2024-11-01
ご家族に不幸があった場合、玄関に「忌中」と書かれた札が掲げられます。この札は忌中札(きちゅうふだ)といって、日本の伝統的な様式です。目立つ位置に貼ることで近所の方々へ不幸を知らせるため、そして死の穢れを周りへ移さないようにするためという心遣いでもありました。
現代でも、各地域に忌中札の風習は残っています。そこで当記事では、この忌中札の意味や書き方、掲げる時期、掲げ方などを解説いたします。
忌中札とは「きちゅうふだ」と呼ばれており、ご家族 が亡くなった時に玄関の外へ掲げられるお札のことです。地域によっては忌中紙(きちゅうし)とも呼ばれています。
忌中札を掲げる行為は、古くから伝えられてきた文化です。しかしながら、ご家族が亡くなれば必ず玄関に貼らなければならないという決まりはありません。地域により掲げるご家庭が多い場所もあり、誰も掲げないといった場所もありますので、掲げるか迷った場合は周囲の方へ相談してみるのも良いでしょう。
ここからは、忌中札を掲げる場合の書き方や期間を解説いたします。
忌中札は、黒枠で囲んだ半紙の中央に「忌中」の2文字を書くのが基本です。また、半紙に文字だけを記載し、黒い枠の額縁に入れる場合もあります。
地域によっては、お通夜や告別式、出棺の時刻を記載するケースもあります。ただし、故人様の氏名は記載しません。なお、近年では葬儀社にお願いすれば、忌中札を用意してもらえることがほとんどです。
かつてはすだれに忌中札を貼って、玄関の外に掲げていたご家庭が多数でしたが、現代では外扉や門に、テープなどを使用して貼り付けることが多いです。
忌中札を掲げる場合は、ご家族が亡くなった時点で早急に玄関先へ貼り出すことが基本です。地域によってはお通夜やご葬儀の日程が決まり次第、掲げる場合もあります。
忌中札を取り外す期間は、地域によって違いがある点に注意が必要です。火葬までを終えてから取り外すのが基本ですが、初七日まで掲げておく地域もあります。
古来の日本では、「死は穢れである」と恐れられていた時代がありました。そこで死者が出たご家庭では、玄関先に忌中札を貼って極力自宅へこもり、人との接触を断っていたのです。つまり、忌中札は他のご家庭に穢れを移さないようにするためのおまじないといった意味も込められていました。
ただし、近年では「死は穢れ」という概念は薄まりつつあります。そのため、忌中札の役割も、ご近所の方々へ忌中であることをご報告するためといった意味に変化してきているのです。
一方、死を穢れとは考えない浄土真宗の信仰者は、忌中と書くのではなく「還浄(げんじょう)」と書いた紙を貼ります。還浄とは、故人様が既に成仏されたことを意味する言葉です。また、キリスト教ではそもそも忌中や喪中の概念がないので、忌中札を貼ることはしません。
忌中札は、日本に伝わる古くからの風習です。しかしながら、近年では忌中札を見かけることがめっきり減りました。主な理由は、以下の通りです。
忌中札を掲げれば、近々お通夜やご葬儀で自宅に誰もいなくなることを知らしめることになります。かつて多くのご家庭で忌中札を掲げていた時代では、空き巣被害が多く問題視されていました。
近年では、ご近所同士の付き合いが希薄となった地域が増えたため、近所にご葬儀のお手伝いをお願いする機会もなくなりました。また、葬儀社へすべてを依頼するご家庭が多くなったため、ご近所に訃報を知らせる必要性がなくなりつつあるのも、忌中札が減った一因です。
近年ではSNSやメールが幅広く普及し、知らせるべき方々にだけ訃報を伝えやすくなったため、忌中札を掲げる必要がなくなりつつあるようです。
その昔は、ご家族が亡くなった際は玄関先に忌中札を貼るのが通例となっていましたが、時代によって状況は変化しつつあります。ただし、人と人との繋がりが深い地域では、忌中札の慣習が続いていることも事実です。そのため、忌中札を貼るかどうかを迷われている方は、まず周囲の方と相談しながら決められるのが良いでしょう。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
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