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2022-04-01

般若心経とは?現代語訳や意味・読み方を分かりやすく解説

誰しも一度は耳にしたことがあるお経、「般若心経(はんにゃしんぎょう)」。年長の方がお仏壇に向かって唱えている姿を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

日本で古くから親しまれてきた般若心経は、「ハートスートラ」と訳され、世界各国で人々の心の癒やしとして存在しています。

それでは、世界中の人々の心を掴む般若心経とはいったいどのようなものなのでしょうか。本記事では般若心経に書かれている内容の意味や歴史について分かりやすく解説していきます。

般若心経とはどんなお経?

般若心経とは、どのようなお経なのでしょうか。仏教における「般若」には、「知恵」という意味があります。すなわち「般若心経」とは「知恵のお経」という意味です。正式名称は「般若波羅蜜多心経」といい、仏教における大切な教えが集約されている経典になります。

般若心経の歴史

般若心経はどのようにして誕生したのでしょうか。私たちが般若心経を唱えられるようになったのは、数百年前に存在したある僧侶のおかげと言われています。

唐(中国)の時代、「玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)」という僧侶が修行のためインドへ向かいました。玄奘三蔵はインドで般若心経の原点である「プラジュニャーパーラミター・フリダヤ・スートラ」に出会います。玄奘三蔵はこの経典を持ち帰り、中国語に翻訳しました。

そのときに翻訳した経典が「大般若波羅蜜多経(だいはんにゃはらみったきょう)」だと伝えられています。大般若波羅蜜多経は全600巻にわたり、それを集約したものが「般若心経」です。

般若心経を読む宗派

日本には複数の仏教宗派が存在します。しかし、すべての宗派で般若心経が唱えられているわけではありません。それでは、どの宗派で般若心経が唱えられているのでしょうか。

主な宗派は「天台宗」「真言宗」「臨済宗」「曹洞宗」「浄土宗」になります。対して般若心経を唱えない宗派は「浄土真宗(大谷派を含める)」「日蓮宗」です。

なぜ般若心経を唱える宗派と唱えない宗派に分かれているのかというと、それぞれの宗派で悟りに至るための考え方が違うからです。

般若心経を唱える宗派では、悟りの境地は自ら考え至るものであると考えられています。一方で、「浄土真宗」と「日蓮宗」では阿弥陀様のお導きによって悟りの境地に至ると考えられています。

ご葬儀や法要での般若心経の役割

般若心経は唱えられる場面によってその役割が変化する経典です。例えば修行の際に唱えるのであれば、それは悟りの境地に至るための経典になります。

ご葬儀の場であれば、故人様の加護をお祈りし、あの世への安らかな旅立ちを願う祈祷になります。読まれるタイミングは宗派によって異なりますが、納棺前やお通夜、火葬時などが多いです。

仏教には「回向(えこう)」という考え方があります。自分で得た「徳」を故人様へ回し向けるという考え方です。追悼供養で般若心経の読経することによって、徳を積むことができるとされています。このように、般若心経は読む環境によって役割が変化します。

般若心経の全文

般若心経の全文は以下のとおりとなります。

摩訶般若波羅蜜多心経

観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 

照見五蘊皆空 度一切苦厄

舍利子 色不異空 空不異色

色即是空 空即是色

受想行識亦復如是  舍利子 是諸法空相

不生不滅 不垢不浄 不増不減 

是故空中 無色無受想行識 

無眼耳鼻舌身意 無色声香味触法 

無眼界 乃至無意識界 

無無明 亦無無明尽 

乃至無老死 亦無老死尽 

無苦集滅道 無智亦無得 以無所得故 

菩提薩埵 依般若波羅蜜多故 

心無罣礙 無罣礙故 無有恐怖 

遠離一切顛倒夢想 究竟涅槃 

三世諸仏 依般若波羅蜜多故 

得阿耨多羅三藐三菩提 

故知般若波羅蜜多 

是大神呪 是大明呪 

是無上呪 是無等等呪 

能除一切苦 真実不虚 

故説般若波羅蜜多呪 

即説呪曰

羯諦 羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦 

菩提薩婆訶

般若心経

般若心を現代語訳で分かりやすく解説

前項で提示した般若心経の現代語訳を分かりやすく解説していきます。

私(観音菩薩)は「私自身」という存在について考えていく中で、ある結論に達しました。私たちは「五蘊(ごうん)」と呼ばれるもので形成されており、五蘊とは「色」「受」「想」「行」「識」で成り立っています。

「色」は私たちの体そのものを意味し、「受」は刺激を受け取る感覚。「想」はその刺激に対してどう考えたか、そうして「行」は私が何かを行おうとする意思、「識」は物事を心に留めることを意味します。しかし、これらはすべて存在しないものなのです。私はこの現象を「空(くう)」と名付けました。

私たちはこの世に存在するあらゆるものに価値や概念を与えていますが、それすらも実態のないものです。私たちは今まで培ってきた概念をリセットしなければなりません。

私たちが苦しむ原因は、物事の本質を捉えられないところにあります。つまり、すべてを「空」として捉えることによってその苦しみから解放されるのです。すべてが「無」だと言い聞かせることで、私たちの受け止め方を変えることができます。

私たちが外界から受ける刺激もすべて現象にすぎず、それすらも「空」なのです。この考え方を受け入れることによって世界の見方が変わり、価値観の変化につながります。

これらの知恵を得るためには、次の真言が必要です。

ギャーテー ギャーテー ハーラーギャーテー ハラソーギャーテー ボージーソワカー

以上が般若心経の簡単な現代語訳になります。般若心経は奥が深い経典なだけに、訳し方によって内容が変わってきます。

般若心経での「空」の概念

般若心経の中に数多く登場する「空」とは一体どのような概念なのでしょうか。この項目では仏教において最も重要な「空」の概念について解説していきます。

仏教において私たちを形作っているものは、「色」「受」「想」「行」「識」の5つの要素、つまり「五蘊」です。その中でも「色」は体であり、物体そのものを意味しています。

般若心経では、この「色」は存在せず、「空」であると説いています。なぜなら、「色」は概念であり、存在ではないというのが般若心経の考え方だからです。

体だけではなく、「心」そのものも存在しません。なぜなら私たちが受ける悲しみも苦しみもいつかは消え去ってしまうからです。

「大乗仏教」の考え

仏教には「大乗仏教」と「小乗仏教」の2つがあり、般若心経は「大乗仏教」に分類されます。それでは、「大乗仏教」とは一体何なのでしょうか。その意味について解説していきます。

大乗仏教が誕生したのは紀元前1世紀にさかのぼります。当時の仏教は限られた者しか修行することができませんでした。僧侶たちは民衆には目もくれず、寺院にこもり教理の研究に勤しんでいました。

民衆たちはそのような仏教のあり方を「小乗」と批判し、誰しもが悟りの境地に辿り着くことができる仏教として「大乗仏教」を作り上げたのです。ちなみに、現在では「小乗仏教」という呼び方は使用されていません。

大乗仏教の根本的な思想が「空」の価値観です。「空」とは、前項でも解説したとおり、物事を概念で捉える思考や言葉で理解する行動を否定する思想です。これこそが、大乗仏教の考え方になります。

物事は変化し続ける

般若心経は、なぜこのような「空」の思考に至ったのでしょうか。この世にあるすべてのものは月日とともに変化し続けます。例えば、人間は時間とともに老いていき、花は咲いたら散っていきます。大乗仏教では、このような日々変化し続けていく世界について考えました。

大乗仏教の教徒たちは、このような「変化し続ける」現象を「空」と呼びました。変化とは起こっている現象であり、その本質は変わることはない。つまり変化は現象でしかなく、真実は本質にあるという考え方に至ったのです。

物事の尺度・価値観について

「空」の考え方は、物事の概念や価値観についても否定しています。

例えば、私たちは高価な物をなぜ高価だと感じるのでしょうか。それは私たちがその「物」に「高価」という価値観を与えたからです。同じ景色を見ても「美しい」と感じる方もいれば、そう思わない方もいます。このように、価値観や物の見方の尺度は私たちが勝手に決めているものであって、実際は実態のない「空」であるとしています。

つまり、般若心経における「空」には、決められた価値観や尺度に囚われず、本質を見抜くことが大切であるという教えが込められているのです。

まとめ

般若心経は262文字という短い文の中に、仏教の考え方が集約された経典になります。悟りの境地に至るための経典であり、ご先祖様を供養するために使われる場合もあります。

今までは意味を分からずに聞いていたという方も、次回耳にする機会があった際は、その意味を今一度思い出して耳を傾けてみてはいかがでしょうか。そうすることによって、今までとは違う気持ちで般若心経に向き合えるかもしれません。


記事の制作・編集
セレモニーコラム編集部

60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。


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