2022-05-20
突然 訪れたご不幸に慌ててしまい、冷静に行動できなくなるのは仕方のないことです。特に喪主の立場になった場合には、慣れない儀式を執り行わなければなりません。耳慣れない言葉に混乱してしまうことも多く、特に湯灌の際に困ってしまうケースも少なくありません。
今回は、故人様のお体を清めるために行う湯灌について、行う意味や手順などをご紹介します。
湯灌は「ゆかん」と読み、故人様のお体や髪をお湯で清める儀式のことを指します。長い闘病生活を送っており満足に入浴ができなかった場合や、入浴を好んでいた場合など、「最期のお別れをする前に故人様をきれいにしてあげたい」というご遺族の希望を叶えるために行われます。
そのほかにも、現世の穢れを落とすために洗い清めるため、身なりを整えて来世へと導かれやすくするためなどさまざまな理由があり、 方法や場所も地域や葬儀社によって異なるのが特徴です。
死化粧とは、故人様の身なりを整えることをいいます。故人様が好んでいた服に着替えさせて化粧を施し、生前と同じような姿で送り出すために行うので 、湯灌と似ている点が多いのも事実です。しかし、死化粧では入浴やシャワーは必須ではなく、消毒に使うアルコールを用いてお体を拭く「清拭」という方法で行われます。
エンバーミングの 目的は、ご遺体の腐敗防止や殺菌消毒です。ご遺体の血管に特殊な溶液を注入し、衛生的に長期間保存できるよう施術するため、専門の設備が整った施設にご遺体を移送して行われます。
湯灌が現世の穢れを落とすために洗い清める儀式的なものに対し、エンバーミングはエンバーマーと呼ばれる有資格者が行う科学的な措置とされています。
湯灌は一般的に、下記のような流れ で行われます。最近は、喪主をはじめとするご遺族の方ではなく、葬儀社のスタッフが行うのが一般的です。
①湯灌の準備
ご葬儀会場内に湯灌の設備がある場合にはその部屋で、ご自宅で行う場合にはスタッフが湯船(槽)を用意して 訪問し準備を始めます。
湯船にお湯を用意する際には、「逆さ水」と呼ばれる水にお湯を足す方法が取られます。通常、入浴する際にはお湯に水を足して温度調節をしますが、ご葬儀の際には通常とは逆の流れであらゆる物事を行わなければなりません。これを「逆さ事」と呼び、逆さ水は逆さ事のひとつとされています。
②湯船までご遺体を移動させる
お体が見えてしまわないよう、故人様にタオルをかけてから湯船のそばまでご遺体を移動します 。
③スタッフによる湯灌の説明
スタッフが湯灌を行う意味や手順などの説明を行います。
④お清め
湯灌師がお湯で故人様をお清めします。ご遺族が行う場合には、柄杓を左手に持ち足から胸へとお湯をかけていきます。これも逆さ水と同様に、日常とは異なる「逆さ事」を行うというしきたりに則った風習です。
⑤洗髪、洗顔、顔剃りなどのお手入れ
髪やお顔を洗い、ひげ剃りや産毛剃りが行われます。お顔の水分をタオルで拭き取り、髪にはドライヤーが当てられます。
⑥全身のお清め
シャワーを用いてお体全体を清めます。お清めは故人様にタオルをかけた状態で行われるため、お体が見えないように配慮して行います。
⑦着付け・化粧
故人様が好きだった服や経帷子に着替えさせ、化粧が施されます。このとき、旅支度 として仏衣に着替える場合もありますが、これはお亡くなりになった方が49日の間旅をするという仏教の考えによるものです。仏衣は葬儀社が用意し、手甲 ・脚絆・足袋・編み笠・草履・杖などがセットになっています。
※宗派によって異なります。
なお、上記はあくまでも一般的な手順のため、地域や葬儀社によって異なる場合があります。また、湯灌にかかる時間はおよそ1時間~1時間半 が目安です。
湯灌はご葬儀費用に含まれておらず、プランの追加が必要なケースがほとんどです。また、移動式の湯船を使用する場合にはさらに追加料金が発生する可能性もあるため、多めに見積もっておくと安心でしょう。
詳しくは葬儀社に問い合わせてください。
最後に、湯灌を行う際に知っておきたいマナー をご紹介します。
・立ち合いに関するマナー
・服装に関するマナー
落ち着いて最期のお別れができるよう、基礎的な知識を身につけておきましょう。
基本的には、ご遺族とご親族のみが立ち合い ます。そのため、ご遺族・親族以外の立ち合いを断ってもマナー違反にはなりません。また、途中からの立ち合いのほか、入退室も可能です。
湯灌に立ち会う際の服装は、喪服でなく平服で問題ありません。平服で立ち会う場合、お通夜までに喪服へと着替えられれば問題ありませんが、遠方から駆け付けた場合やご葬儀までに時間がない場合には喪服でも構いません。
今回は、湯灌を行う意味や湯灌の大まかな流れについて解説しました。湯灌には現世の穢れを落とすために洗い清めるという目的もありますが、故人様をきれいな状態で来世に送ってあげたいというご家族の気持ちを叶えるためのものでもあります。戸惑うこともあるかもしれませんが、大事な故人様のためにも湯灌の知識を覚えておきましょう。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
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