2023-07-14
一般的なご葬儀では、故人様のご遺体を納棺するという作業が行われます。通常、ご遺体と一緒にお花や副葬品を入れていきますが、その中で「六文銭(ろくもんせん)」が入った袋を目にしたことはないでしょうか。本記事では、六文銭を入れる意味、納棺する方法などについて解説しますので、興味をお持ちの方はぜひ参考にしてみてください。
六文銭は耳慣れない単語かと思いますが、これは江戸時代に使用されていた一文銭という硬貨が六枚そろったものを指します。
日本には、「人が亡くなると黄泉の国(死者の国)に行く」という言い伝えがあります。黄泉の国へ行くには三途の川を渡る必要がありますが、無料では渡れません。六文銭という「渡し賃」が必要なので、副葬品のひとつとして棺の中に納められます。
六文銭は、死装束の一部である頭陀袋(ずだぶくろ)に入れます。頭陀袋とは、仏具をご遺体の首からかけておく袋のことです。
故人様があの世で困ることのないよう、棺には六文銭のほかに食べ物などを一緒に納めることもあります。何を入れるかは地域によってさまざまですが、故人様に対する思いやりの気持ちが伝わる風習であることに変わりありません。
三途の川の渡し賃「六文銭」は、仏教の「六道銭(ろくどうせん)」がルーツであるといわれています。六道とは、人間の心の善悪から成る六つの世界で成り立っており、地獄道・餓鬼(がき)道・畜生(ちくしょう)道・修羅(しゅら)道・人間道・天上道で構成されています。
人はこの六道の中で生まれ変わりを繰り返すものといわれていますが、どの世界でも常に救いの手を差し伸べてくれるのが「六地蔵(ろくじぞう)」です。この六地蔵へ納めるお賽銭は、六道銭と呼ばれていました。後にこの六道銭が「六文銭」という呼び名へ変化して、三途の川の渡し賃になったとされています。
六文銭の「文」とは、江戸時代に使用されていた通貨で一番小さな単位です。現在の価値に換算すると、一文あたり30~50円程度の価値があるといわれています。したがって、三途の川の渡し賃としては、おおよそ180~300円程度の認識で良いでしょう。
ご葬儀の副葬品として六文銭を納棺する際、一定のルールを守る必要があります。本物の紙幣や硬貨を破損させたり変形させたりする行為は法律で禁じられていますので、棺へそのまま入れることはできません。
六文銭を棺へ納めたい場合は、紙に六文銭が印刷されたものや、おもちゃのお金、もしくは六文銭と書いてある紙を頭陀袋へ入れるようにします。また、あらかじめ「六文銭」と印刷した用紙を使うことも少なくありません。
副葬品とは、旅立つことになった故人様へ手向ける品物、故人様が生前愛用していた品物などを指します。このような副葬品を納める際にも細かなルールが存在するので、事前に押さえておきましょう。
棺は最終的に燃やされるので、燃えやすいものを納めるのが基本です。千羽鶴や菊などの生花、金属やビニールパーツなどを外した衣類などが良いでしょう。寄せ書きや手紙も最適な副葬品ですが、ご遺族以外の方が手紙を入れたい場合は、ご遺族の方に一言断りを入れるのがマナーです。
燃やすことで法律に触れる金銭、ならびに燃やす際に有害物質が発生するようなものを入れるのは避けるようにします。たとえば、燃えにくい金属やガラス製のものは棺へ納めてはいけません。
故人様が生前愛用していた時計や眼鏡などは、燃やすことなくご遺骨とともに骨壺へ納めます。携帯電話などの電子機器も、バッテリーの爆発が起こるおそれがあるため棺に入れてはいけません。また、有毒ガスを発するプラスチック製品や、遺骨を汚してしまう可能性が高いカーボン製品も控えましょう。
なお、先述した食べ物に関しては、こちらは燃えやすいものが多いため細かいルールはほとんどありません。しかし、スイカなど水分を多く含むフルーツは燃え残りが起きやすいため、棺へ納めないようにしましょう。
大切なご家族が亡くなった際、「棺の中へ思い出の品物を納めてお見送りをしたい」と思うのが心情です。このとき、人によっては六文銭を副葬品として棺に納めることもあるかと思いますが、一定のルールを守らないとトラブルが起きてしまうため注意しましょう。どのような行為がマナー違反かを把握し、大切な故人様との別れを偲ぶことが重要です。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
香典は、ご葬儀の場において故人様の御霊前へお供え物をする代わりに、ご遺族へお渡しする金銭です。「5,000円程度が香典の相場なのではないか」という意見も散見されますが、故人様との関係や地域によって金額のマナーは変わるため、注意が必要です。 そこで今回の記事では、香典の一般的な相場や香典袋の選び方、書き方、香典のマナーについて詳しくご紹介していきます。
故人様の死を偲びながら静かに過ごす一年間を喪中といいますが、喪中では慶事に参列したり、大がかりな旅行をしたりなどの行動を慎むことが、古くからの慣習となっています。本記事では、一年で最もめでたい時期と考えられているお正月に焦点を当て、喪中のご家庭でどのように過ごしていくべきかを解説していきます。
ご家族に不幸があった場合、玄関に「忌中」と書かれた札が掲げられます。この札は忌中札(きちゅうふだ)といって、日本の伝統的な様式です。目立つ位置に貼ることで近所の方々へ不幸を知らせるため、そして死の穢れを周りへ移さないようにするためという心遣いでもありました。 現代でも、各地域に忌中札の風習は残っています。そこで当記事では、この忌中札の意味や書き方、掲げる時期、掲げ方などを解説いたします。