2023-05-26
お悔やみの手紙に特定の決まりはありませんが、通常の手紙とは異なるマナーが存在します。封筒選びから文章の型、使用してはいけない言葉まで、配慮するべき項目は多いです。事前にマナーを把握しておかなければ、ご遺族に不快な思いをさせてしまうかもしれません。
そのような事態を防ぐため、本記事では、お悔やみ手紙の書き方やマナー、活用しやすい例文を紹介します。メールでお悔やみを伝える際の例文もありますので、併せてご一読ください。
お悔やみの手紙とは、ご遺族へ慰めや労りの気持ちをしたためたものです。お悔やみ状とも呼ばれており、故人様への弔意も含め、ご冥福の気持ちを込めて送ります。誰でも送っていいものではなく、案内状をもらったものの通夜・告別式に参列できない場合に用意します。
よく弔電と間違われますが、弔電は弔事のための電報です。参列できない代わりにお悔やみの気持ちを伝えるといった動機は同じですが、送るタイミングやマナーが異なります。
大きな違いは、お悔やみの手紙の場合は香典を同封でき、弔電はメッセージのみとされている点です。弔電を送る場合は、先にメッセージだけを伝え、あとからお悔やみの手紙と共に香典を送ります。
お悔やみの手紙は、一般的に初七日法要までに送るのがマナーです。そのため、通夜やご葬儀に参列できないと分かった場合は、すぐに手紙をしたためましょう。
ご葬儀があったことを知らず、初七日が過ぎてから逝去を知った場合も、早めにお悔やみの手紙を書くのがおすすめです。初七日以降に訃報を知る状況としては、「喪中はがきで把握する」「人づてに耳に入る」などがあります。
お悔やみで使用する便箋や封筒に、特定の決まりはありません。ただし、派手な色や柄物は避けましょう。基本的には、白無地などシンプルなものが望ましいです。
封筒は、二重封筒ではないものを用意します。二重封筒は、不幸が重なるといった意味を連想させる縁起の悪さから、お悔やみの手紙には相応しくありません。
香典を同封する際は、現金書留を利用します。その際、香典袋と手紙は別々の封筒に入れましょう。それぞれの封筒を、1つの現金書留専用封筒に同封します。現金書留に直接便箋を入れるのはマナー違反ですので、お悔やみの手紙用と香典用で2つ封筒を用意しましょう。
香典袋の表書きは、送るタイミングによって表記が変わるので注意が必要です。四十九日前に送付する場合は「御霊前」、四十九日後は「御仏前」となります。
ただし、真宗(浄土真宗・真宗大谷派)と曹洞宗は、四十九日前後関係なく「御仏前」で統一しましょう。
包む金額は、故人様との関係によって変わります。血縁関係の濃い順、交流の深かった順で包む金額が高額になるのが一般的です。
お悔やみの手紙を書く際は、以下のことに配慮した上で書きましょう。
通常手紙をしたためる時は、「拝啓」や「謹啓」といった頭語や季節に合わせた「時候の挨拶」を最初に記します。しかし、お悔やみの手紙はこのような頭語や時候の挨拶は不要であり、すぐに本題へ入るのがマナーになります。
本来であればお悔やみの言葉は、直接ご遺族に口頭で述べるのがマナーになります。手紙で弔意を表すことは略式になるわけですから、くどくどと理由を申し述べる必要はないものの、ご葬儀に伺えない理由はお詫びの言葉と共にお伝えしましょう。また、後日改めてお伺いするつもりの時は、その旨も書いておきます。
お悔やみの言葉はご遺族に対して弔意を表すために送る手紙ですが、既に十分悲しみの中にいるご遺族の気持ちを思えば、手紙の中でこと更に悲しみを強調するのは相応しくありません。ここではあなたがご遺族を気遣い、寄り添う言葉を書くようにするのがマナーです。
悲しんでいるご遺族に対して、故人様のお亡くなりになった理由を尋ねるのはマナー違反です。先述しましたように、お悔やみの手紙では故人様を弔う気持ちとご遺族へ慰めの言葉をかけるように配慮します。
生前の故人様と親しくお付き合いのあった時などは、なぜお亡くなりになったのか気になる気持ちは分かりますが、一番悲しんでいるのはご遺族です。今はそれを尋ねる時期ではありません。ご遺族を傷つけるような文言は決して使ってはいけません。
お悔やみ状の表書きは、薄墨を使用するのがマナーです。弔辞の場では「悲しみの涙で墨が薄まった」といった意味を表現するため、昔から使用されてきました。しかし、現代ではそこまで意識する方も少なくなってきています。
そのため、薄墨と筆を用意できない場合は、万年筆やボールペンでも問題はありません。万年筆やボールペンを使用する際は、ブルーやブラックインクを用いましょう。近年はグレーのインクも一般的になっています。
忌み言葉は、「重ね言葉」や「死に対する直接的な言葉」を指し、不幸を繰り返す、重なるといったことを連想させてしまうため使用しないようにします。
【重ねことば】
重ね重ね(かさねがさね)/益々(ますます)/度々(たびたび)/重々(じゅうじゅう)/次々(つぎつぎ)/再三(さいさん)/いよいよ/くれぐれも/かえすがえす など
【繰り返しが連想されることば】
続く/引き続き/再び/再々/次に/なお/また/追って/追いかける など
【直接的な表現】
死亡/逝去/死ぬ/生きる/存命中/自殺 など
【不吉な表現】
浮かばれない/大変なことになる/消える など
親族や親戚にお悔やみの手紙を送る時は、自身から見た故人様の敬称を使用します。故人様の敬称は以下のようになりますのでご確認ください。
また、友人や知人など他人の場合は、手紙の宛名の方と故人様がどのような間柄にあるか考えた上で、相応しい敬称を使いましょう。
喪主から見た故人様 | 敬称 |
---|---|
父 | ご尊父様(ごそんぷさま)/お父様(おとうさま)/お父上様(おちちうえさま) |
母 | ご母堂様(ごぼどうさま)/お母様(おかあさま)/お母上様(おははうえさま) |
夫 | ご主人様(ごしゅじんさま)/旦那様(だんなさま)/ご夫君様(ごふくんさま) |
妻 | ご令室様(ごれいしつさま)/ご令閨様(ごれいけいさま)/奥様(おくさま)/奥方様(おくがたさま) |
祖父母 | ご祖父様(ごそふさま)/御祖父様(おじいさま)/祖父君(おじぎみ)/ご祖母様(ごそぼさま)/御祖母様(おばあさま)/祖母君(おばぎみ) |
息子 | ご子息様(ごしそくさま)/ご令息様(ごれいそくさま) |
娘 | ご息女様(ごそくじょさま)/ご令嬢様(ごれいじょうさま) |
お悔やみの手紙はどのような構成で書くべきか、迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。ここではお悔やみの手紙の文章構成について、解説して参ります。まず、押さえたいのは以下の3つの項目になります。
・主文
・末文
・後付け
以上を踏まえてお悔やみの手紙を書いて行きますが、書式は基本的に縦書きです。横書きの書式はカジュアルな印象を与えるため、お悔やみの手紙には不適当です。
お悔やみの手紙では、時候の挨拶は不要です。短く簡潔にお悔やみの言葉を伝えましょう。そして、故人様を弔う気持ちとご遺族を慰める気持ちの、2つをお伝えするのが大切です。もしも、ご遺族とあなたが面識のない時は、故人様と自身がどのような関係性であったかを述べる必要があります。
お悔やみの言葉に続いて、故人様との思い出や感謝の気持ち、ご遺族の体調を気遣う言葉や慰めの言葉をお伝えします。故人様とご遺族の関係性などを考慮しながら、文章を綴りましょう。
ご葬儀に参列できない時は、欠席することに対してお詫びをお伝えします。やむを得ず欠席する理由が、結婚式や新婚旅行、出産といった慶事の場合は「事情により」と綴りましょう。
香典を同封したり、供花や供物を送ったりした時は、文章の終わりにその旨をお伝えします。香典を同封する時は普通郵便ではなく、現金書留にて送付するようにしましょう。現金書留の封筒は郵便局で取り扱っています。
結びの言葉で何か特別なことを書く必要はありませんが、ご遺族の気持ちを慮った言葉選びが必要です。安易に悔しさや励ましの表現を使うことは、悲しみに沈んでいるご遺族に対して無神経と取られる可能性もあるため、注意しましょう。
主文・末文に続いて、後付けを記入します。後付けとは「日付」・「差出人」・「宛名」のことです。宛名は忘れずに、敬称である「様」を付けます。
お悔やみの手紙は故人様へ出すのではなく、ご遺族宛てに書く手紙ですので、宛名はご遺族の名前を記入しましょう。もし、あなたとご遺族に面識がなく名前が分からない時は、喪主の名前や喪中はがきの差出人名を宛名にして問題ありません。
故人様との関係性に分けて、お悔やみの手紙の例文を紹介します。表示の都合上横書きとなっていますが、実際は縦書きで書くのがマナーです。
また、手紙を書く際は句読点を使用しないよう注意しましょう。句読点は、文節に区切りを入れるといった意味を持っています。そのため、冠婚葬祭の場では、祭事が滞りなく終わるようにといった願いを込めて句読点は使用しません。
母親を亡くした方に宛てると仮定した文例です。
このたびは ご母堂さまご逝去の報を受け 心からお悔やみを申し上げます
かねてよりご療養中とは存じておりましたものの あまりのことに言葉を失っております
本来ならばすぐにでもお伺いしたいところですが やむを得ぬ事情よりすぐに参上できないことをお許しください
ご家族皆様には 一日も早く心穏やかに暮らせますようお祈りを申し上げます
略儀ながら 書中にてお悔やみ申し上げます
いきなりお悔やみの言葉から始めて問題はありません。時候の挨拶や頭言葉は書かないように注意しましょう。
仲の良い友人に宛てると仮定した文例です。
このたびは 突然の悲報を受けただただ驚くばかりで
あの明るい素敵な笑顔をもう二度と見られないのだと思うと 悲しくて言葉もありません
本来であれば直接お伺いをしてお悔やみ申し上げたいところですが 入院中のためままならず 申し訳ございません
ご家族の皆様さぞご心痛かと存じます どうかお力を落とされませんよう くれぐれもご自愛ください
まずは書中をもちましてお悔やみを申し上げます
ご遺族を気遣う言葉を伝えると、より労いの気持ちが伝わります。参列できない理由を伝えるのも大切なポイントです。
会社の取引先に宛てると仮定した文例です。
貴社取締役西営業本部長●●様のご逝去のお知らせを承り 驚きと悲しみを深くいたしております
ご生前は●●様より格別のご厚情を賜りまして 今日の弊社がございますのも●●様のお力添えあってのことと改めて深く感謝いたしております
ご遺族の方々をはじめ 社内の皆様のご心痛はいかばかりかと拝察いたします
本来ならばすぐにでも弔問にお伺いすべきところですが 遠路ままならず 略儀ながら書中にてお悔やみを申し述べる次第でございます
ご冥福を心よりお祈り申し上げます
生前故人様にお世話になった方であれば、感謝の言葉を記しても良いでしょう。その際は、ご遺族との関係性を考慮した言葉選びをするのが大切です。
あとから亡くなったこと知った場合の文例です。
このたびおじいさまの訃報に接し 大変驚いております
まだまだお元気でご活躍していらっしゃると思っておりましたのに ご家族のご心痛はいかばかりかと存じます
ここ数年はご無沙汰しておりましたために おじいさまが亡くなられていたことも存じませず 弔問にもお伺いせずに申し訳ございませんでした
遅ればせながら 謹んでご冥福をお祈り申し上げます
お力落としのことと存じますが どうかお気持ちを強く持ってご自愛ください
心ばかりですが 御香典を同封いたします どうか御霊前にお供えくださいませ
心よりお悔やみ申し上げます
香典を同封した際は、文章の最後に同封した旨を記します。
近年は、お悔やみ手紙の代わりにメールを利用する方も増えています。メールでお悔やみを伝える行為自体は、マナー違反ではありません。
メールを用いるかは、故人様やご遺族との関係性によって決めましょう。故人様やご遺族が目上の方であれば、手紙で伝えるのがマナーです。昔からの親しい間柄や、長く仕事をしていた取引先で、すぐにでもお悔やみを伝えたいといった場合であれば、メールでも問題はありません。
【件名】
お悔やみ申し上げます(自分のフルネーム)
【本文】
お母様のご逝去を知り 突然のことで言葉が見つかりません
何かと大変だと思いますが あまり無理をしないよう 私にできることがあれば いつでも声をかけてください
心よりご冥福をお祈りいたします
メールの場合、手紙ほどかしこまった文章でなくても構いません。最低限のマナーを守り、ご遺族の気持ちに寄り添った文面であれば問題はありません。
お悔やみの手紙は、ご葬儀に駆けつけられない自身の思いを丁寧に手紙にのせて、ご遺族に送る手紙です。やむを得ない事情から通夜・ご葬儀への参列がかなわなかったとしても、お悔やみの手紙がご遺族に寄り添いたい、故人様を偲びたい、というあなたの気持ちを代弁してくれます。お悔やみの手紙を書く時は、マナーを守って、悲しみの中にいるご遺族を思い遣る言葉を綴りましょう。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
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「御母堂」は、故人様の死を悼むご葬儀の場でよく使用されます。ご葬儀は、人生において経験する機会の少ないフォーマルな儀式です。このような場面で、どなたかを指し示す言葉を使う場合は、お相手に最大の敬意を払う必要が出てきます。