2024-05-24
老後の生活費は、誰もが一度は気にする問題です。年金の支給は繰り上げた方が良いのか、または繰り下げた方がお得なのか、いろいろと調べられている方が多いのではないでしょうか。
そこで当記事では、年金は基本的にいつからもらえるものなのかをはじめ、繰り上げおよび繰り下げ受給のメリット、デメリットを詳しく解説していきます。
年金の受給が可能になる年齢は、原則65歳からです。しかしながら、繰り上げの手続きを行えば、60~64歳からでも受給できるようになります。また、66~75歳まで受給を繰り下げる手続きも可能です。ただし、それぞれにメリットとデメリットがあるので、それを良く踏まえた上で手続きを検討しましょう。
なお、一度繰り上げ受給の手続きを行うと、後から受給期間を変更できなくなります。
老後にもらえる公的年金は、国民年金と厚生年金の2種類です。日本国民全ての方が対象となるのが国民年金、公務員や会社員として働かれていた方々に上乗せされるのが厚生年金です。ここからは、それぞれの年金制度について詳しく解説いたします。
国民年金とは、日本に住む国民の方全てが加入する国の年金制度であり、基礎年金とも呼ばれています。公務員や会社員はもちろんのこと、非正規雇用の方や自営業、フリーランス、専業主婦の方にも支払い義務があります。
なお、国民年金は通常の老齢給付だけではなく、障害を負った場合や死亡した場合でももらえるのが特徴です。ご本人が死亡した場合は直接受け取れませんが、未払いになった分の金額は同一生計だったご遺族が未支給請求という手続きを経て、ご本人の代わりに受け取れます。
厚生年金とは、公務員や会社員の方が加入する制度です。支払いは、雇用主と従業員が折半する形で国に納めていく方式となります。厚生年金に加入していれば、年金受給の時期になると、国民年金に厚生年金がプラスされ受給できるのです。
厚生年金は、受給権のある方が亡くなると受給できません。この場合、ご遺族は速やかに管轄の年金事務所か年金相談センターへ報告書を提出する必要が出てきます。後に受給の余剰分が発覚すると、返金の請求がきてしまいますので気を付けましょう。
年金のもらい方には60歳になったらもらえる繰り上げ受給と、もらうことを65~75歳まで先延ばしにする繰り下げ受給があります。では、それぞれにどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。ここからは、それぞれを明らかにしていきます。
繰り上げ受給には、主に以下のようなメリット、デメリットがあります。
・メリット
①早めに受給が叶う
年金受給を前倒しするということは、早めに安定した収入を確保できるといった安心感を得られることです。
②健康で動ける時期から収入が増える
例えば病気で余命を告げられた際は、なるべく早めに年金を受け取っておくべきでしょう。そうすることで、生涯年金額を少しでも増やすことができます。
・デメリット
①受給期間の変更ができない
申請後に気が変わったとしても、受給期間の変更はできません。つまり、申請の取り消しは不可能です。
②受給額が減額される
通常の支給日より5年早くお金をもらうということは、その分減額されることも視野に入れましょう。減額された金額は、変わることがありません。
③国民年金と厚生年金は同時受給となる
繰り上げ受給をした場合、国民年金と厚生年金はワンセットと考えます。すなわち、国民年金を繰り上げれば、厚生年金も同時に受給開始となるのです。厚生年金は働きながらの受給ができますが、給与と年金受給額の合計が一定の数値を超えた場合、はみ出した金額が減額されてしまいます。
④障害基礎年金、遺族厚生年金、寡婦年金の受給権喪失
繰り上げ受給を行うことにより、以下の年金受給権を喪失します。
・障害基礎年金…ほとんどの傷病が対象となる病気やけがで、仕事や生活が困難となった場合年齢に関係なく受け取れる年金です。
・寡婦(かふ)年金…ご家族の支えとなり会社員や公務員(第一号保険者)として働いていた方が、年金を受け取る前に亡くなった場合、本来本人が受け取るはずだった年金額の一部をご遺族が受け取れる年金です。
また、65歳まで受け取れるはずの遺族厚生(共済)年金(厚生年金を受け取るご本人が亡くなった場合、生計を共にしていたご遺族に受給権利がある年金)も、他の年金と合わせて受給できませんので、国民年金か遺族厚生年金のいずれかしかもらえなくなります。
繰り下げ受給には、主に以下のようなメリット、デメリットがあります。
・メリット
①年金が増額される
65歳を超えても受給されなければ、その期間を先延ばした分だけ当然ながら年金額は増額されます。簡単にお伝えするならば、1年間の我慢で8.5%の増額が叶うのです。例えば、70歳まで受給を伸ばせば42%の増額、75歳からの受給なら84%も年金が増額します。
受給が始まってから一生涯の年金増額は、非常に魅力的です。ただし、75歳までの生活費を確保するために、早いうちから貯金や資産運用、職場継続を視野に入れる必要があります。
・デメリット
①寿命が短くなってしまった方は受取額が減る場合がある
例えば70歳まで受給をこらえ、42%の増額を受けたとしても、そこから1年後に事故や病気で亡くなった場合、ご本人がもらえる年金の総額は少なくなります。つまり、受給期間が短くなれば、年金総額も大幅に減るのです。なお、ご遺族に支給される遺族年金は、増額の対象外(通常の支給額)となります。
②加給年金、振替加算が受け取れなくなる
加給年金とは、下記のような方がもらえます。
・20年以上厚生年金を払い続け、なおかつ対象となるご家族が存在する方
・65歳になった時点で65歳未満の配偶者がいる、または3月31日の誕生日を迎えていない18歳未満のお子さまがいる
夫婦で年齢差がある場合は長期間もらえますが、夫婦が同年代の場合は加給年金付与の対象外です。なお、条件を満たしている方でも、繰り下げ期間に配偶者が65歳に達してしまった時点で加給年金は受給できなくなります。
振替加算は加給年金が打ち切られた後、配偶者の基礎年金に上乗せさせる額ですが、これは一部の例外を除いて、加給年金を受けた方でないと支給を受けるのが難しいものです。ただし振替加算は、一度受け取れば一生涯受け取り続けることができます。
③社会保険料の負担額が増額する場合がある
大幅な年金の増額は、社会保険料支払いの増額にもつながります。せっかく年金が増額されても、国民健康保険料や住民税、介護保険や所得税に多額の支出が増えるのは、本末転倒といえるでしょう。
繰り下げ受給をお考えの場合は、健康面に自信がある方、そして実際に支給される年金の中にそもそも加給年金や振替加算が含まれない方、さらには社会保険料の負担が増えても生活に支障のない方に向いています。
どの時期に年金をもらい始めるのが一番得をするのかは、それぞれの状況によって異なるので、本当の正解はありません。
上記でご説明したとおり、繰り上げ受給では将来的な受取額が減り、受けられるはずの恩恵が消失するデメリットが多いです。しかしながら、貯金もなければ働くことが難しいなど事情のある方、または定年退職で収入が激減した方、お金がすぐに必要になった方は、60歳からでも繰り上げ受給を行うことでストレスから解放されます。
60歳を超えても働く元気がある方や寡婦年金が受給できる方、雇用保険の基本手当も受給したい方には、受給を我慢した年数だけ受給額が増える繰り下げ受給が向いているでしょう。ただし、繰り下げ受給には社会保険や税金増額の可能性が出るほか、加給年金や一生涯受給される振替加算のカットというデメリットが発生する恐れがあるのも忘れてはいけません。
支給される年金総額は、それぞれ違います。繰り下げで増える年金額、それに伴う社会保険料や税金の支出などで、繰り下げや繰り上げを改めて考えたい方は、地域のファイナンシャルプランナーや年金事務所、街の年金相談センターに相談してみるのも一つの手です。
ここでは、年金の金額や支給日などについての基本的な内容をご紹介いたします。
年金ひと月分の受給額は、国民年金で約56,000円前後、厚生年金がプラスされた場合では約144,000円前後が標準となります。しかしながら、この金額はあくまでも平均値です。月収から納付された期間や収入によっても金額は左右されるので、実際は人それぞれということになります。
なお、国民年金額には計算方法があります。「789,000円×保険料納付月数÷480=国民年金の受給額」にご自身の保険料納付月数を当てはめることで、1年分の総額が計算できます。
ただし、法律によって年金の支給額は年々減額の傾向にあります。働いて税金を納める若者が減っていく現代においては、今後も支給額の減額は避けられないでしょう。将来のためにも、貯金などの蓄えは考えておく方が無難といえます。
年金の支給日は、基本偶数月の15日です。つまり、年金の支給日は年に6回で、1回につき2ヶ月分が支給されることになります。なお、15日が土日祝日にあたった場合は、その直前の平日が支給日です。
老後の不安といえば、年金の支給額が一番の課題でしょう。繰り上げた方が良いのか、もしくは繰り下げるべきか、または現状維持で良いのか、答えは人によって違います。
しかしながら、ご自身の人生設計と照らし合わせながら、現在からでも準備できることはあります。当記事を参考にしていただき、素敵な老後をお迎えいただければ幸いです。
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