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2023-09-07

泣き女とは?「ご葬儀で泣く職業」の女性|世界各国の泣き女の違いについても解説します

「泣き女」とは、他人のご葬儀へ出席し、故人様に哀悼の意を示すべく過剰に涙を流す職業を指します。現代の日本ではなじみのない職業ですが、世界各地のご葬儀で古くから見られる風習です。

当記事では、その由来や意味を詳しく解説します。さらに、世界各国で語られている泣き女の存在や意義についてもご紹介いたします。

泣き女とは「ご葬儀で泣く職業」の女性

泣き女とは、ご葬儀へ参列して、儀礼的に泣く役割を担う方です。「なきおんな」または「なきめ」と読み、「哭女」「哭き女」とも書かれます。

泣き女は参列者の列へ並び、様々な儀式の折に率先して号泣します。泣き女の涙は、他の参列者の悲しみを引き出し、もらい泣きが起こることも多いようです。

故人様を失った悼みを表す参列者の涙は、故人様が成仏するための助けになると信じられ、悪霊を祓う手段としても重宝されていた歴史があります。しかしながら現代の日本では、故人様を失った悲しみを静かに耐え偲ぶことが美徳と考える方が増えたため、派手な号泣を演出する泣き女がご葬儀に呼ばれることはなくなってしまいました。

日本における泣き女の歴史

現在、国内では見られなくなった泣き女ですが、かつては社会一般の慣習として存在していました。日本書紀における飽田女(あくため)の母親は、泣き女を生業としていたと記載されています。朝廷の葬送でも、泣き女がまじないを唱えながら号泣していた事実が語り継がれているようです。

『古事記』にも泣き女と思われる記述がある

かつて日本のご葬儀で見られた泣き女は、古代から続く習わしとの記述が古事記でも確認されています。その内容とは、天若日子(アメノワカヒコ)のご葬儀において、キジ科の鳥類を泣き女として任命していたというものです。

明治時代ごろまで日本各地に泣き女の風習が残っていた

ご葬儀に泣き女を呼ぶ風習は、太古の時代からあったとされており、明治時代から戦前ごろまで日本各地で続いていました。伊豆諸島の新島や八丈島、琉球の奄美大島など、特に離島が多く集まっている地域では、長い間親しまれていたようです。

現代では職業として泣き女は残っていないとされる

泣き女のしきたりは、時代と共に廃れていき、今では国内でその姿は見られません。日本での泣き女は「旧習」の一つとされ、現代まで語り継がれています。

世界各国の泣き女

現代の日本で行われるご葬儀では、見かけなくなった泣き女ですが、韓国や東南アジア諸国ではその風習が受け継がれ、職業として成り立っている国もあります。

韓国

古代中国で孔子(こうし)が説いた「儒教」の思想を持つ韓国では、ご葬儀で流される涙の数によって、故人様を偲ぶ文化があります。よって、儒教のご葬儀では哭礼(こくれい)の儀式に号泣することが、マナーの一つになっているのです。

しかしながら、悲しみやショックが強いあまり、涙が出ないご遺族もいます。そのような方々を助けるために、周りが代わって号泣する習慣に基づき、今でもご葬儀の場で見られています。

台湾

台湾での泣き女は、孝女(ハオルー)と呼ばれています。韓国と同様に、儒教の教えが根強い台湾では、死者のために号泣して悲しみを表現することが、魂を慰める行為に繋がると信じられています。ゆえに現代においても、泣き女を呼んでの儀式は、ご葬儀での大切な習慣となっているのです。

エジプト

古代のエジプトにも、泣き女が存在していました。中でも、ある貴族の墓には、有名な泣き女の壁画が残されています。エジプトの泣き女は、職業の方だけではなく、親族の女性の集まりだったとも言い伝えられており、主な役割は墓に向かうミイラを泣きながら見送るというものでした。しかしながら現代のエジプトでは、泣き女の存在は確認できません。

イギリス

イギリスの泣き女は、イギリスのスコットランドや、アイルランドに存在する妖精(バンシー)の化身と言われています。バンシーは、身分の高い方の死期が近づくと、その方の自宅へ現れ、大声で死の予告を行う女性の妖精です。

死の間際にバンシーからの予告を受けると、「死を惜しまれるほどの偉人だった」といった位置づけになり、故人様の名誉になると考えられています。すなわち、バンシーの化身としてご葬儀に呼ばれるイギリスの泣き女は、重宝される存在でした。

まとめ

現代における日本のご葬儀では、厳粛かつ静粛に執り行うことが美徳と考えられるのが一般的です。そのため、「悲しみを表現するために号泣する役割の方を呼ぶ」という概念自体が存在しなくなり、泣き女の慣習もありません。

しかしながら、アジア圏の一部に存在する泣き女は、今でも様々な役割と意味を持つ職業として成り立っています。故人様に対する哀悼の意を分かりやすく示す行為も、また尊重すべき考え方の一つなのかもしれません。


記事の制作・編集
セレモニーコラム編集部

60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。


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