2021-02-26
神棚を祀られているご家庭で一番の問題は、リフォームや引っ越しなどに伴う神棚の移動ではないでしょうか。神棚のお引っ越しはそうそう経験するものでもありませんので、ご家族やご親族に聞いてみても、曖昧な答えしか返ってこないことも十分に考えられます。
そこで今回は、リフォームや引っ越しなどのために神棚を移動させる際の作法や注意点などについてご紹介します。
神棚は、神社でいただいた「お神札(おふだ)」を祀る神聖な場所になります。仏壇に本尊や故人様・ご先祖様を祀るのに対し、神棚には伊勢神宮のお神札(神宮大麻(じんぐうたいま))、お住いの地域をお守りしてくださる氏神様やその他に崇敬している神社のお神札を祀ります。
神棚を置く風習が広まっていったのは江戸時代中期と言われており、天照大御神(あまてらすおおみかみ)を祀っている伊勢神宮の「御師(おし/おんし)」、今でいう営業マンが、日本各地を行脚して、神宮のお神札を各地に届けていきました。そのお神札を祀るために神棚を置く風習が広まったとされています。
なお、現代では神棚の種類も増え、扉が1カ所である「一社式」や扉が3カ所ある「三社式」、神社を模した屋根のない「箱宮」、洋風内装にもマッチした「モダン神棚」などがあります。
神棚を移動させる際に、「吉日を気にした方がいいの?」と疑問を持たれる方もいらっしゃると思います。結論を申し上げると、神棚を移動させる際に吉日はありません。吉日を選んで神棚を放っておくことの方がよくありませんので、素早く新居に運び入れてお祀りすることを心がけましょう。
日常生活において神棚を動かすことはほとんどありませんが、リフォームや引っ越しなどのためにどうしても神棚を移動させなければいけないことも起こります。以下ではそのような時に困らないように、神棚を移動する際の手順についてまとめましたので、ご参照ください。
神棚には繊細な彫刻が入っていたり、薄く細かい板を組み合わせて出来上がっているため、取り扱いに非常に注意が必要になります。ましてや頻繁に買い替える物でもありますので、万が一があってはいけないと、引っ越しを引き受けてくれない引っ越し業者もあります。その場合、ご自身で移動させなければいけないため、最初に確認をしておくようにしましょう。
引っ越し業者にお願いするにしても、ご自身で移動するにしても、神棚の元の状態が分かるように写真を撮っておきましょう。写真を撮っておけば、引っ越し先で神棚を設置する際に配置を思い出す必要が無くなりますし、万が一割れや傷が入っていた際に前の状態と比較できます。
仏壇を移動させる際には司式者にお仏壇の中に祀られている故人様・ご先祖様の魂をお仏壇から抜く「魂抜き(閉眼供養や遷仏法要とも言う)」を執り行ってもらいますが、神棚も同様になります。
神棚には、ご自身が生まれた土地に宿る産土(うぶすな)の神様とお会いできる「産土神社」やご自身が居住する地域の氏神(うじがみ)様をお祀りしている「氏神神社」のお神札が祀られているため、引っ越しが決まったら地元にある神社に参拝して、神様に引っ越しの報告をします。
次に神社の神主さんにお越しいただき、神棚に宿っている魂を抜いていただきます(魂抜き)。なお、最近では魂抜きを執り行わずに参拝だけで済ませる方も増えてきました。
神棚の荷造りに関しては家具などの荷物を片付けた後、つまり引っ越し作業の最後に行いましょう。神棚の荷造りはまず未使用の雑巾で軽く乾拭きし、お神札を神棚から取り出します。
神棚の中に祀られているお神札は取り出した後にそのまま箱に納めるのではなく、和紙や白い布に包んで丁寧に保管しましょう。その際、お神札の上に物を置いたりするのは絶対にやめましょう。
お神札を取り出したら神棚を降ろします。この時、神棚は直接床に置かないようにし、きれいな布などの上に置くようにしましょう。全て降ろし終えたら、壊れないようにできれば専用の箱を用意して納めましょう。
新居に到着したら、他の荷物よりも先に神棚を設置します。この時、事前に撮影していた神棚の写真を参考に配置していきましょう。
神棚を設置したら、丁寧にお神札を納めるのですが、住む場所が変わればその場所の神社(氏神様)も変わります。神社(氏神様)が変わった場合は、その地域の氏神様が祀られている神社に出向き、新しいお神札を用意してもらいましょう。なお、元のお神札は旧居の氏神様が祀られている神社に納めましょう。
祝詞(のりと)とは、神道の儀式で神主が唱えるもので、仏教でいう「お経」に当たるものになります。神道では言葉に強い力が宿るとされており、特に祝詞は神に語りかける際に使用されるため、非常に強い力が込められているとされています。
近くの神社に依頼して唱えてもらうのが正式ですが、祝詞は一般の方も唱えることができます。その際に唱える祝詞は、「天津祝詞(あまつのりと)」と「神棚拝詞(かみだなはいし)」の2つが一般的です。
天津祝詞
高天原(たかあまはら)に神留坐(かむずまりま)す
神漏岐(かむろぎ)神漏美(かむろみ)の命以(みことも)ちて
皇親神伊邪那岐(すめみおやかむいざなぎ)の命(おおかみ)
筑紫(つくし)の日向(ひむか)の橘(たちばな)の
小門(をど)の阿波岐原(あはぎはら)に禊祓(みそぎはら)え給(たま)いし時(とき)に生坐(あれま)せる
祓戸(はらへど)の大神等(おほかみたち)
諸々(もろもろ)の禍事罪穢(まがごとつみけがれ)を
祓(はら)へ給(たま)へ清(きよ)め給(たま)へと申(まを)す事の由を
天津神(あまつかみ)地津神(くにつかみ)
八百万神等共(やほよろづのかみたちとも)に
聞食(きこしめ)せと
畏(かしこ)み 畏(かしこ)みも白(まを)す
惟神霊幸倍坐世(かむながらたまちはえませ)
神棚拝詞
此(これ)の神床(かむどこ)に坐(ま)す 掛(か)けまくも畏(かしこ)き
天照大御神(あまてらすおほみかみ) 産土大神等(うぶすなのおほかみたち)の大前(おほまへ)を
拝(をろが)み奉(まつ)りて 恐(かしこ)み恐(かしこ)みも白(まを)さく
大神等(おほかみたち)の広き厚き御恵(みめぐみ)を辱(かたじけな)み奉(まつ)り
高き尊き神教(みをしへ)のまにまに 直(なほ)き正しき
真心もちて 誠の道に違(たが)ふことなく
負ひ持つ業(わざ)に励ましめ給(たま)ひ 家門(いへかど)高く
身健(みすこやか)に 世のため人のために尽(つく)さしめ
給へと 恐(かしこ)み恐(かしこ)みも白(まを)す
神棚の引っ越しをすることはそう何度もあることではありませんので、不安な方は多いと思います。もし神棚を移動することが必要になった場合でも。今回ご紹介したような基礎知識があれば安心ですし、引っ越し業者に神棚の引っ越しを依頼する際にも適切な依頼ができます。
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