2023-03-03
日本では、仏式や神式で執り行われるご葬儀がほとんどで、カトリックのご葬儀は少ないです。そのため、どのようにしたら良いのか分からずに迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。今回は、カトリックのご葬儀のマナーや服装、主な流れなどについて詳しく解説していきますので、ご葬儀の知識のひとつとして覚えておきましょう。
カトリックのご葬儀には、主に3つの特徴があります。いずれも仏式には見られないものなので、順番に見ていきましょう。
カトリックと仏式では、「死に対する考え方」に違いがあります。仏式は、死を縁起の悪い不幸な出来事とし「悼むもの」と扱っています。
一方、カトリックでの死は、悲しいこととは考えていません。この世での罪が許され、神のもとへ受け入れられた生の始まりを意味し、「祝福」と捉えるのです。
カトリックでは、信者の「死の瞬間」に神父が立ち会います。そのため、カトリック信者が危篤状態の際には、ご家族だけではなく神父にも連絡を入れます。神父は、信者が臨終を迎えるための準備として、終油の秘跡(しゅうゆのひせき)や聖体拝領(せいたいはいりょう)など、神の許しと恩恵を受けるための儀式を行うのです。
ご葬儀が終わった後は、「追悼ミサ」が執り行われます。教会にご遺族や関係者を招き、聖歌を斉唱し、聖書を朗読するなどして故人様を懐かしむ儀式であり、仏式での法要にあたります。
キリスト教は、主にカトリックとプロテスタントの2つの宗派に分けられており、それぞれ考え方に違いが見られます。生前の罪を神に詫び、許しを請いて生への復活を感謝するという考え方を持つカトリックに対し、神に祈りを捧げることを最大の目的としているのがプロテスタントです。また、ご葬儀のおおよその流れが決まっているカトリックとは違い、プロテスタントは教会によって式次や順序が変わるため注意が必要です。
カトリックのご葬儀を執り行う際、仏式とは異なる部分が多々あります。ここからは、一般的な流れを確認していきましょう。
カトリック信者が危篤になった際に行われるのが臨終の儀式です。まず、神父は信者の意識があるかどうか確認し、もし意識があれば、信者を救う儀式である「終油の秘跡」を行います。神父は按手の後、信者の額と両手に聖なる油を塗布します。
続いて行われるのが、「聖体拝領」です。神父は神に祈りを捧げながら、聖体であるパンとワインを信者に与え、復活の保証を与えます。
息を引き取られた後は、「納棺式」が行われますが、こちらは特に決まったしきたりはありません。一般的には神父が先導し、聖書朗読、聖歌斉唱とともに故人様が神に受け入れられるよう、祈りを捧げます。
その後、ご遺体に処置を施し、棺に納めて白い布を被せます。ロザリオや十字架を添えて周りを沢山の花で飾り、最後にご祈祷で清められた聖水をご遺体と棺に注げば終了です。
通夜の儀式は「前夜式」や「通夜の祈り」とも呼ばれ、仏式の「お通夜」に該当します。本来のカトリックでは通夜の概念がなく、前夜式は日本の風習に合わせた儀式なので、特に決まりはありません。
儀式の流れについては、教会や地域によってそれぞれ異なります。一般的な内容としては、神父による聖書朗読や全員ともに聖歌斉唱が行われ、祈りが捧げられます。さらに、参列者による献花や焼香が行われますが、自宅で行う場合は儀式が簡略化されることも多いです。
カトリックのご葬儀は、「葬儀のミサ」と呼ばれています。流れとしては、入堂式・開式の辞・言葉の典礼・感謝の典礼の順に進行され、最後に神父が退場して終わります。
入堂式では、参列者が起立し、聖歌を斉唱している間に神父とご遺族、棺が入堂します。神父が棺へ聖水をかけ、「開式の辞」によって開式が宣言されます。
続いて行われるのが、「言葉の典礼」です。これは、参列者全員で祈りを捧げながら、神父の聖書朗読や説教に耳を傾けるのが特徴です。そして「感謝の典礼」では、パンとワインを拝領し、食事を取ります。ただし、拝領できるのはカトリック信者のみで、信者以外の参列者は感謝の典礼を見守ります。
棺が運び出される前、故人様との最後の別れを行い、棺の中に献花します。続いて、喪主が参列者に向けて挨拶をした後、ご家族とご遺族で棺を霊柩車へ納め、火葬場へ向けて出発します。
キリスト教は、主に土葬が基本となっています。しかし、日本では土葬が禁じられている地域が多いため、出棺後は火葬が行われることが一般的です。
火葬場に到着したら、棺を火葬炉の前に運びます。その後に聖歌斉唱、神父の祈り、神父と参列者の聖句斉唱を経た後に火葬します。なお、仏式では「骨上げ」という2人でご遺骨を挟む橋渡しという作法がありますが、カトリックでは特にそのような決まりごとは定められていません。
追悼ミサは、故人様が亡くなった日から3日後・7日後・30日後・1年後に実施されます。ご遺族や親近者、神父が自宅や教会へ集まり、聖書朗読や聖歌斉唱を執り行う儀式です。そののち、別室でお茶会を開き、故人様を偲びます。
なお、1年後より先の追悼ミサ実施の有無に、特に決まりはありません。また教会によっては、死者の日といわれる万霊節(11月2日)にも追悼ミサが行われます。
カトリックのご葬儀は西洋の風習が強いため、仏式と異なるマナーがいくつか存在します。参列の際には、ご遺族への挨拶や服装などがマナー違反にならないように気をつけることが大切です。ここからは、カトリックのご葬儀で注意すべきマナーについて解説していきます。
服装のマナーとしては、基本的に仏式と同じで、大人は男女ともに黒い礼服や喪服を着用します。子どもの服装は、乳児であれば落ち着いたデザインのベビー服で問題ありません。
幼児や小学生の場合は、持っているなら制服が望ましいでしょう。制服がない場合は、男の子なら白いポロシャツと地味な色のズボン、女の子なら地味な色のワンピースにします。中学生以上なら制服を着用させますが、派手なネクタイの場合は外すようにしてください。
なお、女性のカトリック信者の作法については、黒い帽子をかぶったり白いヴェールを着用したりしますが、信者でなければその必要はありません。
先述したように、カトリックの考え方として死は「祝福」すべき喜ばしいものですので、仏式のように人の死を悼み悲しむ「お悔やみの言葉」は使用しません。ご遺族や故人様に対しては、「平安」「安らか」「旅立ち」など、なるべくポジティブな意味を持つ言葉を述べましょう。
①安らかな眠りをお祈りいたします
②○○様に、神の平安がありますように
①心から、哀悼の意を捧げます
②安らかな旅立ちでありますよう、心よりお祈りいたします
カトリックのご葬儀では、香典の代わりに「御花料」を包みます。一般的な相場としては、以下のとおりです。
・両親→50,000~100,000円
・兄弟姉妹→30,000~50,000円、
・妻や娘の嫁ぎ先の両親→30,000~50,000円
・そのほかのご親族→10,000~30,000円
・近所の方→3,000~10,000円
・友人、会社関係者→5,000~10,000円
封筒は、百合の花か十字架の絵が描いてあるもの、もしくは白い無地のものを用意します。表書きは、御霊前・御花料・献花料のいずれか記載のあるものを使用すると良いでしょう。記名については、仏式と同様に薄墨を使用するのがマナーです。
ご葬儀にかかる金額は、一般的に400,000~1,000,000円程度とされています。しかし、なかにはカトリックのご葬儀をオプションとして割高に設定している葬儀社も少なくありません。葬儀社選びの際には、このような割り増しがされていないか、並びにカトリックのご葬儀に対して実績と経験が豊富かどうかなどを確認することをおすすめします。
参列できる機会が稀なカトリックのご葬儀ですが、関わることが決まった際には、あらかじめ流れやマナーを把握しておくことが大切です。いざというときに困ることのないようカトリックの特徴をしっかりと押さえ、落ち着いた気持ちで故人様の安らかな眠りを祈りましょう。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
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