2022-12-16
近年は、核家族化や少子高齢化の影響もあり、代々受け継いできたお墓を手放す方が多くなりました。その際に必要になるのが、お墓から魂を抜き取ってもらう「閉眼供養」の儀式です。しかし、閉眼供養は頻繁に行うものではないため、「どんな準備が必要?」「何から始めれば良い?」と悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。
今回は、墓じまいに必要な閉眼供養の意味や準備の仕方、当日の流れやお布施の金額相場などを分かりやすく解説していきますので、お困りの方はぜひ参考にしてください。
閉眼供養の「閉眼」には、「仏様の目を閉じる」といった意味があり、本来人に宿っている魂を抜き取る儀式とされています。宗派によっては、「抜根式」「脱魂式」と呼ばれる場合もあります。一般的に、お墓や仏壇の引っ越しなどで行われますが、近年は墓じまいのために閉眼供養を執り行うケースが多いです。
ただし浄土真宗に限っては、故人様の魂はすぐに極楽浄土へ行けると考えられており、閉眼供養は行われません。そのためお墓を閉じる際には、閉眼供養の代わりに「遷仏法要」を行います。これは「遷座法要」とも呼ばれていますが、いずれも名称が異なるだけで、閉眼供養と内容は変わりありません。
閉眼供養には、故人様の魂を抜き取るといった仏教的な意味のほかにも、ご遺族の後ろめたさや罪悪感を軽減させる意味合いもあります。
お墓や位牌、お仏壇は、ご先祖様の魂が代々込められている大切な場所です。そのため、撤去するにあたって罪悪感を覚えるご遺族も少なくありません。そのような気持ちを払拭し、心置きなく手放すためにも、仏具を魂の入っていないただの「物」にする必要があるのです。
また、閉眼供養を行う理由のひとつに、石材店や仏壇業者との兼ね合いがあります。多くの石材店や仏壇業者は、閉眼供養がされていないお墓の撤去をしぶります。理由はさまざまですが、「バチが当たる」「親族間のトラブルに巻き込まれる」などが代表的です。
閉眼供養を行うタイミングは、以下のように各家庭でそれぞれ異なります。
・お墓の引っ越し
・お墓のリフォーム
・墓じまい
石材店や仏具店が入るのは、閉眼供養の後が多いです。
一般的に、閉眼供養はお墓を継承した方が取り仕切ります。参列する範囲は、ご家族や親しい身内だけの場合が多いですが、お墓参りに来てくれていた方などにも相談すると親切です。
閉眼供養の際は、僧侶へお布施を用意します。金額相場は地域によって異なりますが、30,000~100,000円が一般的です。相場の範囲内で、奇数枚のお札を用意しましょう。
お布施の金額に不安がある場合は、菩提寺に確認するのもひとつの手です。その際は、金額を直接聞くのではなく、「みなさんはどのくらい包んでいますか」とオブラートに包んで質問しましょう。
お布施は本来、供養してくれた僧侶や寺院への気持ちを表したものです。料金表などはないため、不躾な質問は避けましょう。ただし、僧侶を派遣してくれる業者に依頼した際は、明確な金額を提示してくれる場合があります。
また、遠方から足を運んでもらう場合は、お布施とは別に御車代を用意するのもマナーです。御車代の相場は5,000~10,000円ほどとされています。なお、御車代はお布施と性質が異なるため、別々に包むと親切です。
閉眼供養は、故人様の魂を抜き取る大事な儀式です。当日の流れや準備の内容を間違えないよう、しっかりと知識をつけておきましょう。
①菩提寺への連絡
閉眼供養をすると決めた場合、遅くても2週間前には菩提寺へ連絡を行いましょう。霊園などにお墓がある場合は、担当者へ相談を行います。霊園でも対応が難しい場合には、インターネットを使い、僧侶を派遣してくれる業者を探して依頼すると良いでしょう。
②日程を決める
菩提寺と日程の調整を行います。併せて、石材店にも連絡を入れると良いでしょう。
③参列者へ連絡
墓じまいをすると決めた段階で、親族などに連絡するのが最良です。しかし、正式な日程が決まった段階で連絡しても遅くはありません。基本的には、ご家族や親しい親族のみで執り行いますが、お墓参りに来てくれている方に声をかけるのも良いでしょう。
④会食の準備
閉眼供養の後に会食を行う場合は、料理の手配や会場の予約などをします。ただし、これは必ず実施するというものではありません。年配の親族が参列する場合など、気にかかる方がいらっしゃった場合にのみ席を設けても良いでしょう。
⑤お墓やお仏壇の掃除
お墓の掃除は、できるだけ閉眼供養の前に終わらせてしまうのが望ましいです。当日に掃除しても良いのですが、少々慌ただしくなってしまうでしょう。また、お仏壇とお墓はつながっていると考えられているので、お仏壇がある場合は一緒に掃除しておきましょう。
⑥お布施の準備
僧侶へお渡しするお布施を用意しておきます。包み方のマナーは、後述する『お布施のマナー』をご参照ください。
①お墓の掃除
前日までに掃除が行えなかった場合は、閉眼供養の前までに掃除を行いましょう。
②供物を捧げる
お墓に供物を捧げます。用意する品物やマナーについては、後述する『持ち物のマナー』をご参照ください。
③僧侶による読経
僧侶の到着とともに閉眼供養が始まります。基本的には読経の際に手を合わせ、僧侶の指示にて焼香をあげます。読経後にお墓へ水をかけたら、閉眼供養は終了です。
④会食
会食を用意している場合は、会場に移って食事を取ります。ご家族と親しい身内のみの席なので、形式張ったものでなくても問題はありません。
⑤墓じまい
石材店や仏具店に入っていただき、お墓の撤去を行います。撤去する日は、閉眼供養の当日でも別日でも構いません。また、基本的に立ち合いも不要であり、もし立ち会うとしても、最初にご遺骨を取り出すときだけになることがほとんどです。
最後に、閉眼供養における「服装」「持ち物」「お布施」のマナーについて解説していきます。ご家族や親しい親族だけとはいえ、最低限のマナーは守って供養を行いましょう。
閉眼供養は、ご家族や親しい親戚のみで執り行うのが一般的で、喪服を着用する必要はありません。ただし、派手な服装やカジュアルな装いは控えましょう。弔事における平服を基準とするのがおすすめです。
男性・女性問わず、黒・ネイビー・ダークグレーなどの落ち着いた色合いの服が望ましいです。男性ならスーツ、女性であればワンピースやアンサンブルなどを着用しましょう。またお子さんがいる場合、学生服か、なければ清楚で落ち着いた色合いの服で問題はありません。
お供え物の内容は、普段のお墓参りと同じです。とはいえ、最低限、「五供」と呼ばれる品物を用意しましょう。五供とは、お供え物の基本的な品物です。
・お水
・食べ物
・お花
・ろうそく
・お香(線香)
食べ物については、故人様の好きだったものなどで構いません。ただし、仏教でタブーとされているお肉などは控えましょう。ほかにも、「数珠」や「お布施」も忘れてはいけません。
墓じまいの閉眼供養は弔事と異なるため、不祝儀袋ではなく白無地の封筒か、奉書紙を用います。表書きは「お布施」「御布施」などと記入しましょう。また、お布施は必ず袱紗に包み、僧侶へお渡しする際に取り出すのがマナーです。
閉眼供養へ参列する立場の場合、基本的に香典は必要ありません。ただし、新しくお墓を建てた際は、お祝い事としてお金を包むのがマナーです。
閉眼供養とは、故人様の魂をお墓やお仏壇から抜き取る大切な儀式のことです。主にお墓を手放す際に執り行われることが多く、ご家族や親しい親戚のみで行われます。
近年は、核家族化や少子高齢化の影響でお墓の管理が難しくなり、手放す決断をする方も増えてきました。しかし、お墓は自分たちだけのものではありません。墓じまいを行う際は、親族などとしっかりと話し合い、閉眼供養を行ったうえでお墓を手放しましょう。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
仏事に参列する際は、香典をお渡しするのが通例です。香典とは、故人様にお供えするお香や供花の代わりとして、参列者が持参する金銭のことです。香典には、格式の高いご葬儀、そしてその他の法事で古くから言い伝えられているマナーや渡し方など、さまざまな決まりがあります。 そこで当記事では、香典の意味や使用すべき袋の選び方、金額相場をご説明していきます。
家族やお身内など大切な方を亡くされた喪主やご遺族に、ご葬儀の最中、会葬者から「この度はご愁傷様です」とお悔やみ言葉をかけてもらう場面が多くあります。弔事の場で述べられる基本的なお悔やみの言葉として、最も頻繁に使われている「ご愁傷様」という言葉には、どのような意味を持ち、また適切な返答などはあるのでしょうか。 そこで今回は、ご愁傷様の意味と適切な返答についてご紹介します。
香典は、ご葬儀の場において故人様の御霊前へお供え物をする代わりに、ご遺族へお渡しする金銭です。「5,000円程度が香典の相場なのではないか」という意見も散見されますが、故人様との関係や地域によって金額のマナーは変わるため、注意が必要です。 そこで今回の記事では、香典の一般的な相場や香典袋の選び方、書き方、香典のマナーについて詳しくご紹介していきます。