2023-12-22
弔問に伺った際やお墓参りの際、故人様の宗教が仏教であれば必ずお線香をあげます。弔問やお墓参りに欠かせないお線香ですが、宗派によってお線香をあげる本数に違いがあり、お線香をあげる際に決まったマナーがあることはご存じですか。
そこで今回は、お線香をあげるその時になって迷ったり慌てたりしないために、お線香の正しいあげ方やマナーについてご紹介します。
弔問の際やお墓参りの際にお線香をあげるという行為ですが、この行為には3つの意味が込められていると言われています。
「死後の人間が食べるは匂いだけで、善行を行った死者は良い香りを食べる」という記述が仏教経典である「倶舎論(くしゃろん)」にあるように、故人様がお亡くなりになってから四十九日を迎えるまでは、線香を食べ物とすると仏教では考えます。これは「食香」と呼ばれ、地域や宗派によっては、四十九日を過ぎるまで線香の火を絶やさないように務めるのはこのためです。
仏教が生まれたインドでは、高貴な方と接する際は必ずお線香を焚く作法があります。これは、仏様が説教の中で、俗塵(ぞくじん)つまり、日常(俗世間)でいつの間にか汚れてしまった心を清めるためにお香を焚いて清めるよう説いたからだと言われています。
仏教では、お線香の煙には、それを通して仏様とお話をするという意味があります。つまり、お線香の煙が、あの世の故人様とこの世の私たちの橋渡しをしてくれるのです。お線香をあげて手を合わせ、故人様に思いを馳せ、自分がこの世に生まれたことを感謝することは、お線香によって故人様と心を通わせることに他なりません。
弔問先でお線香をあげる際には、ある程度手順が決まっています。地域や宗派によって違いはありますが、まずは一般的な手順 を見ていきましょう。
①数珠(じゅず)は房が下にくるよう、左手で持ちます。
※お線香をあげている間、数珠はずっと左手に掛けたままにしておきます。
②静かにお仏壇の前へ移動しましょう。
③お仏壇の前に着いたら 、ご遺族に一礼します。
※お仏壇の前に座布団がある場合は「座布団の手前」で止まり、ご遺族に一礼しましょう。
④お仏壇の前、または座布団の上に着席したら、遺影に向かって一礼します。
⑤一礼後には合掌しましょう。
※地域、宗教によっては合掌がない場合もあります。
⑥備えつけのマッチに点火し、ろうそくに火を灯します。
⑦ろうそくの火にお線香をかざして、火をつけましょう。
⑧お線香に火がついたら、反対の手で扇いで火を消します。
⑨香炉に煙の立ったお線香を立てます。
※お線香の立て方や本数は宗派によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
⑩「おりん」を一度だけ鳴らします。
※浄土真宗ではおりんを鳴らしません。
⑪数珠を両手に掛けてから合掌した後、数珠を左手のみに掛け直します。
⑫遺影に向かって、深く一礼しましょう。
⑬備えつけのろうそく消しを用いて、ろうそくの火を消します。ろうそく消しがない場合は、手であおぎ 消して構いません。
※後にお線香をあげる方が控えている場合、ろうそくの火は消しません。
⑬お仏壇の前から一歩離れます。座布団に座っている場合は座布団から降ります。その後、ご遺族に向き直って一礼しましょう。
⑭元の席へ静かに戻ったら終了です。
なお、ご葬儀後に弔問先へ伺う場合は、事前に許可を取ることが大切です。日程はご葬儀後4~5日経過してから四十九日までが良いでしょう。また、ご遺族によっては香典をお受けしない 場合があるため、香典を持参して良いかどうかも確認します。
服装は、カジュアルなものや派手なもの、喪服は避けます。着用するのは落ち着いた平服にして、数珠を持参しましょう。また、お供え物は日持ちのするものを選び、高価すぎるものや生ものは避けるようにします。
お線香のあげ方についてのマナーは、宗派によって異なります。故人様の宗派に合った方法でお線香をあげられれば、より丁寧な印象をご遺族の方へ与えられます。
・天台宗・真言宗
お線香3本に点火し、香炉の中の手前に1本、祭壇側へ2本のお線香を立てます。
・浄土宗
お線香1本に点火し、香炉の中央に立てます。
・浄土真宗本願寺派
お線香1本を真ん中で折り、2本になったお線香へ同時に点火します。火が左横になるよう、香炉へ寝かせましょう。
・真宗大谷派
お線香1~2本を真ん中で折り、2~4本になったお線香へ同時に点火します。火が左横になるよう、香炉へ寝かせましょう。
・臨済宗・曹洞宗・日蓮宗
お線香1本に点火し、香炉の中央に立てます。
お線香をあげる時には、いくつか注意を払っておくべきマナーがあります。弔問の際にはご遺族に失礼のないよう、一般的な振る舞いを把握しておくことが大切です。
お線香を2本あげる際、くっつけて立てても間隔を開けても、基本的には問題ありません。しかしながら、お線香をあげる方が複数人になる場合は、香炉のスペースが広く使えるよう、2本くっつけて立てた方が親切です。
天台宗や真言宗に関しては、香炉の中の手前に1本、お仏壇側へ2本というように、逆三角形でお線香を配置するのが良いとされています。
ライターやマッチで、お線香へ直接火をつける行為はタブーとされています。なぜならば、ろうそくには「不浄を払って清める」「故人様が極楽浄土へ旅立つための手引きになる」といった効果があると信じられているためです。
仏壇の前では、まずろうそくに点火し、ろうそくの火から線香へ火を灯すようにしましょう。
火を吹き消すのはマナー違反に当たります。なぜならば、仏教には「人の口は不浄のもの」という教えがあるため、仏様に向かって息を吹き掛けるのは失礼に当たるためです。お線香の火は、反対の手であおぎ 消すものと心得ておきましょう。
地域や地方によって異なるものの、弔問先でお仏壇にお線香をあげる方法とほとんど変わりません。ご自宅でのお線香のあげ方は、以下のような流れが一般的です。
①数珠(じゅず)は房が下にくるよう、左手で持ちます。
②静かにお仏壇の前へ移動しましょう。
③お仏壇の前、または座布団の上に着席したら、遺影に向かって一礼します。
④一礼後には合掌しましょう。
⑤マッチに点火し、ろうそくに火を灯します。
⑥ろうそくの火にお線香をかざして火をつけます。
⑦お線香に火がついたら、反対の手であおいで 火を消しましょう。
⑧香炉に煙の立ったお線香を立てます。
⑨「おりん」を一度だけ鳴らします。
※浄土真宗ではおりんを鳴らしません。
⑩数珠を両手に掛けてから合掌した後、数珠を左手のみに掛け直します。
⑪遺影に向かって深く一礼します。
⑫ろうそく消しを用いてろうそくの火を消しましょう。
※ろうそく消しがない場合は手であおぎ 消します。
年齢を重ねるにつれて人間関係は広がり、ご葬儀や弔問の機会も必然的に増えていきます。なお、司式者や喪主からお線香のあげ方について指示があった場合は、そちらを優先して指示に従いましょう。
なにかと忙しい毎日を送る私たちですが、お墓参りやお仏壇に手を合わせる時は、お線香をあげて心を静めて、故人様やご先祖様と対話をしてみましょう。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
ご葬儀に参列することになった場合、まず用意しなければならないのが不祝儀袋です。ところが、巷には「御霊前」と「御仏前」の二種類のものが店頭に並べられています。ここで、どちらをどのようなタイミングで使うのか、迷われる方も多いのではないでしょうか。 そこで当記事では、「御霊前」と「御仏前」の意味や違い、表書きの使い分けについて明確に解説していきます。
お釈迦様によりインドで誕生した仏教は、中国や朝鮮を経て日本にも伝えられてきました。その際に、さまざまな場所で色々な解釈が生まれ、多数の宗派に分かれていったといわれています。宗派により教えは異なりますが、ご葬儀の方法やしきたりにもそれぞれに違いがあるのは広く認知されていることでしょう。