2025-01-17
地蔵盆(じぞうぼん)とはその名のとおり、子ども達と縁の深い地蔵菩薩をお祀りし、子ども達を中心に楽しむ伝統行事です。一部の地域だけで行われるお祭りであるため、初めて耳にする方も多いかもしれません。そこで当記事では、地蔵盆が行われる地域、そしてその内容や由来、意味などを分かりやすくご紹介いたします。
日本の寺院を中心に、道端や街角など、さまざまな場所へ安置されているお地蔵様は「地蔵菩薩」と呼ばれ、子どもや地域の守り神とされています。地蔵盆とは、お地蔵様を供養するお祭りであり、縁を結ぶための盆行事のことです。
お地蔵様は、主に子ども達を守る仏様と考えられています。したがって、地蔵盆の主役は子ども達です。地蔵盆で行われる祭事の主な目的は、地域の子ども達が健やかに成長できるよう願うことにあります。
お地蔵様、いわゆる地蔵菩薩は、子どもの守り仏として古くから信仰されてきました。地蔵盆の由来は諸説ありますが、有名なのが「賽の河原(さいのかわら)」です。
親よりも早くに亡くなった子ども達の霊は、成仏する前に親を悲しませた罪として賽の河原へ送られ、延々と石を積まなければ成仏できません。しかし、石を高く積み上げると鬼が来て壊してしまいます。この繰り返しを哀れみ、助けの手を差し伸べたのが地蔵菩薩なのです。
地蔵菩薩は、錫杖(しゃくじょう)と呼ばれる杖を用い、自身が親となって子ども達を救い成仏させました。この逸話から、子ども達の守り神として崇められるようになったのです。地蔵菩薩は子ども達だけではなく、次第にさまざまな人々を救う道祖神(どうそしん)としての役割も担うと信じられるようになり、地域の守り仏として、さまざまな場所へ安置されるようになりました。
毎年お盆になると、地蔵菩薩を供養して、子ども達の無病息災を願うためにお祭りが行われます。一部地域で行われるこの行事は地蔵盆と呼ばれ、現代にも引き継がれているのです。
地蔵盆が行われる時期は、近年では8月23~24日の二日間にわたって行われるのが基本です。ただし、地域によっては近い日程の土日に組まれたり、一日にまとめて行われたりすることもあります。なお、2025年では、8月23日(土)・24日(日)の日程で開催される地域が多いようです。
地蔵盆の発祥地は京都で、そこから近畿地方を中心に広がりました。加えて、新潟県や長野県、北陸地方、九州地方の一部でも行われています。ただし、同じ地蔵盆でも、開催方法や流れ、時期などは地域によって異なります。しかし、どの地域においても、後世に伝えられるべき大切な行事であることに変わりはありません。
地蔵盆は、関東地方や東海地方には定着していません。その理由として、地蔵菩薩よりもお稲荷様への信仰が強かったといった説、江戸時代からようやく地蔵菩薩が建てられるようになり地蔵盆が定着しにくかったなどの説が挙げられています。
ここからは、地蔵盆で主に行われている一般的な行事内容をご紹介していきます。細かな内容は地域によって異なりますので、不安がある場合は地域の詳しい方にも聞いてみましょう。
数珠まわしの多くは、寺院で行われます。内容としては、直径2~5mほどの長い数珠で僧侶を囲み、老若男女が輪になって、中央の僧侶の読経に合わせ数珠を回していくというものです。
数珠まわしは「百万遍念仏(ひゃくまんべんねんぶつ)」とも呼ばれ、心身の浄化や邪気払いの効果があるといわれています。なお、子どもだけで数珠まわしを行う地域もあるようです。
地蔵盆には、お地蔵様に敬意を持ちご供養するといった意味も込められています。したがって、お地蔵様を柔らかな布などで丁寧に洗い清め、前掛けを新しいものに取り替えます。さらに、絵の具などを使ってお地蔵様にお化粧を施していくのです。色づけは地域によってさまざまですが、中でも赤い色には魔除けの効果があると信じられています。
子ども達とより縁の深いお地蔵様にお参りするのは、主に地域の子ども達です。お地蔵様にお参りした子ども達には、お菓子を配るのが通例です。
お参りした子ども達には屋台やゲーム、花火、福引きなど、さまざまな遊びも用意されます。地域にもよりますが、地蔵盆の時期だけは子どもが夜更かしをしても怒らないといった風習もあるようです。
お化粧を施したお地蔵様の周囲には、提灯を飾ります。提灯の色は地域によって決まりや伝統があるので、それに従いつつそれぞれの配色を楽しむと良いでしょう。なお、提灯には子どもの名前や地蔵尊の名前を書き入れる地域が多いです。
子どもの名前と地蔵尊の名前を両方書くことで「両者の縁を結ぶ」という意味があり、非常に縁起が良いこととされています。
地蔵盆では、縁日で大人達が盆踊りを踊ります。また、お地蔵様に対するご詠歌の奉納、手料理のふるまいなどを行う地域も多いです。
地蔵盆に使用されるお供え物は、子ども達がお下がりとして持ち帰りますので、主にお菓子やお餅を用いるのが一般的です。お金を包む場合は2,000~3,000円が相場となっているものの、地域によっては金額が決まっている場合もあるので確認してみると良いでしょう。
なお、袋は紅白蝶結びの水引がついたのし袋、または白い封筒を用意し、お金を入れてお供えします。地域によっては、仏事用の黄と白ののし袋を使うこともあります。
のし袋の表書きも、地域によってさまざまです。基本は「御尊前」「お供え」などと記入しますが、仏事ののし袋を使用する場合は「志」と記載することが伝統となっている地域もあります。のし袋や表書きは、用意する前に周りの方へ確認しておきましょう。
夏の日本には、風物詩といわれる慣習やならわしが多数あります。さまざまな仏様とのご縁を深く結ぶことができるのも、日本の行事ならではの特権です。もし地蔵盆に親しむ機会があれば、お子様を連れて健康と成長を願い、地蔵菩薩のご供養をしてみましょう。
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