2023-10-06
「頭北面西」とは、日常で聞き馴染みのない用語かもしれませんが、実は誰もが耳にしたことのある「北枕(きたまくら)」の由来となっている言葉です。
頭北面西は、日本国内で古くから伝わる慣習であり、ご葬儀のしきたりにも関係しています。そこで当記事では、頭北面西とはどのようなものなのかに加え、ご葬儀における頭北面西について、宗教ごとの考えや違いに至るまで詳しく解説していきます。
「頭北面西」とは、故人様の頭を北側に向け、顔は西側に向けて安置する行為のことを指します。この姿勢は「頭北面西右脇臥(ずほくめんさいうきょうが)」とも呼ばれ、お釈迦様の入滅時の姿勢に由来して作られた言葉として語り継がれています。
お釈迦様の言い伝えに習い、現代のご葬儀においても故人様のご遺体の頭は北へ向けられますが、昨今では顔を西ではなく、上に向けるのが一般的になりました。この姿勢が北枕(きたまくら)と呼ばれています。
寺院に安置されているお釈迦様の像が、横になる姿勢を取っているのを見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。その様子が描かれている涅槃図(ねはんず)も、時折飾られていることがあります。
これは、お釈迦様が亡くなった時に取られていた姿勢で、右の肩を下にして頭は北へ、顔は西へ向けられています。これはお釈迦様が入滅し、魂は永遠となった瞬間を表しているのです。この姿勢こそが頭北面西の語源となり、現代のご葬儀における頭北面西の慣習へと発展しました。
故人様の頭を北に向ける北枕は、頭北面西の言い伝えになぞらえたものです。お釈迦様が頭北面西の姿勢であの世へ向かい、煩悩から解脱して高みの境地へ向かう涅槃(ねはん)へ到達できたことから、「故人様が安らかに極楽浄土へ旅立てるように」といった願いを込めて、故人様をお釈迦様と同じ向きにする慣習が生まれました。
先述の項目でも述べたように、昨今のご葬儀では故人様の頭の向きについて、お釈迦様の姿勢である頭北面西が厳密に守られているわけではありません。
現代での頭北面西では故人様の頭を北側、または住宅の事情で北へ向けられない時は西側に向けて、顔は上向きにするという認識が一般的です。安置された故人様の顔には、白い布が被せられます。
故人様を北枕にして安置する慣習は、仏式の考えだけに留まりません。頭北面西に基づいて頭を北に向ける習わしは、仏教以外の教えでもそれぞれに伝えられ、実際のご葬儀における作法として用いられています。
仏式で執り行われるご葬儀では、頭北面西(北枕)が一般的です。故人様の頭を北に向けた後、顔に白い布を被せて両手を組んで安置します。この姿勢は、宗派を問わず行われています。
ただし、寺院によっては頭北面西にはこだわらず、安置されたご本尊を元として、ご遺体を寝かせる方向を決める方法も取られているようです。この場合、ご本尊へ向かって右側が頭になるように安置します。
また、安置されたご遺体の枕元には、小ぶりな机で祭壇を作成します。机には白い布を敷き、三具足(さんぐそく)を並べるのが通例です。三具足とは、「香炉(こうろ)」「燭台(しょくだい)」「花立(はなたて)」の3つの仏具を指します。花立には樒(しきみ)を供え、ろうそくと線香の火は絶やさないように気を付けましょう。
なお、ご遺体の向きや安置方法、祭壇の方式については、地域や会場ごとに異なります。ご葬儀の際は葬儀社のスタッフに聞いてみると間違いがありません。
神道も、ご遺体の頭は北側に向けます。仏式ではこれを北枕といいますが、神式では「枕直し」と呼ばれています。神道では、北が最上位の上座と考えられているため、北へ頭を向けさせる枕直しが主流です。枕直しは、神道で古くから根付いている大切な習わしです。故人様の頭を北に向けて寝かせ、顔に白い布を被せたら、合掌した手を胸元に置きます。
なお、ご自宅に神棚がある場合は、喪が明けるまでの間「神棚封じ」を行うことも忘れてはいけません。神棚に扉がある場合は、閉じてからテープで留め、扉がない場合は前面を半紙で覆い神棚を閉じます。
神棚封じをする目的は、死の穢れが神棚へ入らないようにするためです。喪中期間は、神棚への参拝やお供えは一切控えます。喪が明けたら封印を解き、参拝を再開しましょう。
キリスト教では、枕の向きを定めるような慣習はありませんので、頭北面西にこだわる必要はありません。また、キリスト教には枕飾りを行う習慣もありませんでしたが、昨今ではご遺族や教会の意向が考慮され、枕飾りが設置されるケースが多くなりました。
枕飾りの形としては小ぶりな台の上に十字架や聖書、パン、ワイン、生花を飾り、ろうそくの火を絶やさないようにします。
頭北面西は、寺院で見られるお釈迦様が横になっている涅槃像が基になった言葉であり、北枕の由来となっています。
ご葬儀で取り入れられることの多い頭北面西は、宗教や地域によって慣習が異なるため、葬儀社のスタッフに聞いてみると間違いがありません。いざという時に故人様をスムーズに送り出せるよう、予備知識としてお役立てください。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
仏事に参列する際は、香典をお渡しするのが通例です。香典とは、故人様にお供えするお香や供花の代わりとして、参列者が持参する金銭のことです。香典には、格式の高いご葬儀、そしてその他の法事で古くから言い伝えられているマナーや渡し方など、さまざまな決まりがあります。 そこで当記事では、香典の意味や使用すべき袋の選び方、金額相場をご説明していきます。
家族やお身内など大切な方を亡くされた喪主やご遺族に、ご葬儀の最中、会葬者から「この度はご愁傷様です」とお悔やみ言葉をかけてもらう場面が多くあります。弔事の場で述べられる基本的なお悔やみの言葉として、最も頻繁に使われている「ご愁傷様」という言葉には、どのような意味を持ち、また適切な返答などはあるのでしょうか。 そこで今回は、ご愁傷様の意味と適切な返答についてご紹介します。
香典は、ご葬儀の場において故人様の御霊前へお供え物をする代わりに、ご遺族へお渡しする金銭です。「5,000円程度が香典の相場なのではないか」という意見も散見されますが、故人様との関係や地域によって金額のマナーは変わるため、注意が必要です。 そこで今回の記事では、香典の一般的な相場や香典袋の選び方、書き方、香典のマナーについて詳しくご紹介していきます。