2023-07-28
ご葬儀の簡素化が進む昨今、「納棺の儀」を行う際に、故人様のご遺体を生前のようにきれいなコンディションへ整えてほしいという考えを持つ方がいらっしゃいます。そのようなニーズに応え、ご遺族や故人様に寄り添いながら仕事を行うのが、「おくりびと」と呼ばれる納棺師(のうかんし)です。
そこで今回は、納棺師の仕事内容について詳しく解説します。納棺師への依頼方法や費用相場も紹介しますので、気になる方はぜひ参考にしてみてください。
映画『おくりびと』でも話題となった納棺師は「湯灌師(ゆかんし)」とも呼ばれています。納棺師は、「故人様のご遺体を棺桶へ納める」のが主な仕事です。
ただし、ご遺体を棺へ納めるだけがすべてではありません。悲しみに暮れるご遺族の気持ちに寄り添いながら故人様の身づくろいを行うことにより、落ち着いた気持ちで穏やかな別れをご遺族に実感してもらうことも、納棺師の重要な務めです。
納棺師を目指す際、取得しておかなければならない必須の資格はありません。ただし、取得することで有利になる民間の資格は存在します。
たとえば、「納棺士認定試験」は比較的メジャーな試験であり、合格して履歴書に書けば、転職の際に有利になることも少なくありません。そのほかにも、「エンバーマー」「葬祭ディレクター」といった資格もあるので、必要に応じて勉強してみると良いでしょう。
次に、納棺師が行う主な仕事について見ていきましょう。
末期の水(まつごのみず)とは、死に水(しにみず)とも呼ばれている儀式です。茶碗に入れた水にガーゼを浸し、亡くなった故人様の口元を湿らせます。末期の水は、ご葬儀に行う最初の儀礼とされています。
その昔、お釈迦様が亡くなる前に水をご所望されたことから、この方法が用いられるようになったそうです。なお、宗教によっては、末期の水を必要としない場合もあります。
湯灌(ゆかん)とは、ご遺体を棺へ納める前に、ぬるま湯に入れて入浴させご遺体を清める作業を指します。近年ではぬるま湯でのお清めを省略し、アルコールで体を拭く「エンゼルケア」が行われることも少なくありません。また、看護師が行うエンゼルケアは、感染症予防の意味も含まれています。
湯灌は、体を清める以外でもう1つ重要な意味を持っています。それは、この世の穢れや苦しみ、そして痛みから故人様を開放し、あの世へ旅立つための支度を整える「大切な準備」ということです。故人様への旅支度をお手伝いする、大切な仕事ともいえるでしょう。
死化粧(しにげしょう)とは、ご遺体を拭いて清め衣類を整える作業です。髪や爪を整え、頬にワタをつめてふっくらと見せたり、チークで血色を良く見せたりするエンゼルメイクを施していきます。男性のご遺体でしたら髭を剃る処置を、女性のご遺体なら薄化粧を施して紅を差すのも大切な工程のひとつです。
死化粧を施した後は、ご遺体に死に装束をまとわせます。通常、衣装は左前で着せます。ただし、上から被せるタイプの死に装束もあるので、一概にはいえません。
ご遺体をきれいに整えたら、いよいよ納棺の作業に入ります。ご遺体は、納棺師とご家族で支えるように抱き起こして、棺の中へ納めます。ご遺体を傷つけることのないよう、必ず二人以上で慎重に行うことが大切です。
納棺後は、ご遺体に布団をかけ、両方の手を組ませます。その後、丁寧に副葬品を詰めていく作業を行います。副葬品として適しているのは、手紙や千羽鶴、生前好きだったお菓子や思い出の写真など燃えやすいものであり、燃えにくいものや不燃性のものは副葬品へ含めないようにしましょう。
また、副葬品を入れすぎると、ご遺骨がきれいに燃えないことがありますので、量は最小限に留めます。このとき、お花は最後のお別れで「別れ花」として棺へ納めますので、副葬品には含ませません。すべての副葬品を収めて棺のふたを閉めたら、納棺の儀は終了です。
納棺の儀を依頼するにはどのような手続きを踏めば納棺師への依頼が叶うのでしょうか。次項で詳しく見ていきましょう。
納棺師と提携している葬儀社であれば、担当のスタッフに相談すると良いでしょう。スケジュールや予算によって異なるものの、うまくいけば評判の良い納棺師を紹介してもらえるかもしれません。
闘病生活が長く、長い間入浴できなかった場合、「故人様の体を清めてあげたい」と思うのが心情です。このような場合、納棺師の方へ依頼するのが妥当でしょう。
また、亡くなった原因が事故だった場合、ご遺体の損傷が激しいことが考えられます。そのような場合でも、納棺師に依頼すれば、ご遺体を生前のきれいな姿へできるだけ近づけてくれます。精神的な負担の軽減という面でも、納棺師への依頼は有効といえるでしょう。
多くの反響があった映画『おくりびと』の影響から、現在納棺師の需要が高まりつつあります。ご遺体にさまざまなケアを施し、故人様との最期の別れを穏やかなものにしてくれる精神的なケアは、簡単に済まされることの多くなった儀式に反し、重要な事柄だと捉える方が増えているためです。
納棺師への依頼を検討している方は、本記事を参考にしていただき、具体的にどのようなプランがあるのか葬儀社のスタッフに相談してみてください。また、自分自身が納棺師として働こうと考えている方は、ご葬儀に関する勉強を行うほか、必要に応じて納棺士資格認定試験を受けてみることをおすすめします。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
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