2025-02-21
ご葬儀に参列したあと、お礼状や香典返しと一緒に小袋入りの「塩」が渡されます。これは「お清めの塩」といい、穢れを浄化するため、ご葬儀後に自宅前で使用するものです。このしきたりは、日本古来の伝統として現代に根付いています。
そこで今回は、知っているようで意外と知らない、お清めの塩を使う理由と正しい使い方・まき方についてご紹介します。
「お清めの塩」は、ご葬儀によって参列者がまとった「死の穢れ」を祓うものです。近年では、ご葬儀で受ける香典返しやお礼状に添えられていることが多く、ご帰宅の際、自宅へ入る前にお清めの塩を使用することで、死の穢れが浄化できると信じられています。
ここからは、お清めの塩の意味、宗派や地域による考え方などを紐解いていきましょう。
お清めの塩を使用 するのは、邪気から身を清めるためです。かつて日本には、病気や天災など不幸なことが起きるたび、塩で身体を清める習慣がありました。
神道では、現代においても死の穢れによる邪気が不幸をもたらすと考えられています。なお、お清めの塩は死の事実がもたらす邪気のみを祓うものであり、決して故人様の霊を祓うといった意味はありません。
宗教によっては、「お清めの塩が迷信である」といった考えを持っている場合があります。この考えにおいて一番有名なのは、浄土真宗です。浄土真宗では、往生即身仏(おうじょうそくしんぶつ)の教えが説かれています。故人様は極楽浄土で仏になるとされているため、清めるのは不必要だと考えられているのです。
ただし、現代では日本の伝統的な慣習に合わせ、浄土真宗のご葬儀でも、帰り際に参列者へ塩をお渡しする ケースが増えています。
お清めの塩は、自宅へ邪気を持ち込まないよう、玄関に入る前に使用するのが通例です。ご親族のご葬儀に参列した場合は、お清めの塩を使用しなくてもよいと考えられているのが一般的です。
また、宗派や地域によって、身体を塩で清めるかどうかに関する考え方は異なるため、ご葬儀でお清めの塩が配られない場合もあります。ここからは、お清めの塩の使い方について解説いたします。
お清めの塩は、身体へ振りかける前に手を洗うのが正式な方法とされています。しかし、現代では省略されることが多いです。
家の外に蛇口がある一軒家であれば手を洗えますが、アパートやマンション住まいの方は、家に入る前に手を洗うのは難しいかもしれません。在宅されているご家族がいる場合は、外まで水を持ってきてもらって手を清めることができますが、難しい場合は省略しても構わないとされています。
お清めの塩は、ひとつまみ程度の量をとり、胸元・背中・足元の順番で振りかけます。その後、手で服についた塩を軽く払います。自宅で留守番をしているご家族がいる場合は、塩を振りかけてもらいましょう。
服についた塩を振り払ったあとは、足元に落ちた塩を踏みます。これは、邪気を完全に断ち切り、穢れを祓うための儀式です。塩をしっかりと踏みしめたら、玄関に入りましょう。
お清めの塩が残ったとしても、調味料として使用するのは控えましょう。お清めの塩は食用として作られているわけではないため、シリカゲルなどの乾燥剤が入っている場合があります。
なお、料理に間違えて使用するといったことを防ぐため、お清め塩の袋には「非食品」と記載してあることが多いです。余ったお清めの塩は、そのまま処分するか、家庭ゴミ(生ゴミなど)を処分する時に殺菌のため使用するのがよいでしょう。
うっかり、お清めの塩をかけ忘れ家に入ってしまった時はどうしたらよいのでしょうか。このような場合でも神経質になる必要はありません。気になる方は喪服のまま玄関の外に戻り、お清めの塩をかけてから、服に付着した塩を払い、落ちた塩を踏みしめて再び家の中に入れば問題ありません。
お清めの塩以外の清め方として、代表的なのは参列者に振る舞われる食事です。「通夜ぶるまい」「精進落とし」「お清め」などと呼ばれており、食事によって活力や気力が養われ、邪気に負けない体力がつくと考えられているのです。
また、お酒にも邪気を祓う力があるとされており、食事の際にはお酒が振る舞われます。お酒には神聖な力が宿っていると信じられているため、日本の神話でも、お祓いやお清めの際にお酒がよく使用されています。
お清めの塩は、宗教の考え方だけでなく、地域に伝わる慣習などによっても左右されることがあります。地域によっては神道のご葬儀であっても、お清めの塩がない場合もあります。そのため、お清めの塩がないことで、どうしても気になる方はご自身で塩を用意するとよいでしょう。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。