2024-04-19
ご葬儀には古来よりさまざまな慣習があり、時代と共に消えていった習わしや現代まで語り継がれたしきたりがあります。その中で受け継がれているものの中に、食に関する「一膳飯(いちぜんめし)」という慣習が残っていることはご存じでしょうか。
当記事では、一膳飯の意味やご飯へ箸を垂直に立てる理由、ご葬儀での備え方などについて、詳しく解説していきます。
ご葬儀の儀式として用いられる一膳飯とは、大盛りに盛り付けたご飯の上にお箸をさして故人様の枕元へお供えする行為です。一膳飯は、故人様のためにご飯を一合炊いて、その全てを茶碗に盛り付けます。このご飯は、生きている方が食することはできません。使用する茶碗は、故人様が生前使用されていたものを使用します。
一膳飯は、「一合飯(いちごうめし)」「枕飯(まくらめし)」「一杯飯(いっぱいめし)」「お仏飯(おぶっぱん)」とも呼ばれ、日本では昔からよく見られる儀式です。では、この一膳飯という行いには、どのような意味が込められているのでしょうか。
一膳飯は、故人様が出棺されるまでの間、故人様を供養するために供えられる枕飾りのうちの一つです。一膳飯が供えられる理由は諸説ありますが、故人様が極楽浄土へ旅立つ前にいただく最期の食事、または旅立った後で、道すがら食べるための弁当とも考えられているようです。
一膳飯で立てられた箸は、「あの世とこの世の架け橋」という意味が込められています。この橋を渡って、故人様はあの世へ旅立つのです。まっすぐ立てられた箸には、故人様が迷わずに極楽浄土へたどり着くようにという願いも込められています。
地域によっては、枕元に一膳飯をお供えするほか、枕団子を供えることもあります。それには、仏教の教えの一つである言い伝えが関係しています。
その昔、お釈迦様が亡くなる前に弟子はご飯を差し出されたそうです。しかしながら、お釈迦様はそれを口にせず旅立たれました。そこで、冥途への道中でお腹を空かせることのないように、団子が供えられたのが始まりとされています。
枕団子は米粉(うるち米)で作られ、一膳飯と同じくらいの高さに積み上げられます。地域によっては団子の数が違いますので、お供えする前に周りの方へ確認されると良いでしょう。
一膳飯、そして枕団子をお供えするのは、入棺から火葬場へ搬送するまでの間となります。一膳飯は連日作りたてを用意しましょう。
ここからは、具体的な一膳飯の作り方や供え方をお伝えします。なお、これも地域差や宗教による違いがありますので、独断で決行せずに周りの方へ相談するのがおすすめです。
一膳飯を炊く量は、白米で一合のみです。一膳飯は、ご家族がいただく分とは別にして炊かなければなりません。これは、生きている方の食事と亡くなった方の食事は別にするという日本古来の風習に基づいています。
炊きあがったご飯は一粒も残すことなく、生前故人様が使用されていたご飯茶碗へ山にして盛り付けます。方法としては二つのご飯茶碗を用意し、双方にご飯を詰めてから重ね合わせて押し付け、片方の茶碗をそっと外すと、美しい山盛りのご飯を作れます。
お箸の立て方は、これも地域によってさまざまです。1本だけ立てる、1本に見えるように2本を重ねて立てる、1本は立ててもう一本は横に寝かせるという方法です。場合によっては箸を立てること自体が禁じられている地域もあるので、箸の立て方に迷った場合は周りの方へ相談すると良いでしょう。
できあがった一膳飯は、故人様の枕元に供えます。近年では枕飾りと共に、葬儀社の方が並べ供えてくれることが増えました。
なお枕飾りとは、故人様を供養する目的で棺の枕元に置かれる祭壇のことです。台の上に白い布が敷かれ、その上に一膳飯や枕団子、蝋燭の立てられた燭台、香炉、水や花、鈴(りん)や鈴棒(りんぼう)が供えられます。
多くの地域では、ご葬儀の後、一膳飯で使用した茶碗を割るというしきたりがあります。これは、故人様がこの世で使用していた茶碗を使えなくすることで現世への未練を断ち、あの世へ無事に旅立てるようにするための儀式です。
なお、死者は亡くなった直後に極楽浄土で仏になるという教えのある浄土真宗では、茶碗を割る必要はないとされています。
一膳飯は毎日新しいものを用意しますが、下げた一膳飯は半紙に包んで棺に納めていくのが一般的とされています。これは、故人様にお弁当を持たせるという考えに基づいた行為です。また、前述のとおり使用した茶碗は、ご葬儀終了後に割る儀式も行います。ただし地域によっては、一膳飯や茶碗の処分方法が異なりますので、葬儀社の方へ確認してみましょう。
一膳飯は、故人様の御霊がこの世へ未練を残すことのないよう、願いを込めて行われる大切な儀式です。宗教によっては一膳飯自体が行われなかったり、故人様がお使いだった茶碗を割ったりするなどの慣習が残る地域もあります。
儀式の有無や内容は、宗教や地域によってさまざまです。どうすれば良いのか迷われた場合は、葬儀社のスタッフやご親族の方々に相談するのが良いでしょう。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
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