2025-01-17
盆灯籠(ぼんとうろう)は、その名のとおりお盆の時期にのみ飾られる灯籠です。盆灯籠は伝統的な盆飾りですが、一部の地域のみでしか行われないため、知っている方はそこまで多くないかもしれません。
盆灯籠では、お墓を美しく華やかに彩ることで、ご先祖様の御霊をご供養します。本記事では、この幻想的な風景をもたらす盆灯籠について、詳しくご紹介いたします。
盆灯籠(ぼんとうろう)とは、六角形に組まれた竹に、色とりどりの紙や半紙、金色の紙などを貼り付け、下方にはヒラヒラとした紐飾りが付けられた華やかな灯籠です。一般的にお盆で仏壇周りへ飾られる盆提灯とイメージが重なりがちですが、盆灯籠はお盆の時期にのみお墓周りに飾ります。
そもそも盆灯籠は、浄土真宗の安芸門徒(あきもんと)と呼ばれる宗派がお盆に用いていた特別な灯籠で、故人様の御霊を弔い慰めるため、お墓に飾っていたものです。しかしながら、現代ではさまざまな宗派がお墓に盆灯籠を飾るご供養方法を採用しており、地域の伝統として根付きました。
盆灯籠は、広島市や周辺地域、高知県、香川県中部などでも見られますが、地域によってその形や色合い、飾り方はさまざまです。しかし、いずれも目的は共通しており、お盆の時期にこの世へ戻るご先祖様や故人様の御霊をご供養するために行われます。
盆灯籠を飾る地域で最も有名なのは、広島県西部の安芸地方です。この地域にお住まいの方は、浄土真宗本願寺の宗派の方が多数を占めていたため、古くから多くの方がお墓に盆灯籠を飾っていました。
時代をさらに遡って盆灯籠の由来を探ると、さまざまな言い伝えが残されています。中でも、江戸時代の広島城下、紙屋町に建っていた「紙屋の夫婦」が広めたという話が有名です。
この夫婦には愛してやまない娘がいましたが、ある日その娘に先立たれてしまいます。悲しんだ夫婦は、亡き娘のために、灯籠の土台へ美しい紙を貼り娘の墓前に備えて、娘の死を悼みました。これが盆灯籠の起源とされており、後に浄土真宗本願寺派の安芸門徒が広めたと伝えられています。この伝承は、浄土真宗本願寺派の安芸教区にある教務所が、2000年6月に発行した「仏事あれこれ小百科」にも記載されています。
灯籠は、提灯のように軒下や自宅へ飾るものではなく、家の外に飾る屋外用の照明器具で、本来は中に設置されたロウソクに火を灯して使用されるものです。石灯籠はその昔、中国大陸から日本に仏教が布教されると同時に伝えられました。
お盆にのみお墓に飾られる盆灯籠は「墓前灯籠」と呼ばれ、かつてはご先祖様や故人様をご供養するために火が灯されていたようです。現代では防災上の観点から、実際に火を灯すことはほとんどありません。
高知のお盆でも、灯籠は慰霊のための大切な道具として伝えられています。高知で作られる灯籠は、広島の華やかなデザインとはまた違った壮観な美しさが特徴です。この灯籠は「吊灯籠」といわれ、お墓には飾らずに、お盆のために組まれる祭壇の天井から吊します。
お盆の行事の一つに、灯籠流し(とうろうながし)があります。これは、死者の魂を慰めるため、火を灯した灯籠を海や川へ流し、故人様のご冥福を祈るというものです。灯籠の明かりには、ご先祖様や故人様の御霊が「迷わずにあの夜へ戻れるように」といった願いが込められています。
灯籠流しの起源は、終戦間もない広島の地で生まれました。原爆で亡くなった犠牲者への弔いと、街の復興の願いを込めた灯籠流しは全国的に広められ、現代にも受け継がれています。お盆の時期になるとテレビなどでも取り上げられているため、お盆の恒例として広く認知されています。
お盆では、さまざまな方法で御霊を慰める行事や儀式が行われます。行事の際に見られる心のこもった飾りは、ご先祖様や故人様の御霊だけではなく、私たちにとっても心身の癒やしになるでしょう。もしどこかの地域でお盆行事とのご縁があれば、歴史に思いを馳せながら、供養と感謝の気持ちを込めて親しんでみると良いでしょう。
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