2022-08-12
仏教にはさまざまな宗派が存在しており、その中の臨済宗は「禅宗」のひとつとされています。この臨済宗は、お経を読んだ後に僧侶が「喝!」と叫んだり、松明を回し投げたりするなど、独自のご葬儀を執り行うことで有名です。
今回は、各宗派の中でも特徴的な臨済宗のご葬儀について解説していきます。臨済宗のご葬儀に関するマナーを把握し、その場にふさわしい行動を取るようにしましょう。
臨済宗は禅宗に分類される宗派であり、日本三大禅宗のひとつです。禅宗とは、坐禅を修行に組み込んで悟りを開く宗派のことを指します。次の項目では臨済宗がどのようにして日本に広まったのかと、臨済宗の教えや考え方について解説していきます。
臨済宗は唐の時代の中国で生まれました。開祖は臨済義玄(りんざいぎげん)であり、日本には鎌倉時代初期に伝来しました。臨済宗を日本に伝えたのは栄西と呼ばれる僧侶です。
当時、臨済宗の教えは今までに類を見ないものであったため、武士をはじめとする多くの人が驚いたといわれています。その後、臨済宗は幕府の支援を受けて全国各地に広まったとされています。
当時、浄土宗や浄土真宗など、念仏を唱えれば誰でも浄土に旅立つことができるという「他力」の宗派が主流でした。しかし臨済宗は、坐禅を行えば悟りを開けるという「自力」の考えを持つ宗派であり、教えの根本が違います。また、坐禅をしながら師から出される問題に答えるという「看話禅(かんなぜん・かんわぜん)」を行うのが特徴です。
次に、臨済宗のご葬儀の特徴について解説していきます。他の宗派にはない特徴を持っているので、それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。
臨済宗のご葬儀を構成する「授戒」「念誦」「引導」には、それぞれ意味が込められています。「授戒」とは、故人様を仏様の弟子にするための儀式のことです。また、「念誦」は臨済宗の経典を唱える儀式のこと、そして引導は故人様を浄土へ送るための儀式です。
特に3つ目の引導は、臨済宗のご葬儀で最も重要視されます。引導では松明を回し投げる、僧侶が「喝!」と一喝する、シンバルのような楽器を打ち鳴らすなど、他の宗派のご葬儀にはない儀式が多数見受けられます。
松明を投げる行為には、悪霊を祓う・煩悩を焼き尽くす・未練を断ち切るといった意味が込められています。昔は本物の松明を使用したようですが、現代では松明に見立てた赤い棒を使用するのが主流です。
シンバルのような楽器や太鼓を打ち鳴らすのは、僧侶が「往生咒(おうじょうしゅ)」と呼ばれるお経を唱えている最中です。往生咒は、故人様が無事成仏できるように願って唱える念仏とされています。
臨済宗のご葬儀では、最後の儀式である「引導」の最中に、僧侶が「喝!」と一喝します。「喝!」の一言には、この世の未練を断ち切り、安らかに浄土へと旅立てるようにという願いが込められています。
臨済宗には特定の経典が存在しません。そのため、「般若心経」や「観音経」などのさまざまなお経が読まれます。
ご葬儀の内容が特徴的なことで有名な臨済宗ですが、そんな臨済宗ならではのマナーや作法も多数存在します。ここからは、臨済宗のご葬儀のマナーや作法について解説していきます。
服装は、臨済宗だからといって特に気にかける点はなく、一般的な喪服のマナーを守れば問題ありません。男性であれば黒のスーツ、女性であれば黒のスーツかワンピースを着用しましょう。
臨済宗の数珠は「看経念珠(かんきんねんじゅ)」と呼ばれています。これは108個の玉から作られており、2連にして使用します。ただし、臨済宗を信仰する方の多くは略式の片手数珠を使用しているため、あえて看経念珠を購入する必要はないかもしれません。
ご葬儀の最中は、基本的に左手にかけておきますが、もし本式の看経念珠の場合は二重にしてかけましょう。また、合掌の際は左手親指に数珠をかけ、右手を添えるようにしてください。移動の際は椅子に置いたりせず、持ち歩くのがマナーです。
臨済宗のお焼香は、親指・人差し指・中指でお香をつまみ、額にいただかず香炉にくべます。臨済宗はさらに細かな宗派に分かれており、宗派によって焼香の回数が異なります。多くの宗派は1回のみですが、なかには3回行う宗派も存在するので気をつけましょう。
臨済宗は線香を1本だけ立てます。右手に線香を持ち、ろうそくに近づけて火をつけた後は、左手であおぎ消すか、線香を軽く振って消すようにしましょう。このとき、息を吹きかけて消す行為は失礼にあたるため注意してください。
臨済宗の香典は、他の宗派と同じように四十九日までが「御霊前」、四十九日以降は「御仏前」です。また、ご葬儀の際の表書きは薄墨を使用しましょう。
香典の額は、故人様との関係性によって異なります。基本的には血縁関係の濃い順、親交が深かった順に金額が大きくなります。
お布施の金額は寺院や地域によって金額が異なるため、寺院に確認しましょう。
お供えするものは、臨済宗の中のどの宗派なのかによって異なります。しかし、基本的には他の宗派と変わりありません。線香やくだもの、お菓子、お茶などがよく選ばれています。
ここからは、臨済宗のご葬儀がどのような流れで行われるのか、ご葬儀の流れを解説していきます。
1.剃髪(ていはつ)
2.懺悔文(ざんげもん)
3.三帰戒文(さんきかいもん)
4.三聚浄戒(さんじゅうじょうかい)
5.十重禁戒(じゅうじゅうきんかい)
1.入龕諷経(にゅうがんふぎん)
2.龕前念誦(がんぜんねんじゅ)
3.起龕諷経(きがんふぎん)
4.山頭念誦(さんとうねんじゅ)
1.引導法語
2.焼香
3.出棺
前述のとおり、「授戒」「念誦」「引導」の順で執り行われます。ただし、各儀式の内容は寺院や地域によって異なるので、不安な方は事前に僧侶の方に確認しておきましょう。
臨済宗のご葬儀は独特な儀式が多く、独自のマナーや作法が存在します。そのため、あらかじめ知識をつけておくと、ご葬儀の当日に慌てることなく対処できます。
独特の儀式があったとしても、根本の「故人様を偲ぶ気持ち」はどの宗派のご葬儀でも変わりありません。多少マナーや作法が間違っていようとも、心からご冥福をお祈りする気持ちで手を合わせることが大切です。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
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