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2024-02-16

施餓鬼とは?意味や宗派ごとの違い、お布施などのマナーについて解説

施餓鬼(せがき)は、多くの方が聞きなれないと感じる言葉でしょう。しかしながら、施餓鬼は古くからの風習であり、守るべき伝統ともいえる法会なのです。

施餓鬼に対する知識は、今後の法事において慌てずに対処できる手段になります。そこで当記事では、施餓鬼の意味や意義、そして宗教ごとの違いやマナーについて解説していきます。

施餓鬼とは?

数々の仏事の一つに、「施餓鬼」と呼ばれる法会があるのはご存じでしょうか。施餓鬼は主に生前の悪い行いが災いし、あの世で餓鬼(がき)となった霊魂や、誰にも供養されることのない無縁仏に対して施しを与えるための法要です。施餓鬼を行うことで餓鬼は救われ、法要を行った方々は徳を積むことができます。

なお、施餓鬼は鎌倉時代の末頃より年中行事の一環として行われてきましたが、現代では餓鬼だけでなく、亡くなった方全てに対する供養という意味合いに変わってきているようです。

施餓鬼の意味

施餓鬼における「餓鬼」とは、餓鬼道に落とされた亡者のことで、飢えや乾きの苦しみを与え続けられている霊魂です。餓鬼は苦しみながら、現世にさまざまな災いをもたらすといわれています。そこで、餓鬼に食べ物を供えて災いを鎮める施餓鬼(追善供養)が行われてきました。

つまり施餓鬼は、餓鬼を救って災いを消沈させ、自らの徳を高めるための法会なのです。施餓鬼は「施餓鬼会(せがきえ)」、または「お施餓鬼」とも呼ばれています。

施餓鬼の由来・歴史

施餓鬼の由来は、「救抜焔口餓鬼陀羅尼経(くばつえんくがきだらにきょう)」 という経典からきています。

ある時、お釈迦様の弟子の一人である「阿難尊者(あなんそんじゃ)」の前に、焔口(えんく)という名の餓鬼が現れます。そして焔口は、死と共に訪れる餓鬼落ちを予告するのです。そこで、阿難尊者はお釈迦様の教えに従い、祈りの言葉(陀羅尼)を唱えながら、無数の餓鬼に食事を施します。

すると、焔口をはじめとした餓鬼達は喉の渇きや腹が満たされ、その功徳で阿難尊者も死を免れました。施餓鬼が行われるようになったのは、以上のような説話によるものなのです。

施餓鬼を行うタイミング

施餓鬼の時期は、特に決められていません。お盆の期間に、盂蘭盆会と共に行われるタイミングが一般的となっていますが、毎日行っている寺院もあります。

盂蘭盆会(お盆)との違い

施餓鬼はお盆に行われることが多いため、お盆の法要(盂蘭盆会)と混同されやすいです。ただ、施餓鬼は用意したお供え物(食事)で餓鬼を供養するための法会であり、お盆にだけ行うものとは限りません。

一方、お盆の時期にご先祖様の御霊を供養するのが盂蘭盆会です。盂蘭盆会は、毎年8月(地域によっては7月)の13~16日に掛けて行われます。

宗派によって異なる施餓鬼の特徴

餓鬼道については、同じ仏教といえどもそれぞれに違う考え方が根付いています。そこで、代表的な宗派ごとの教えをご説明いたします。

浄土真宗

浄土真宗で、施餓鬼法要が行われることはありません。なぜならば、亡くなった方はすぐに極楽浄土へ向かうという考え方があり、霊魂が餓鬼道へ落ちるといった概念がないためです。

真言宗

真言宗での施餓鬼は、主に夕方から行われます。その内容は、護摩を焚いて祈祷するというものです。餓鬼への施しは連日でも良いといった教えのため、他の宗派より多い回数で施餓鬼が執り行われます。

日蓮宗

日蓮宗では、その昔に「川餓鬼」となってしまった鵜飼の霊魂を、日蓮上人が三日三晩掛けて成仏させたという説話が語り継がれています。この伝承から、「川施餓鬼」と呼ばれる供養が全国で行われるようになりました。

臨済宗

臨済宗の施餓鬼では、祭壇へ線香をあげる代わりに、米や水を手向ける「水向け」を行います。また、普段の食事でも、餓鬼へ向けて7粒の米を取り分け屋根に撒く「施食作法」も取り入れられているのです。こうして、飢えや渇きで苦しむ餓鬼を助けることによって徳を積みます。

曹洞宗

曹洞宗では、施餓鬼会ではなく「施食会(せじきえ)」と呼ばれることが多いです。曹洞宗には、施す側の人間と施される側の人間は、全て平等であるという教えが浸透しています。したがって、霊魂を餓鬼と呼ぶことに対し、差別的と判断されているようです。

施餓鬼会(施餓鬼法要)の流れ

ここからは、施餓鬼会の一般的な流れについてご説明いたします。行われる地域や寺院の考えによって若干の違いがみられることを意識しながら、以下の解説をご覧になってみてください。

寺院・墓所で行う場合

①寺院が通年行事として開催する「施餓鬼法要」に申し込みます。(檀家の場合はお知らせが届きます。)申し込み後、ご親族へ日時を伝えます。

②当日、法要先まで出向きます。

③受付の際に、お布施やお供え物をお渡しします。

④会場(申込内容)によっては会食が振る舞われます。

⑤僧侶による法話、読経が行われます。

⑥会場の担当者に促されたら、順に焼香を行います。

⑦卒塔婆、施餓鬼旗(せがきばた)を受け取り、お墓参りを行います。

⑧ご親族に返礼品をお渡しして解散します。

自宅で行う場合

①寺院(僧侶)へ問い合わせ、自宅での施餓鬼法要(内施餓鬼)が可能かどうかを確認して、申し込みます。申し込み後、ご親族へ日時を伝えましょう。

②当日、ご自宅に僧侶やご親族を招きお茶を出します。

③僧侶に挨拶を行い、お布施をお渡しします。

④僧侶による法話、読経が行われます。

⑤焼香を行います。

⑥参列者全員でお墓まで出向き、お墓参りを行います。

⑦参列者に食事を振る舞います。

⑧ご親族に返礼品をお渡しして解散します。

施餓鬼での供養にあたって、事前に手配するもの

こちらでは、施餓鬼の供養で事前に用意した方が良いものをお伝えしていきます。ただし、お伝えしたもの全てが、必ずしも用意しなければならないものとは限りません。地域や宗教により考え方も変わるため、迷った場合は霊園や菩提寺に相談してみましょう。

卒塔婆

施餓鬼の供養では、地域によって卒塔婆(そとば)の用意が必要です。卒塔婆とは、故人様を供養するために用いられる細長い木の板で、卒塔婆を立てた分、徳を積んだことにも繋がると考えられています。卒塔婆は、法要の際お墓に供えられます。

施餓鬼旗

餓鬼を供養するため、「施餓鬼旗(せがきばた)」を用意することもあります。施餓鬼旗は別名「施食幡(せじきばん)」とも呼ばれ、5色に塗り分けられた色はそれぞれに仏の色が表されており、餓鬼となった御霊を救う手助けになるといわれているのです。

施餓鬼旗は参列者に配られ、卒塔婆と共にお墓へ供えたり仏壇に飾ったりします。

お供え物(施餓鬼米、水の子など)

施餓鬼法要で重要だといわれているのが、水の子をお供えすることです。水の子は、きゅうりや茄子を賽の目に刻んだものに洗った生米を混ぜたもので、蓮やサトイモの葉に乗せてお供えします。葉が手に入らない場合は、お皿のみで構いません。水の子を供えることで、餓鬼の喉は潤い胃が満たされるのです。

一部の地方では、施餓鬼米(せがきまい)を供える場合もあります。施餓鬼米は、白い袋にお米を詰めて供えるもので、故人様があの世で食事に困らないようにとの願いがこめられているのです。

施餓鬼でのお布施に関するマナー

次に、施餓鬼を行う場合の僧侶へ渡すお布施の一般的な礼儀について、解説していきます。

金額の相場

施餓鬼で僧侶へ包むお布施の相場は、3,000~10,000円程度です。またお布施の他に、お車代5,000~10,000円や卒塔婆代3,000~10,000円も用意する場合があります。

ただし、各金額は地域や霊園、菩提寺で決められている場合もあるため、あらかじめスタッフの方へ確認しておくと良いでしょう。

のし袋の選び方・書き方

お布施は、奉書紙(ほうしょし)に包むのが昔ながらの正式な作法でした。ただし現在では、何も書いていない水引きなしの白地封筒へ入れるのが一般的です。

封筒への記入方法は、濃墨の筆ペンまたは毛筆を用いるのが通例です。まず表書き(上部、中央)には「御布施」または「お布施」と記しましょう。なお、地域や宗教の違いで「御回向料」「施餓鬼供養料」「施餓鬼料」「冥加料」と書く場合もあります。さらに下部の中央には、施主のフルネームもしくは「〇〇家」と記入します。

次に封筒の裏面への記載ですが、左下には施主の住所、電話番号、金額を書き入れましょう。なお、金額は感じの旧字を使います。例えば10,000円を封入する際には、「金壱萬圓也」、3,000円の場合は「金参仟圓也」と記載しましょう。

ただし、地域によってそれぞれ慣習が異なるため、袋を用意する前に周りの方へ確認するのが賢明です。

お布施の包み方・渡し方

お布施で用意するお札で、適切なのは新札です。慶事と同様で、向きをそろえてから顔が印刷されている面を表側の上部に向けて封筒に入れましょう。

また、僧侶へお布施をお渡しするタイミングにこれといった決まりはありませんが、法要中は避けるようにするのがマナーです。

一番良いのは、施餓鬼法要前に僧侶への挨拶の際、一緒にお渡しすることです。または、法要が終わった後でも構いません。なお、お布施は袱紗へ包んだ状態にしておき、僧侶の目の前で広げてから僧侶の方向へ向けてお渡しするようにします。

また、寺院によっては最初の受付で袋に入れず、そのまま現金をお渡しする場合もあります。

施餓鬼法要に参列する際のマナー

こちらでは、施餓鬼法要へ参列する際に気を付けなければならないマナーについて解説していきます。

服装

施餓鬼法要での服装は、平服(略喪服)にします。ご葬儀とは違うので、正喪服や準喪服を着用する必要はありません。男性はスーツやシャツ、女性はスーツやワンピースが良いでしょう。生地の色は黒か濃紺、暗いグレーを選び、アクセサリーや派手な色のネイルは控えます。

持ち物

参列者の方は一人一つずつ数珠を、そしてお布施も忘れずに持参しましょう。場合によっては卒塔婆料やお車代も用意します。

まとめ

施餓鬼は、古くから語り継がれる大切な風習です。もしも施餓鬼の法要にご縁があれば、ある程度の知識を持って対応することが大切になります。いざという時のためにも、お相手へ失礼になることのないよう当記事をお役立ていただければ幸いです。


記事の制作・編集
セレモニーコラム編集部

60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。


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