2024-05-17
かけがえのないご家族が重大な病気に見舞われた際、ご本人だけではなく周りにいる方々も辛い思いをすることになるでしょう。そのような方々には、痛みや苦しみ、心のケアはもちろん、さまざまなサポートが必要となります。そのような助けが「緩和ケア」と呼ばれるものです。
この記事では、緩和ケアの内容や詳細、そしてその内容や対象者、緩和ケアを受けるまでの流れについて詳しく解説していきます。
緩和ケアと聞かされると、「もう命を諦めるしかないのか」という終末医療的なイメージを持たれる方が多いかもしれません。もちろん、痛みや苦しみの緩和を目的として利用されている方もいらっしゃいます。その一方で、病気の改善のために苦しみを和らげ、治療を円滑に進めることを目指した活動でもあるのです。
世界保健機関(World Health Organization)では、かつて緩和ケアを終末期の方だけに適用されるものと定義づけていました。しかしながら、2002年にこの定義は変更されています。「生命を脅かす疾患に直面している患者とそのご家族に対して、疾患の早期より痛み、身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題に関してきちんとした評価を行うものである」というものです。
さまざまな問題がその後の障害とならないよう、前向きなアプローチをすることが、現代における緩和ケアの一番の目的となっています。ただし、この緩和ケアは、患者やご家族の希望により終末期まで受けることも可能です。
緩和ケアと似た言葉で、ホスピスケアという言葉をよく耳にします。ホスピスケアは、がんの方を中心に痛みや苦しみのケアをするという意味では、緩和ケアと同等です。ただし、治癒が望めない時期から終末期について行われる処置であり、療養と考えるには語弊があります。
治療・療養関係なく、全人的に患者様の希望を尊重し、それぞれに合ったケアをしていくというものがホスピスケアなのです。
ターミナルケアも緩和ケアとイメージが似ていますが、基本的にはホスピスケアに近く、ほぼ終末期に該当する患者様のケアを行うことを目的としています。
緩和ケアやホスピスケアと決定的に違うのは、がん患者のみが対象ではないところです。患者ご本人の痛みや苦しみを和らげるのは、ホスピスケアや緩和ケアと同じですが、ターミナルケアではホスピスケアと同様に、患者の無駄な延命は意識しません。あくまで患者の尊厳を守りながら、終末を迎えるその日まで、心身のサポートを施していくケアになります。
緩和ケアは、がんによる辛く苦しい症状を緩め、患者が衛生的な環境で安心しながら食事や睡眠をとることで、心身ともに元気になってもらうというものです。しかしながら、重病患者の緩和ケアは、その内容として非常にデリケートなものとなります。
患者の状態に合わせながら行うので内容はさまざまですが、疼痛緩和や胸水、腹水などのチェック管理、そして床ずれケアや栄養管理などが細やかに対応されるのが一般的です。そのため、医師と患者の1対1で緩和ケアの方針を決めることはあまりありません。
がんの特性を知る医師と薬に詳しい薬剤師、生活をサポートする看護師、食事の管理を担う管理栄養士、身体の動きを無理なくサポートする理学療法士、心の支えやさまざまな問題に対応する心理士やケアマネージャー、ソーシャルワーカーなどの専門家が一丸となって緩和ケアの対応にあたります。
緩和ケアの対象者は、重病を患ってしまったご本人、そしてそれを支えていくご家族の方々です。日本国内では主にがん患者の方とそのご家族が対象となっています。
ただし海外ではがん患者の方だけではなく、心疾患やエイズなど、末期のさまざまな疾患を持つ方々すべてが対象です。つまり、緩和ケアを必要としている全員がケアを受けています。
緩和ケアは、必ずしも病院へ入院しなくてはならないわけではなく、割と自由な場所で受けられるのが大きな特徴です。ここからは、緩和ケアが受けられる場所についてご紹介していきます。
病院には通常の外来のほか、緩和ケア専用の外来もあります。つまり、定期的な通院は必要となりますが、そこで専門的に痛みや苦しみを和らげる治療が受けられるのです。
通院が困難などの事情がある方は、入院したままで緩和ケアを受けることが可能です。その場で医師や看護師、または専門職の資格を持った方からの手厚いケアを受けられます。
緩和ケア病棟とは、がんの治療だけではなく、精神的な苦痛を和らげることにも重きを置いた施設です。通常の病棟のようにご親族や友人のお見舞いも可能ですし、季節のイベントなども開催されます。この場で心身の症状が整った方は、退院することもできます。
自宅での緩和ケアの最大のメリットは、患者の自由がきくという点です。しかしながら、自宅でケアするための前準備が必要となります。
訪問治療や訪問看護の手配、また介護や入浴がご自身で困難である場合は介護サービスも検討する必要があります。これらの手配や手続きは、地域のケアマネージャーに力を借りると良いでしょう。
緩和ケアは、がんなどによる症状が重いと診断された時点で、すぐに申請できます。緩和ケアが受けられれば、病気の治療と苦しみの緩和が同時に受けられるので、これほど心強いものはありません。緩和ケアにはさまざまな方法があり、色々な場所で受けることもできるので、まずは担当医師に相談してみましょう。
ここからご説明する緩和ケアの費用は、あくまで一般的なものです。しかしながら、窓口で支払う医療費が一定額を超えた場合は、その分が給付される高額療養費制度があります。これは、保険制度に加入されている方なら誰でも申請できますので、もし費用が膨大なものになるようでしたら、この公的な医療保険制度を利用していきましょう。
・医療費
・入院費、1割負担の場合1日5,000円程度(月の上限は60,000円弱程度)
・ベッド代、個室代など(病院や部屋のグレードにより異なる)
・食事代1食分500円程度
医師などに緩和ケアをすすめられても落ち込む必要はないですし、無理に元気になる必要もありません。緩和ケアは単に痛みや辛さを軽減するもの、生活がしやすくなるための手段と捉えるようにしましょう。
痛みや苦しみは、それだけで生きる気力が奪われます。その辛さを無理に受け入れる必要はないのです。苦痛を緩和し穏やかな日々を過ごすためにも、ご家族と相談しながら、緩和ケアを受ける勇気を持っていただければと思います。
がんを患い、辛い思いをしている方々のために考えられたのが緩和ケアというシステムです。緩和ケアは病院ではもちろん、さまざまな施設やご自宅でも、ほぼ同等のクオリティで受けることができるため、ご本人にもご家族にも大きな力となるはずです。
症状の緩和が進めば、治療が行いやすくなりますし、精神的な面でも安心できるでしょう。このようなシステムが利用できると認識しておくことで、いざという時にもきっと役立てられることでしょう。
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