2021-07-15
ご葬儀で使用する言葉の中には、日常生活ではあまり使用しないためにきちんとした意味を分かっておらず「何となくこんな感じでは?」というものがあると思います。そのような言葉の1つが「荼毘に付す」ではないでしょうか。
そこで今回は、「荼毘に付す」の意味やその由来、正しい使い方などについてご紹介します。
「荼毘に付す」は「だびにふす」と読み、日本では「火葬すること」を意味しています。通常、人が亡くなられた後にはお通夜式が営まれ、その後にご友人や会社関係者などにもご会葬いただくご葬儀・告別式が執り行われます。ご葬儀・告別式の最後には出棺し、故人様のご遺体を火葬場で火葬を執り行われます。この「火葬を執り行うこと」を「荼毘に付す」と呼びます。
その語源は、古代中西部インドの言語である「パーリ語の『jhāpeti(ジャーペーティ)』」と南アジアやインドなどで使用されていた「古代語の『dhyāpayati(ディヤーパヤティ)』」という言葉の音を取ったとされています。どちらの言葉も「燃やす・火葬」を意味する言葉で、それぞれ仏教の経典に使用されていた言葉でもあることから、仏教では火葬が正式な方法となり、火葬のことを「荼毘に付す」となったとされています。
「荼毘に付す」は故人様のご遺体を火葬することだけを意味するため、葬儀式場で故人様を偲ぶことや出棺してご遺体を火葬場に運ぶ行程は、基本的に含まれません。しかしながら、「荼毘に付す」という言葉は法律で定められている用語ではないため、人によって意味の解釈に多少の開きがあります。そのため、場合によってはご遺骨を納めることまでを指す場合もあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
「荼毘に付す」は前述したように「火葬を執り行うこと」を意味するため、使う場面はかなり限られますが、使用する際には注意点があります。以下では「荼毘に付す」の注意点についてまとめましたので、ご参照ください。
「荼毘に付す」という言葉は、先に取り上げたように「火葬」を表す仏教用語になります。そのため、神道やキリスト教、イスラム教などの仏式以外の宗教のご葬儀では使用しないようにしましょう。仏式以外の宗教で弔った場合は、その宗教に合わせた正しい言葉を使用しましょう。
猫や犬をはじめとしたペットは、大切な家族の一員です。最近ではペットが亡くなった際に火葬をする方が増えてきました。「荼毘に付す」はそのような状況から、大切なペットを火葬する際にも使用されるようになってきました。
「荼毘に付す」に関連して知っておきたいのが「荼毘葬」になります。荼毘葬は、通常のご葬儀のように祭壇に飾りやお花を置かないで、できるだけシンプルに故人様をお送りすることを主旨として執り行われるご葬儀を指します。
なお、荼毘葬は比較的古い表現であり、現在では「直葬(ちょくそう・じきそう)」という表現が一般的となっていますが、仏教用語をしっかりと使用されたい場合は「荼毘葬」を使用される方もいらっしゃいますので、覚えておくとよいでしょう。
「荼毘に付す」は「火葬」を表す仏教用語になります。そのため、仏式以外のご葬儀ではこれを言い換える言葉を使用しなくてはいけません。以下では、「荼毘に付す」の類語をまとめましたので、ご参照ください。
「荼毘に付す」の類語として一般的なのが、「見送る」と「天に召される」になります。見送るは「故人様をあの世に見送る」、天に召されるは「火葬によって魂が天へと昇る」という意味になります。
<例>
・父が本日、天に召されました。
・父が本日、無事に見送られました。
「荼毘に付す」の類語に、泣きながらご遺体をお棺に納めて葬ることを表す「葬斂(そうれん)」という言葉があります。葬斂は、亡くなられた方を埋葬または火葬したり、お墓に納める一連の儀式を指します。
「荼毘に付す」と異なる点としては、「泣きながら辛い気持ちで故人様をお棺に納める」という行為が含まれている点になります。「荼毘に付す」は先ほどから記載しているように火葬をするというご葬儀の形を指す言葉であって、悲しく辛い気持ちを表す言葉ではありません。そのため、言い換える際は、ご家族や近しい方が亡くなられて別れを惜しむような状況で使用するようにしましょう。
<例>
・今日、事故で亡くなられた被害者を葬斂する予定です。
・母が父との別れに葬斂する姿を目の当たりにした。
ご葬儀の場面で使用される用語は、難しい漢字を使用することが多く、正しい意味や使用方法が分かりにくいものがいくつもあります。「荼毘」という言葉も、そうした言葉の1つになります。そのため、正しい意味と使用方法を理解して、適切な表現をするように心がけましょう。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
仏事に参列する際は、香典をお渡しするのが通例です。香典とは、故人様にお供えするお香や供花の代わりとして、参列者が持参する金銭のことです。香典には、格式の高いご葬儀、そしてその他の法事で古くから言い伝えられているマナーや渡し方など、さまざまな決まりがあります。 そこで当記事では、香典の意味や使用すべき袋の選び方、金額相場をご説明していきます。
家族やお身内など大切な方を亡くされた喪主やご遺族に、ご葬儀の最中、会葬者から「この度はご愁傷様です」とお悔やみ言葉をかけてもらう場面が多くあります。弔事の場で述べられる基本的なお悔やみの言葉として、最も頻繁に使われている「ご愁傷様」という言葉には、どのような意味を持ち、また適切な返答などはあるのでしょうか。 そこで今回は、ご愁傷様の意味と適切な返答についてご紹介します。
香典は、ご葬儀の場において故人様の御霊前へお供え物をする代わりに、ご遺族へお渡しする金銭です。「5,000円程度が香典の相場なのではないか」という意見も散見されますが、故人様との関係や地域によって金額のマナーは変わるため、注意が必要です。 そこで今回の記事では、香典の一般的な相場や香典袋の選び方、書き方、香典のマナーについて詳しくご紹介していきます。