいただきましてありがとうございます
昨年○月に○日 ○○(記入者との続柄)の○○(故人様の氏名)が死去いたしましたため 年始のご挨拶を差し控えさせていただいておりました
ご挨拶が行き届かず 大変申し訳ございません
寒さもますます厳しくなりますが どうかご自愛ください 本年もよろしくお願い申し上げます
故人様宛に年賀状が届いた場合の例文は、以下のようなものが代表的です。
寒さの折 皆様いかがお過ごしでしょうか
このたびは年頭のご挨拶を賜りまして ありがとうございます
昨年○月に○日 ○○(記入者との続柄)の○○(故人様の氏名)が他界いたしました
旧年中にご挨拶が行き届かなかったことを深くお詫び申し上げますとともに 生前故人が賜りましたご厚情に 心より感謝申し上げます
寒さ厳しい折 何卒お身体を大切にお過ごしくださいませ
次に、寒中見舞いを送り合う際に関するマナーについて解説していきます。
寒中見舞い用の官製はがきは、郵便局やコンビニ、大型のスーパー、文房具店などで購入できます。喪中はがきやお祝い向けの華やかなはがき、年賀状用は選ばないよう気をつけましょう。
寒中見舞い用の官製はがきは、切手欄に胡蝶蘭のデザインが施されています。また、郵便局で購入される場合、寒中見舞い向けのイラストや写真、定型文などが印刷されたはがきも注文できます。
喪中のやり取りに関する寒中見舞いのはがきを選ぶ場合は、相手の方のお気持ちを考慮し、文章のみにするか、淡い色合いのシンプルなイラストに留めておきましょう。
郵便局以外の場所で官製はがきが見つからない場合は、普通の切手を用いて構いません。ただし、寒中見舞いのはがきに弔事用の切手を貼るのはマナー違反になってしまいますので注意しましょう。
拝啓などの頭語は「謹んで申し上げます」、敬具などの結語は「謹んで申し上げました」という意味になり、それぞれ一般的な手紙で使用されます。ただし寒中見舞いの場合、頭語、結語は省略するのがマナーですので注意しましょう。頭語、結語の具体例として、以下の言葉が挙げられます。
拝啓(はいけい)、拝呈(はいてい)、謹啓(きんけい)、謹呈(きんてい)、前略(ぜんりゃく)、恭啓(きょうけい)
敬具(けいぐ)、敬白(けいはく)、拝具(はいぐ)、謹言(きんげん)、謹白(きんぱく)、敬白(けいはく)
すでに文章が印刷されている寒中見舞い用官製はがきの場合は、そもそも頭語や結語がついていませんが、ご自身で文章を記載される場合は、上記の言葉をうっかり加えてしまわないように気をつけましょう。
本来の寒中見舞いは、暑中見舞いと同様、寒さや暑さをきっかけとした古くからの伝統的なコミュニケーションツールでした。ただし、寒中見舞いにおいては喪中というデリケートな機会で用いられることが多くなったため、守るべきマナーにも変化が生じています。
さまざまな場面での配慮が必要になってきている昨今ですが、いつか寒中見舞いを出す機会があれば、本記事の内容をお役立ていただければ幸いです。
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