2022-09-26
神式での冠婚葬祭では「玉串料(たまぐしりょう)」を納めます。これは仏教では見られないものであり、そのため「玉串料を用意しなければならなくなったけど、具体的にどんなところに気をつければいいの?」と悩んでしまうケースも少なくありません。
今回は、「玉串料の詳しい内容や意味が分からず悩んでいる」という方に向けて、神道における玉串料の意味や初穂料との違い、ご葬儀における金額の相場・包み方・渡し方などについて解説していきます。
「玉串料」とは、神様へお供えするための金銭のことを指します。昔は金銭ではなく、榊(さかき)の枝に、紙垂(しで)と呼ばれる紙をつけた「玉串」を奉納していました。しかし、時代の流れとともに、玉串を用意するのが難しくなってきたため、現在では玉串の代わりに「玉串料」を納めるようになったのです。
神式の儀式では、玉串料と似た言葉に「初穂料(はつほりょう)」があります。どちらも神様へ奉納する金銭を指す言葉です。しかし、玉串料と初穂料では、意味合いや使う場面が異なります。
「初穂」は、「その年の最初に収穫された稲」といった意味を持っており、昔は本物の稲を奉納していました。しかし、時期によっては必要なものを用意できないといった理由などから、現代では「初穂料」として金銭を用意するのが一般的となっています。
なお、初穂料は祈祷していただいたお礼としてお渡しするものであり、結婚式(神前式)・七五三・厄払いなどの慶事で用いられる場面が多いです。
玉串料は、神事の種類によってお渡しする相手が異なります。基本的に玉串料は神様に奉納する金銭の意味合いがあるため、神社に奉納する場合が多いです。神社に奉納するシーンとしては、地鎮祭・結婚式(神前式)・厄払い・七五三などが挙げられます。
これに対し、弔事の場面では、「喪主から神職へお渡しする玉串料」と「参列者から喪主へ弔いの気持ちを込めて渡す玉串料」の2つが存在します。ニュアンスとしては、仏式の「お布施」「香典」に近いです。
玉串料には、冠婚葬祭、それぞれの場面に応じた金額の相場が存在します。次の項目では、その中でも弔事における玉串料の相場を「喪主から神社へお渡しする場合」「参列者から喪主へお渡しする場合」の2つに分けて解説していきます。
喪主から神社へお渡しする玉串料の金額相場は300,000~400,000円ほどとされており、その内訳は以下のとおりです。
① 参列者の分の玉串料
② 亡くなった方を家の守り神として祀ってもらう祈祷料
①は、参列者の人数×100~200円が相場です。②は、亡くなった方を神様として祀ってもらったお礼として用意する金銭であり、ある程度まとまった額が必要になります。
ご遺族にお渡しする玉串料は、相手との関係性によって変わってきます。以下の表で、一般的な金額を確認しておきましょう。
関係性 | 金額相場 |
---|---|
親・兄弟・配偶者のご家族 | 30,000~100,000円 |
親戚 | 10,000~30,000円 |
友人・知人 | 5,000~10,000円 |
会社関係の方・近所の方 | 3,000~5,000円 |
玉串料には、のし袋の選び方や表書きの書き方など、細かなマナーが存在します。次の項目では、慶事・弔事におけるのし袋の選び方や表書きの書き方、お金を用意する際のマナーについて解説していきます。
玉串料を包む際、のし袋は慶事と弔事で使い分けなければなりません。慶事の場合は祝儀用ののし袋、弔事の場合は不祝儀用ののし袋を用意します。
慶事の場合、婚礼であれば紅白の結び切り、それ以外の場合は紅白の蝶結びを選びましょう。弔事の場合の水引は黒白か双銀で、結び方は結び切りか鮑結びを用います。ただし、のし袋に蓮の絵が印刷されているものは仏式用の封筒となるため、用意する際は注意しましょう。
表書きは、ご遺族から神社へお渡しする場合と、参列者からご遺族へお渡しする場合とで書き方が異なります。
・ご遺族から神社へお渡しする場合
表書きは、上部に「御玉串料」と記載し、下部にフルネームを記入します。また、記入する際は薄墨を用いましょう。
・参列者からご遺族へお渡しする場合
上部に「御玉串料」、下部にフルネームを記載します。墨は薄墨が望ましいですが、市販ののし袋が黒墨で書いてあった場合は、下部の名前も黒墨で構いません。このとき、間違って仏式の「香典」と書かないよう注意しましょう。
のし袋の裏面には、包んだ金額と住所を記入します。金額は漢数字の旧字体(大字)で書くのがマナーです。たとえば、10,000円を包んだ場合、書き方は「金壱萬円他」と記載します。
お札の入れ方も慶事と弔事で異なります。慶事の場合は、お金を取り出したときに肖像画が印刷されている面が見えるように入れます。また、使用するお札は新札を用意しましょう。
一方、弔事の場合はお金を取り出したときに肖像画が裏側にくるように包みます。お札は新札ではないものを使用しますが、あまりにも使用感が出てしまっているものはふさわしくありません。
玉串料とは、神式の儀式に欠かせないもののひとつとされています。本来は、「玉串」を奉納していましたが、現代では金銭でお渡しするのが一般的となりました。この玉串料は、場面によって適切な金額や包み方が異なりますので、今回ご紹介した内容を参考にしつつ、マナーを守って渡すようにしてください。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
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