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2024-03-25

野辺送りとは?意味や地域ごとの風習、現代での名残について解説

野辺送り(のべおくり)とは、ご葬儀における儀式の一つです。野辺送りの野辺は「墓地」を示す言葉であり、かつて土葬を行っていた時代では、近親者が列を作り棺に入れたご遺体を埋葬地までご移送していました。この風習は、火葬が主流となった現代においても、地域によっては名残として残されているのです。

そこで当記事では、野辺送りの意味や歴史、そして地域ごとの野辺送りの名残やさまざまなマナーに至るまでを詳しくご紹介していきます。

野辺送りとは?

「野辺送り」は、故人様を埋葬するため、長い葬列を作って墓地までご遺体をご移送して見送る風習のことで、「野送り」または「野辺の送り」ともいわれています。野辺送りでできた葬列は、まだ霊柩車がなくご遺体を土葬するという時代に、多く見られた光景でした。

野辺送りの意味・歴史

かつて、まだ火葬技術が発展していなかった日本では、ご遺体を土葬することが主流となっていました。そのため、ご遺体を埋葬地まで送り届ける野辺送りが、町内会や村人全員で行われていたのです。野辺送りは宗教の種類とは関係なく、ご遺体を守りながら厳かに送る重要な儀式でした。

しかしながら、現代では一部の地域を除いて、野辺送りを見られることはほとんどなくなりました。ご葬儀後のご遺族および参列者は、ご遺体が乗せられた霊柩車の後ろについて、バスや車で火葬場まで移動する形が主流となっています。

野辺送りを行う目的

野辺送りで葬列を組む目的は、単にご遺体をご移送するだけではありません。ご遺体の搬送以外の目的に対する考え方は地域によってさまざまなので一概に言えませんが、一番の目的はご遺族のお気持ちに寄り添ったもので、故人様の死を悼み弔うためだといわれています。野辺送りは、現代のご葬儀のように故人様との別れを惜しむ大切な時間だったのです。

また、人々の手でご遺体をご移送することで恐ろしい魔から故人様を守るため、さらには故人様の魂をこの世へ遺さないようにするのが目的といった説もあります。

野辺送りの風習について

重要な儀式とされてきた野辺送りには、守るべき慣習があります。地方によってはまだ行われている場合もありますので、万が一に備え頭の片隅に入れておくのも良いでしょう。

参列者の役割・参列する順番

野辺送りで葬列を組むにあたり、血縁の濃い順番で重要な役割が与えられることとなります。具体的な役割は、以下をご参照ください。

①松明(たいまつ)もしくは高灯籠(たかどうろう)

参列者が持って先頭に立ち、葬列を先導します。松明(たいまつ)もしくは高灯籠(たかどうろう)には、魔除けの効果があるといわれています。

②籠持ち

籠の中には小銭や散華(紙吹雪)が納められており、籠を持った方が撒きながら歩きます。

③旗持ち

籠の後ろには、町内会や弔旗が続きます。

④衆僧(しゅうそう)導僧(どうそう)

棺の先頭には僧侶が立ちます。

⑤葬列六役

僧侶の次に並ぶのが故人様と最も縁の深いご遺族です。「位牌・お膳・水桶・香炉・紙華(しかばな)・天蓋」の道具を持って順に並びます。位牌は喪主もしくは配偶者など、故人様から最も近いご遺族が持つのが一般的です。

⑥棺

⑦一般参列者

野辺送りにおける服装

野辺送りはご葬儀における儀式なので、喪服が基本です。男性は黒い喪服にネクタイ、そして白いワイシャツを着用します。女性は喪服に30デニール以下の黒いストッキング、黒いかばんを身に着けます。アクセサリーは、一連のパールネックレスのみにとどめると良いでしょう。

なお、野辺送りの三役(棺桶・位牌・天蓋を持つ方)は、白い上着と草履を着用します。

野辺送りにまつわる儀式

野辺送りでは棺を中心とした葬列を組んでご遺体をご移送しますが、野辺送りにまつわる他の風習もあります。

まず一つ目は、「釘打ち」です。棺に釘を打つことで、穢れを閉じ込めようとする考えから行われています。昔は衛生状態が万全ではなかったため、ご遺体は人里離れた場所へ埋葬し、その際棺に釘を打っていました。釘打ちは、その時の名残ともいわれています。

また、出棺時に棺を三度回す「三度回り」も、死の穢れをこの世に戻さないための儀式です。この行為で、故人様の霊の方向感覚が失われ、その魂はこの世へ戻ってこられなくなると信じられているのです。

地方によって異なる野辺送りの風習

野辺送りは、地方によってさまざまな特色が見られます。九州地方では、野辺送りの際に小銭をばらまく習慣があり、これは故人様に徳を積ませるためのものです。山形県では、長男が白装束をまとって棺を背負ってご移送するのが一般的でした。

また沖縄では、野辺送りのための「グソー道」がつくられ、引き潮のタイミングに合わせて野辺送りが行われます。故人様の霊が、引き潮とともに迷うことなく、あの世へ旅立てると信じられているためです。

新潟県では、四華花(しかばな)や松明などが用いられ、村人総出で盛大に野辺送りが行われていました。現在、この光景はほとんど見られなくなりましたが、ごく一部の地域ではこの慣習が続けられているようです。

現代のご葬儀における野辺送りの名残

かつて行われた葬列の名残は、現代のご葬儀にもしっかりと残っています。地域によって違いはありますが、比較的多く見られる名残を挙げますので、ぜひご参照ください。

宮型の霊柩車

金色の派手な装飾が付いている「宮型霊柩車」が、葬列で棺を担ぐのに用いられた「輿(こし)」を模したものだといわれています。なお、現代ではシンプルな霊柩車が主流となっています。

白木祭壇

祭壇には、白木祭壇や花裁断、折衷祭壇、宗教ごとの祭壇などさまざまな種類があります。その中の一つである白木祭壇は、葬列で用いられる葬具を凝縮して飾られたものです。

僧侶が行う儀式

僧侶の儀式の中に、引導という作法があります。この中で、故人様に松明で火をつける動作が行われますが、これは昔のご葬儀の野辺送りで埋葬が行われていたことの名残です。

出棺時の持ち物・作法

出棺時は喪主が位牌を手にし、血縁者は棺を持ったり手を添えたりして、棺と一緒に会場を出ます。最後に会場を後にするのは、血縁の一番薄い方という順序が一般的ですが、これも葬列の順に属しています。また、三度回りという儀式も野辺送りの名残です。

なお、棺が通った後は、死の穢れを払うため会場をほうきで掃くという作法も伝えられています。この行いもまた、野辺送りの名残とされています。

火葬場まで往復する道

火葬場へ行く道と、帰ってくる道を違うルートにする習慣が多くの地域で根付いていますが、これは故人様の霊が生きている方々についてこないようにするためのものです。この慣習も、野辺送りの名残になります。

清めの塩

現代では、ご葬儀を終えて自宅へ戻った際、体を塩で清めるという習慣があります。この行為は、その昔野帰り(葬列から戻ること)をした方々が行っていた「死の穢れ払い」の名残です。

まとめ

土葬が主流だった時代において、野辺送りは非常に重要な儀式でしたが、火葬が主流となった現代では野辺送りの行列を見かけることはほとんどなくなってしまいました。

野辺送りは、心を込めて故人様を送り出したいというご遺族の気持ちから作られた風習ですが、ご葬儀の形が変化した現代においても、故人様を想うご遺族の心は変わりません。野辺送りの名残は地域によってさまざまですが、どのような形であっても、心からの弔意を込めることが最も大切です。


記事の制作・編集
セレモニーコラム編集部

60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。


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