2023-08-04
弔事でよく目にする白と黒の幕を「鯨幕(くじらまく)」といいます。その名前には由来があり、またあまり知られていない大事な役割も存在しています。そこで本記事では、鯨幕の歩みを紐解きつつ、その種類や意外な用い方も詳しくご紹介していきますので、興味をお持ちの方は参考にしてみてください。
鯨幕は、白と黒の縞模様の幔幕(まんまく)で、一般的には上下へ黒い縁取りが施されています。幔幕とは、催事やイベント会場の周りへ張り巡らす布で、縦に縫い合わされて作られているのが特徴です。
鯨幕は、式場内だけではなく外にも掲げられます。しかし、鯨幕を使用しない地域や必要としない宗教もあるので、目にしたことのない方もいるかもしれません。
鯨幕は「くじらまく」あるいは「げいまく」と読み、違う漢字で「蘇幕」と書かれる場合もありますし、黒と白が交互に縫い合わされているため「斑幕(まだらまく)」とも呼ばれているようです。しかし、そもそもなぜ白と黒の幕に鯨の字が使用されるようになったのでしょうか。
白黒の幕が鯨幕と呼ばれるようになった由来は諸説あります。なかでも代表的な言い伝えとして、以下に挙げる2つの説が有力とされています。
1つ目は、鯨のお腹が白く背中が黒い「見た目のコントラスト」が白黒の幕を連想させるというものです。そして2つ目は、昔の日本における食習慣に基づいたものです。その昔、食用で捕獲した鯨の黒い皮を剥ぐと、中の肉は白いといった様子が見受けられたため、そこから連想されたともいわれています。
鯨幕は古来より神事で利用されていました。当時の日本では、黒い色は高貴な色として崇めるべきとされていたためです。現代においても、出雲大社をはじめとした神社での慶事では、故事に習って鯨幕を使用しているところが多いですし、皇室で行われる納采の儀や結婚式の慶事の際にも鯨幕が使用されています。
鯨幕が日本の弔事で鯨幕が使用されるようになったのはつい最近のことです。黒を「悲しい色」とした文化は西洋から伝わったもので、海外の方が日本のご葬儀で最初に黒い喪服を着用したのが、当時の日本人に強い影響を与えたそうです。この出来事がきっかけとなり、昭和以降にはご葬儀に鯨幕が用いられるようになりました。
では、弔事に鯨幕を用いる理由とは、いったいどのようなものなのでしょうか。おおよその使用意図はいたってシンプルです。具体的には、「会場で見せたくない場所を目隠しする」「空間と空間の仕切りにする」などです。
ただし、鯨幕を使わない地域・宗派もあるので、鯨幕の使用について不安がある場合は、菩提寺やご親族の方へ相談してみましょう。
鯨幕の落ち着いたモノトーンとは違い、明るい気持ちになるような幔幕も存在します。カラーリングされた幔幕は、主に慶事用とされています。これにはいったいどのような種類があり、どのような場面で活用されているのでしょうか。
幔幕でよく見られるのは、赤と白の鮮やかな色彩が特徴的な「紅白幕(こうはくまく)」です。入学式・卒業式・成人式などのおめでたい式典にも用いられています。ただし、その歴史は浅く、昭和初期以降に定着したといわれています。
水色を濃くした浅葱(あさぎ)色と呼ばれる青と白の幔幕も存在します。その名称は「青白幕」または「浅黄幕(あさぎまく)」です。青白幕で覆われた場所は、「立ち入られない神聖な結界」として扱われます。
青白幕の歴史は鯨幕よりも古く、地域によっては江戸時代からの伝統とされています。一般的には地鎮祭や上棟式で使われることが多いものの、ご葬儀で用いられることも少なくありません。また、皇室の園遊会や新年祝賀の儀にも使用されます。
もしご葬儀に鯨幕を使用する場合、その費用はどのくらいのものになるのでしょうか。実際に検討する際に慌てないよう、鯨幕の費用相場についても知っておきましょう。
鯨幕をレンタルする場合の相場は、幅5m、高さ180cm程度の大きさの場合、2泊3日でおおよそ3,000円です。また、レンタルで借りた鯨幕を使用する際はひもを通して吊り下げる必要が出てきます。その作業を業者へ依頼する場合、料金が上がることが予想されます。
レンタルした鯨幕を使用するときに気をつけなければいけないのは、借りる際の決まりごとです。たとえば、「ガムテープ・両面テープの使用の禁止」などが挙げられます。「鯨幕にひもを通すのが面倒だからテープを使おう」と安易に考えるのは控えるべきといえるでしょう。
もし鯨幕に土や泥などの汚れがついてしまった場合、クリーニング代を請求されます。また、さまざまな理由で鯨幕に傷がついてしまったときは、弁償することになるかもしれません。鯨幕をレンタルする場合、取り扱いには注意しましょう。
鯨幕を購入するとしたら、どのくらいの費用になるのでしょうか。先ほどと同じように、幅5m、高さ180cm程度の大きさなら約15,000円、幅9mのものなら約20,000円が相場です。生地の厚いものや、より大きな幅の場合、値段はさらに上がります。
しかし、仮に汚れてしまった場合にも、クリーニング代を請求されるようなことはありません。今後も使う予定がある場合、購入した方がお得かもしれません。
弔事でたびたび目にする鯨幕には、さまざまな歴史・由来があります。鯨幕を使用することになった場合、地域・宗教の慣習などを確認し、そのうえで信頼できる業者に相談してみると良いでしょう。
鯨幕を購入する場合、大きさによって異なるものの、おおよそ10,000~20,000円前後かかります。決して安い金額ではないため、事前にご家族や親族と相談しておいた方が良いでしょう。
また、鯨幕をレンタルする場合、業者によっては細かいルールが定められているため事前の確認が必要です。万が一汚してしまうと余計な費用がかかる可能性があるので、レンタルする方はくれぐれもご注意ください。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
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