2024-04-26
夏祭りや盆踊りなどで賑わうお盆は、ご先祖様の御霊を迎え供養するという大切な時期でもあります。この期間、精霊棚または盆棚の上に、箸で建てられたキュウリやナスが安置されているのを見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。これは、精霊馬(しょうりょううま)といわれるもので、ご先祖様をお迎えするために置かれるお供え物です。
この記事では、精霊馬がいったいどのようなものなのかに加え、飾る意味や作り方などをご紹介いたします。
お盆の時期に精霊棚へ置かれる精霊馬は、ご先祖様や故人様の御霊が、あの世とこの世を行き来する時にお乗りいただく乗り物として用意されるお供え物です。ではなぜ、精霊馬はキュウリとナスで作られる ことが多いのでしょうか。その意味や理由をここで解説いたします。
精霊馬は、精霊馬(しょうりょううま)または精霊牛(しょうりょううし)と称されますが、この二種類は総称で精霊馬と呼ばれることが一般的となっています。精霊馬は、大切なご先祖様や故人様を送迎するために作られる大切なお供え物ですが、地域や宗教によっては精霊馬が使用されない場合もあるので、作成する際には、周りの方に相談するなどの配慮が必要となるでしょう。
なお、お盆に精霊馬が飾られるようになったのは、江戸時代頃とされています。精霊馬の材料は、やはりお盆の時期に収穫しやすいキュウリやナスが多く用いられていたようですが、その時々で手に入りやすい生地や藁も用いられていたようです。
近年における精霊馬も、主にキュウリとナスで作成されます。なぜキュウリとナスなのかというと、単純にお盆の時期に採れる旬の野菜なので、用意がしやすいからという説が有力です。
ただし、キュウリは御霊がこの世へ戻る際に迎えに行かせる馬(精霊馬)、ナスは御霊を再びあの世へお送りするための牛(精霊牛)を表しているといわれています。これには細やかな意味があり、迎えは足の速い馬に乗って早く帰ってこられるように、そしてお送りする際には、足の遅い牛にまたがり沢山のお供え(お土産)を持ってお帰りいただくという考えに基づいているようです。
お盆には地域により、新盆と旧盆の二種類の時期があります。基本的に日本全国で浸透している時期は旧盆の方で、2024年(令和6年)では8月13日〜8月16日です。
地域によっては、新盆の7月13日~7月16日が適用されることもあります。つまり、精霊馬を飾るタイミングは、地域で決められた盆の初日からです。また、片付けるのは盆が明けてからになります。
ただし、地域によっては盆の入り(月の初日)に飾ると決められているところもあります。新盆では7月1日から、旧盆なら8月1日からです。この時期も、周りの方に従って決めると良いでしょう。
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続きを読むここからは、キュウリとナスを使用した精霊馬の一般的な作成方法を解説していきます。地域や宗派によって作り方の違いや、そもそも作らないなどの決まりごとがあるので、基本的には周りの方々の考えに従うことが大切です。
主な材料はキュウリとナスで、できるだけ新鮮なものを選びます。速く走ってもらう馬になるキュウリは細身で少し曲がった形を、沢山の荷物を担いでゆっくり歩いてもらう牛に見立てるナスは、太くて力強そうな形を選びましょう。
まず、割りばしを二膳用意したら、1膳ずつカッターで丁寧に4等分します。すると、足は8本出来上がります。次に、ナスとキュウリのヘタ部分を頭部に見立てながら、切った割りばしを4本ずつ刺していきましょう。ナスやキュウリが自立できるよう、バランスを見ながら指していくのがコツです。
精霊馬は、地域によって置く方向や場所が違います。どの方法で置くのかは、目上の方やご近所に尋ねる とより正確な情報が得られるかもしれません。ここでは、一般的な置き方数種類をお伝えします。
①キュウリ馬の頭はお仏壇へ向けて、ナス牛の頭は玄関の方角か家の外の方角へ向けておきます。
②仏教における多くの宗派では、ご先祖様は東から戻ると伝えられています。よって、キュウリ馬の頭は西に向け、ナス牛の頭は、東側へ向けて置いておきます。
③迎え盆の時期はキュウリ馬とナス牛を向かい合わせに置き、頭側はそれぞれ仏壇の方へ向けます。送り盆の時期はキュウリ馬とナス牛の頭側を、それぞれ仏壇と反対側へ向け設置します。
なお、浄土真宗においては、人は死後すぐ仏様になるとの考え方があるため、基本は精霊馬を用意しません。ただし、ご家庭や地域の考えで精霊馬が用意されることもあるようです。
精霊馬は、必ずしもキュウリとナスを使わなければならない決まりはありません。気温が高く、傷みが早いことが懸念される場合、精霊馬は最初から可愛らしい布や藁で作成されることもあります。なお、腐ることのない布で精巧に作られた精霊馬は、何年にわたって使っても問題ないとされているようです。
お盆の時期が終わり、ご先祖様の魂がお帰りになった後は、お供え物と精霊棚を片付けることになります。その際、キュウリとナスで作成した精霊馬はどのように片付けるのが妥当なのでしょうか。ここでは、一般的な処分方法についてご説明いたします。
一番行われている方法としては、精霊馬を塩で清めた後で白い半紙へ包み、可燃ごみとして出すというものです。塩で清めるとはすなわち、塩を振りかけるというものです。塩が降りかけられた精霊馬は、ご先祖様を乗せるという役割を終え、元のお野菜に戻ったということになります。
ただし、ご先祖様の乗り物として作られた精霊馬は、元のお野菜に戻されたとしても、それを生きた方が食すことはタブーとされています。役目を解かれた精霊馬は、供養で使用した生ものとして意識し、処分するようにしましょう。
塩で清めた精霊馬は、ご自宅のお庭に埋めて土に返すという方法もあります。ただし、いくら土にかえるとはいえ、自分の土地以外の場所に埋めるのはマナー違反となりますので、くれぐれも注意しましょう。
お盆の時期には、寺院によってはお焚き上げする方法で精霊馬を供養してくれるところもあります。もし可能であれば、初盆で使用した白紋天提灯(しろもんてんちょうちん)もお焚き上げしていただくと良いでしょう。
極楽浄土とこの世を行き来するため、ご先祖様の御霊が乗られるとされる精霊馬は、お盆にご先祖様をお迎えするために用意される心のこもったお供え物です。このように、お供え物の意味を理解することで、より心を落ちつかせ、ご先祖様や故人様の霊と向き合えるようになるでしょう。
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