2024-06-28
日本における古くからの風習の中でとくに有名なのは、毎年夏に迎えるお盆です。お盆は主にあの世から戻ってくる魂の鎮魂を目的とした飾りつけや催しが行われますが、大切なご家族が亡くなった後で迎えるお盆は通常のお盆とは違い、初盆と呼ばれる特別な時期となります。
そこで今回は、初盆とお盆の違いや初盆飾りに必要なものに加え、宗教ごとの初盆に関する概念、飾りの違いについてもご案内していきます。
初盆とは、ご家族の方が亡くなってから四十九日が経過した後、初めて迎えるお盆のことです。故人様にとっての初盆は、亡くなってから最初にこの世へ降りられる時期、つまり初の里帰りといった意味を持ちます。
お盆の時期は、地域によってさまざまです。大まかに分けると、7月13~16日の新盆、8月13~16日の旧盆のどちらかです。この日程までに四十九日を迎えていない場合は、翌年が初盆となります。
初盆(はつぼん)は地域によってその名に違いがみられ、初盆(ういぼん)、新盆(にいぼん/あらぼん/しんぼん)などとも呼ばれていますが、そこに含まれる意味に大きな違いはありません。
通常のお盆は、故人様の家にご親族が集まって仏壇へ手を合わせ、お墓参りを実施してから食事会をするなどといった小規模なご供養が一般的です。
一方初盆は、故人様がこの世を去ってから初めてのお盆にあたるため、通常のお盆よりも盛大に行われる傾向にあります。ご家族やご親族だけでなく、故人様が生前親しくされていた知人も招いて、僧侶の読経やご焼香を行う法要を執り行います。
初盆の飾りつけとは、初めて自宅に戻ってくる故人様の御霊が「道に迷うことなく自宅まで戻れますように」との願いが込められています。純粋な気持ちを込めて故人様をお迎えする作業の一環として、初盆の飾りつけが行われるのです。
ご自宅の初盆飾りについては、白提灯(しろちょうちん)を飾ります。飾る場所は、縁側の軒先や玄関などです。
まず盆棚を用意したら、位牌を一番上の中央奥に安置します。次に供花やお供え物、精霊馬、精霊牛、ほおずきなどを飾りましょう。さらに一番下の段には基本的な仏具(お線香・香炉・おりん・ろうそく・燭台)を設置していきます。
ここからは、初盆飾りに用意すべき基本の主要アイテムをご紹介していきます。
初盆飾りで用意しなければならないのは、霊を供養するために用意される御所提灯(ごしょちょうちん)の一つである白提灯です。白提灯は、白紋天(しろもんてん)とも呼ばれています。
白提灯は軒先や玄関へ吊るすのが本来の方法ですが、近年ではご自宅の事情で仏壇や盆棚の両脇、ベランダに吊るす方もいます。ご自宅内での設置をお考えであれば、便利な置き型も販売されていますので、仏具店やインターネットなどで探してみると良いでしょう。
白提灯の綺麗な白色は、初めて故人様に示すこの世への道標、清らかな心で故人様を迎え入れるご家族の気持ちが表現されています。白提灯を玄関先に飾ることで、初盆の到来をご近所へ知らせるといった意味も込められています。
白提灯は初盆の飾りに欠かせないものですが、使えるのはあくまで初盆の時のみです。初盆を終えたら、使用した白提灯は菩提寺でお焚き上げをしたり、送り火で一緒に燃やしたりするなどして処分しましょう。ただし、防災の観点から外で火を焚くことが禁じられている地域もあります。その場合、使用後の白提灯は紙袋に入れて塩で振り清めてから、家庭ごみとして処分しても問題ありません。
初盆では、盆棚(精霊棚)を用意します。これは、通常のお盆で使用される棚と同じもので、故人様の御霊を慰霊するための祭壇です。もし盆棚の用意が難しい場合は、経机(きょうづくえ)でも問題ありません。経机とは、お仏壇の前に置く専用の机のことです。
ほおずきは提灯と形状が似ているため、御霊があの世とこの世を往復する際の道を提灯のように明るく照らす役割を果たすといわれています。よって、御霊がどこかで迷ってしまわないようにとの願いを込めて飾られるのです。
まこもとは、水辺に群生する植物でイネ科マコモ属の多年草です。まこもは、盆棚へさまざまなお供え物を乗せる際の敷物として使用されますが、宗派によっては使用されない場合もありますので注意が必要です。
きゅうりは精霊馬、なすは精霊牛として盆棚に飾ります。精霊馬や精霊牛は、あの世とこの世を行き来する御霊のための乗り物です。精霊馬の足は速いのでお迎え時には精霊馬を、そして帰りはゆっくり落ち着いてお帰りいただくため、歩く速度の遅い精霊牛が使われると考えられています。
初盆で使う供花は、生花を用意するようにしましょう。お花は、日持ちのする白菊がおすすめです。初盆は喪中に行うご供養の機会でもあるため、派手な色のお花が目につくとあまり良い感情を持たない方も多いです。したがって、花の内容はある程度配慮した方が良いでしょう。
なお、故人様が生前に好きだったお花を飾るのも良いですが、トゲがあったり香りが強かったりする花は、仏教では好ましくないと伝えられているため、初盆以降のお盆でも避けた方が無難です。
素麺は精霊馬の手綱、またはお供え物などを精霊牛に括る縄として使っていただくためにお供えするという説があります。これは、初盆も通常のお盆も同じように考えて良いでしょう。
素麺は乾麺のまま飾ったり、茹でてからおつゆと共に供えたりするなど、地域によって供え方が異なるため、どちらが適切なのか事前に調べておきましょう。
水の子は、賽の目に切ったきゅうりやなすを洗ったお米と混ぜてから水で浸し、蓮の葉や里芋の葉の上に乗せてから飾られるものです。なお、水の子はご先祖様や故人様の喉を潤すためだけではなく、餓鬼道に堕ちた霊を慰めるために供えるとも考えられています。なお、お盆期間中は、水の子を毎日取り換えるよう心掛けましょう。
初盆飾りのお供え物では、地域や宗派により、その内容に違いがあります。ここでは、各宗派における初盆飾りの特徴を紐解いていきます。
浄土宗では、故人様の好んでいた嗜好品を供えることは良しとされていません。盆飾りにおいては盆棚へまこもを敷いたら、その上に仏壇から取り出したご本尊、位牌、果物や野菜などのお供え、仏具を配置していきます。なお、お盆の間は仏壇の扉を閉めましょう。
真言宗では、盆棚に精進料理を供えるのが大きな特徴です。まこもの上に位牌や仏具、精霊馬、食べられるようにカットした果物などをお供えした上で、精進料理を仏様の方へ向けて置くようにします。
曹洞宗では、盆棚にまこもは使用せず、変わりに白い布を敷きます。棚の中央にご本尊を、その手前には位牌を配置し、炊き立てご飯を盛りつけた仏飯(ぶっぱん)や精霊馬、そうめん、水の子、果物、水などを供えていきます。
浄土真宗の宗祖、親鸞聖人(しんらんしょうにん)の教えで「故人様は死後にすぐ仏様になり、いつでも我々に寄り添っている」という考えが語り継がれています。つまり、故人様やご先祖様がお盆にだけ戻ってくるという概念がないため、盆飾りや送り火による供養は行われません。ただし、初盆の白提灯に関しては飾っても問題ないとされています。
初盆は、故人様が亡くなった後、初めてあの世から御霊として戻ってくる尊い時期です。初盆は久しぶりにご家族がそろう大切な機会なので、心を込めて準備すると良いでしょう。
亡くなってから初めてのお盆では、ご家族や故人様のためにも手厚いご供養ができますように、この記事をお役立ていただければ幸いです。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
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大切なご家族が亡くなった後に初めて迎えるお盆は、初盆(はつぼん)または新盆(にいぼん)と呼ばれています。初盆は、故人様が亡くなった後、魂が初めてこの世へ戻ってくる貴重な時期のため、法要を行って供養するのが一般的です。 初盆の法要には、ご家族やご親族、それに生前故人様と親しくしていた知り合いの方も参列することになるため、香典やお供え物を受け取ることになるでしょう。そこで本記事では、香典返しの必要性や用意すべきもの、お返しする場合のタイミングなどについてご紹介いたします。