2023-09-22
寺院などへお参りに行くと、庭園の中にある池の水面に、様々な色合いの美しい花が咲いているのを見かけることも多いのではないでしょうか。この花は蓮や睡蓮(すいれん)を仏教では総称して蓮華(れんげ)と呼ばれています。
蓮華は、仏教において重要な象徴として、古くから尊ばれています。この蓮華における仏教的な意味合いとは、一体どのようなものなのでしょうか。本記事では、蓮華が持つ意味や種類についてご紹介いたします。
蓮華は、仏教が中国から日本へ渡ってきた際、日本に伝えられた言葉です。現在では、蓮や睡蓮の総称として使用されています。泥の中からまるで両手を広げたような形の美しい花を咲かせる特徴があることから、仏教のシンボルとして親しまれ、そして尊ばれてきました。
蓮華は、様々な仏教寺において見られます。例えば、蓮華座(れんげざ)という蓮華を模った台座の上に安置されている仏様の姿などです。さらに、仏式のご葬儀には蓮の花が印刷された香典袋が使用されたり、法要の供花として利用されたりと、仏事には欠かせない存在となっています。
蓮華に関する古いことわざでは、「泥中(でいちゅう)の蓮華」というものがあります。これは美しい蓮華の下にある泥を、仏教の理念とした「俗世や煩悩」に重ね、修行の場である人生において、美しい花を咲かせるかのように鍛練に励む姿を表したものです。
このことわざは、中国の成句から日本に伝えられたものですが、泥に染まることなく咲き誇った汚泥不染の花は、清らかさそのものを示しています。仏教における蓮華とは、人生の屈強にも負けない清浄な生き方を示す象徴なのです。
蓮華として特に仏教と結びつきの深い花は、水底に根を張る抽水(ちゅうすい)植物の「蓮」や「睡蓮」が代表的ですが、実は3種類の花を示しています。花の形や咲いている場所の特徴が似ているため混同されやすいのですが、それぞれ種類の異なる花です。ここでは、それぞれの特徴について解説していきます。
蓮はまっすぐな茎が水面からさらに上へ伸び、水に当たらない位置で白、ピンク、黄色の花を咲かせます。穏やかで優雅な香りを放つ花は早朝に開き、数時間後には蕾になるのを数回繰り返したあと、3日程度で散っていくのが特徴です。葉はヒラヒラとした円形で艶はなく、水を弾くロータス効果が確認できます。
睡蓮は、水面のすぐ上に花を咲かせるので、まるで水の上に浮かんでいるかのように見えるのが特徴です。花のシルエットは蓮に似ていますが、花弁の形は蓮よりもやや細く、尖っている印象です。
色は品種によりますが白、ピンク、黄色、紫色があります。葉は艶やかで丸く、中央に大きな切れ込みが入っています。この切れ目から、水を下へ落とし込む仕組みとなっているようです。
蓮や睡蓮のほか、もう一つ蓮華として挙げられている花が蓮華草(れんげそう)です。花弁の根元は白く、上に向かうに従って鮮やかな濃いピンク色へと変化していきます。
蓮華草は、田畑を休ませる際に植えられることの多い植物ですが、花の形が蓮と似ているため、蓮華と呼ばれるようになったようです。
蓮華の五徳とは、仏教における人の在り方を説いた「5つの徳」を表しています。この5つの特徴を極められた方は、極楽へ生まれ変わることができると信じられているのです。
蓮は、泥の中で果敢に育つ特徴を持ちますが、この泥は人間界の「苦境」に値します。すなわち「どのように良くない環境であっても、心は清らかに保ちましょう」という意味が込められているのです。
蓮の花は、一つの茎に対して一つの花しか咲きません。これは、自身がこの世に唯一の存在であることを示しています。つまり、「唯一無二の自分自身を、大切にできるようになりましょう」という意味が込められています。
蓮の花が開くと同時に、種(果)もできているといわれています。これは、人は誰しも生まれ出たと同時に「仏心」を身に付けていることが示されているのです。すなわち、「もともと備わっている美しい心を、さらに育てていきましょう」という意味が込められています。
蓮の花からは、多くの種(果)が実ります。多くの種とは「多くの方の幸福」を意味します。つまり、「一人の人間が悟りの境地に至れば、多くの方を幸せに導ける」という意味が込められているのです。
蓮の茎は固くまっすぐに伸びていますが、中は蓮根のように空洞です。これには「自我や欲を無にして、まっすぐに悟りの境地へ向かう努力を行いましょう」という意味が込められています。
泥の中で美しく咲き誇る様々な色の花は蓮華と呼ばれ、仏教ではシンボルの花として大切に扱われています。蓮華には多様な意味が込められていますが、その詳しい内容を把握することで、仏教で伝えられている教えへの理解が、より深まったのではないでしょうか。
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