2022-04-07
みなさんは「鳥葬(ちょうそう)」という言葉をご存知でしょうか。世界にはさまざまなご葬儀の方法があり、鳥葬もその一つです。主にチベットで行われているご葬儀の方法なのですが、その内容は日本人の私たちからすると少し衝撃的なものとなっています。
鳥葬とはいったいどのようなご葬儀の方法なのでしょうか。鳥葬とは何なのか、なぜチベットで鳥葬が行われているのか、本記事ではチベット仏教の考え方を含めて、鳥葬について解説していきます。
日本で葬送といえば火葬が一般的ですが、チベットでは鳥葬が一般的な方法です。鳥葬はご遺体をハゲワシに食べされるという葬送の方法です。
チベット仏教以外にも鳥葬を行う宗派は存在します。それがインドの「ゾロアスター教」です。2つの宗派はどちらも同じ鳥葬を行いますが、根本の考え方は異なります。有名なのはチベット仏教の方で、世界的に「鳥葬」と聞いて連想されるものもチベット仏教の鳥葬です。
鳥葬では、ただご遺体を野ざらしにして鳥に食べさせるのではなく、神聖な儀式として行われます。
まず僧侶による読経で、ご遺体から魂を抜くという儀式を行います。その後は鳥葬師と呼ばれる専門職の方々が、鳥が食べやすいように、ご遺体を小さく裁断していくという流れです。
チベットで鳥葬が行われるようになった理由は、「チベット」という国の環境によるものという説が有力とされています。チベットは乾燥が強く、樹木が育ちにくい環境のため、火葬に使われる木材の入手が困難です。
また、チベットの土は硬く乾燥しているので微生物の数が少なく、ご遺体を土葬しても分解が進みづらいという難点があります。このような環境的要因とチベット仏教の考え方が結びついて、「鳥葬」というご葬儀方法が行われるようになりました。
それでは、鳥葬を行うチベット仏教とは、どのような宗教なのでしょうか。チベット仏教は大乗仏教の一つで、インド仏教に似ています。輪廻転生(りんねてんせい)やカルマの考え方を強く信じており、来世でどのような人に生まれ変わるのかは、今世での行い次第とされています。
それではなぜ、チベット仏教では、ご遺体を鳥に食べさせるのでしょうか。その理由は、「ご遺体を鳥に食べさせる」という行為を、「お布施」として考えているからです。
人間は多くの生物の命を頂いて生きています。そのため、死後にご遺体を他の生き物に与えることで自然に還元され、故人様が供養されて前世で犯してきた罪が洗い流されると考えられているのです。
いくら自然に還元するためだとしても、私たち日本人の感覚では「ご遺体を鳥に食べさせる」という行為を「残酷」に感じてしまうかもしれません。しかし、日本人とチベット仏教を信じる方たちとでは、ご遺体に対する価値観が大きく異なっています。
輪廻転生を信じるチベット仏教では、ご遺体は魂が入っていた抜け殻であり、「死」というものは魂の入れ物が変わるだけだと考えられています。したがって、チベット仏教におけるご遺体を鳥に食べさせるという行為は、「残酷」なものではなく、神聖な儀式でしかないのです。
火葬が主流の日本において、鳥葬は取り行えるのでしょうか。結論からというと、日本で鳥葬を執り行うことはできません。なぜなら日本には葬送に関する規定がしっかりと決められているからです。
日本で鳥葬を行うと、刑法第190条の「死体損壊・遺棄罪」に触れてしまう可能性があります。また、「墓地、埋葬等に関する法律」によって、火葬や土葬をする際には市町村の許可が必要と明記されています。つまり、日本では決められた方法でなければご遺体を葬送することができないのです。
チベットに行けば鳥葬が見られるのかというと、そういう訳でもありません。以前は鳥葬の見学をすることができましたが、現在は厳しく取り締まりが行われています。
そもそもご葬儀は見世物ではありませんが、一時期は珍しい鳥葬という文化を見たいという理由から、世界各国の方々がチベットに足を運んでいました。しかし、あまりにもマナーが悪い観光客が多かったため、2005年にチベット自治区は「天葬管理暫行規定(てんそうかんりざんこうきてい)」を発表。鳥の保護を目的として鳥葬の見学を禁止しました。
それでも鳥葬を見に訪れる観光客は後を絶たず、2015年からは立憲措置を取り、さらに厳しく取り締まるようになっています。
鳥葬は観光客向けの見世物ではなく、チベットで昔から行われている伝統的なご葬儀です。逆の立場で考えると、海外の観光客が日本のご葬儀を見学したり、写真や動画を撮っていったりしたら不謹慎だと感じるものです。
鳥葬は好奇心で見るものではありません。もし興味があるのでしたら、直接見学するのではなく文献などを参照してみると良いでしょう。
世界にはさまざまなご葬儀の方法があり、鳥葬はそのなかでも珍しいご葬儀の方法となります。日本人の私たちからすると少し衝撃的な内容ではありますが、その行為にはしっかりとした理由が存在します。
興味が湧き、鳥葬を見てみたいと思うかもしれません。しかし、ご葬儀を興味本位で見るというのは故人様への冒涜につながります。現地で見学するのではなく、文献などで調べるようにしましょう。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
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