2020-07-22
宗教や慣習にこだわらず、自由な形で行うことができるのが無宗教葬儀です。日本におけるご葬儀は、約8割が仏式と言われていますが、近年では無宗教でご葬儀を執り行う方も徐々に増えてきています。これといって決まった形がない無宗教葬儀は自由度が高いため、参列を予定したり、喪主を務めたりする時になって戸惑ってしまうことがあるかもしれません。
そこで今回は、無宗教葬儀とはどんなご葬儀なのか、式次第や内容、服装マナーについてもご紹介します。
先述したように、無宗教葬儀とは宗教の儀式や習慣にこだわらず自由な形で行うご葬儀を指し、そうしたことから「自由葬」とも呼ばれます。演出や設営を含め、故人様やご遺族のご要望に沿った内容にアレンジできるため、より故人様らしいご葬儀を行うことが可能になります。例えば、故人様が好きであった音楽をかけたり、皆でお見送りしたい時などは「お別れ会」のような形式でご葬儀を執り行えます。
故人様が生前打ち込んでいた趣味やサークル活動などがあれば、それにまつわる品々を展示して会葬者に見ていただくのもよいでしょう。その他にも、思い出の品や記念の品なども展示すれば、会葬者に故人様との思い出を振り返っていただけます。
故人様の軌跡をまとめた動画や画像のスライドを上映する方法も、動画やスライドを見ながら会葬者の方々が在りし日の故人様との思い出を振り返り、エピソードを語り合うきっかけになります。ご遺族やお身内の方では知らなかった、故人様のお人柄や話が聞けるかもしれません。
無宗教葬儀において、故人様が生前に愛していた音楽を流すだけではなく、バンドによる生演奏を行ったり、楽器の合奏、合唱をしたりするのも故人様らしい旅立ち方になります。
無宗教葬儀の式次第は、特定の宗教・宗派に則ったご葬儀と異なり、こうあるべきという決まりがないため、故人様らしさやお身内の希望を反映した式次第にできます。しかし、独自の流れで式を進行するのは難しいだけでなく、場合によっては会葬者の混乱を招く恐れがあります。
そのため、多くの無宗教葬では、従来の仏式のご葬儀の式次第の流れを活かした式次第が一般的となっています。
会葬者が入場したら、あらかじめ決められていた席に座りますが、この時にどこに着席したらよいかと判断に迷う方もいらっしゃるかもしれません。そのため、会場の入り口付近に、席への案内をする係員を配置すると丁寧です。
入場のタイミングで故人様がお好きだった音楽を流す、生演奏でお迎えするなどの演出を行うケースもあります。
会葬者全員の着席が済んだら、司会者から開式の言葉が述べられます。開式の言葉では合わせて無宗教葬儀を執り行う経緯などをお伝えするとよいでしょう。
無宗教葬儀では仏式の読経がありませんので、ここで会葬者全員による黙祷を捧げます。お元気だった頃の故人様を思い出し、目を瞑り少し頭を下げて、静かに黙祷を捧げましょう。
献奏とは故人様が愛した音楽や曲を捧げることです。バンドやオーケストラによる生演奏だけでなく、音楽に合わせて故人様の思い出のスライドを上映したり、曲にまつわるエピソード、どなたからの依頼であるかということを紹介したりするのもよいでしょう。
故人様が歩まれた経歴を司会者から紹介したり、故人様の生前の姿を動画や写真のスライドを用いて上映されるケースもあります。また、故人様からご遺族やご親族、友人・知人に宛てたメッセージがエンディングノートなどで準備されていた場合は、このタイミングで紹介されます。
会葬者が故人様に最後のお別れの挨拶をします。挨拶を述べるのは1人と限った訳ではなく、複数人または会葬者全員のこともあり様々です。在りし日の故人様との思い出を振り返り、故人様へ最後に伝えたい気持ちを自由に伝えます。お手紙を読み上げて、お別れの言葉とすることもあります。お別れの言葉は仏式で言うところの弔辞にあたると考えてよいでしょう。
献花は故人様を弔うために祭壇に花を供えるもので、仏式で言うところの焼香と同様に考えられます。献花で使われる花はカーネーションや菊が一般的ですが、故人様がお好きだった花を捧げることもあります。
喪主、ご遺族、お身内、会葬者の順に1人ずつ花を手向けますが、その際に故人様が好きだった音楽を流しても問題ありません。
無宗教葬儀であっても焼香だけは行いたいとおっしゃる方も多く、そのような時は焼香を行っても問題ありません。しかし、ご葬儀の会場がホテルなどの他の利用客も多く集まる会場であった場合は、火を扱うことや匂いなどの理由から一般的に焼香は禁止としていることが多いようです。
なお、献花のマナーや注意点に関しては以下の記事で詳しく紹介しておりますので、ご興味のある方はぜひご参照ください。
様々なご葬儀で行われる献花。献花のマナーや注意点をご紹介
喪主から会葬者に対し閉式の挨拶が述べられます。ご葬儀に駆けつけてくださったお礼、故人様との生前のお付き合いに謝意を表します。
また、会場を移して一同で故人様を偲びながらの会食の席となることもあります。この会食には、会葬者やご葬儀にお力添えをいただいた方々へのお礼の意味が込められます。
無宗教のご葬儀に参列する際の服装は、特にご遺族から指定のある場合を除き喪服を着用するのが望ましいです。男性は黒のスーツを着用してネクタイや靴下、ベルトや靴も黒で統一します。
女性は黒のスーツやワンピース、アンサンブルを着用して、ストッキングや靴、バッグも黒で統一します。会葬の案内に「平服でお越しください」などの指定がある時は、ダークスーツや落ち着いた色味のワンピースなどを着用すれば問題ありません。
無宗教葬儀を執り行いたいと考えられている方は、注意すべき点が2つありますので、以下で見ていきましょう。
無宗教葬儀を執り行った場合、ご遺骨は菩提寺のお墓ではなく、宗教・宗派を問わない民営霊園や公営霊園に納めなければいけません(菩提寺のお墓はその宗教・宗派の檀家の方のものですので、納骨を断られてしまうことがあるからです)。そのため、菩提寺にすでに先祖代々のお墓がある方は、無宗教葬儀はできるだけ避けましょう。
ただし、故人様のご意向で無宗教葬儀を執り行いたいということであれば、トラブルを避けるためにも、事前に菩提寺に相談をしましょう。
自由な形式でご葬儀を執り行える無宗教葬儀ですが、しきたりや昔からの形式を重んじる方、厳格なご葬儀にこだわりのある方にとっては違和感を覚えられ、反対に合うこともあります。故人様に安心してあの世に旅立っていただくためには、ご葬儀を無宗教葬儀で行おうと考えた時は、お身内同士でしっかり話し合っておきましょう。
故人様やご遺族の希望に沿ったご葬儀を実現できる無宗教葬儀ですが、宗教的な儀式や習慣などに捉われない自由な形式であるために、周囲から反対されたり、誤解を招いてしまう可能性もあります。そのため、無宗教葬儀を希望される場合は、ご家族・親族・菩提寺と連絡をとりしっかりと話し合うだけでなく、実績を持った葬儀社を見定めることが大切です。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
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