2023-03-13
一般的に、ご葬儀には受付のスタッフが必要になります。ご葬儀の受付は経験する機会が少ないため、「受付を頼まれたけど何をすれば良いのか?」「必要なものはあるのか?」など悩んでしまう方も少なくありません。
今回は、ご葬儀の受付を頼まれた際の仕事内容について解説します。また、受付にふさわしい服装や言葉遣いなどのマナーについても紹介していきますので、併せて参考にしてください。
ご葬儀の受付係とは、当日に参列者から香典を受け取ったり、芳名帳への記載を促したりといった仕事をする係です。受付係は、一般的に故人様と血縁関係の遠い親族や友人・知人・会社関係の方に依頼するケースが多いです。ただし、家族葬など身内のみで行うご葬儀では親族が受付係をします。
「どうしても依頼する方が見つからない」といった場合は、葬儀社のスタッフが受付係をしますが、基本的には行いません。香典などの金銭を預かる業務であるため、トラブル防止の観点からも、積極的には引き受けないのです。
ご葬儀の受付係を頼まれたら、基本的には受けるのがマナーです。依頼を受ける際は、「このたびはお悔やみ申し上げます」とお悔やみの言葉を述べた後、「お手伝いできることがあれば引き受けます」と続けるのが丁寧です。
ご葬儀の当日、受付係は以下のような流れで仕事を進めていきます。
1:事前準備をする
2:参列者に挨拶する
3:香典を受け取る
4:記帳を促す
5:返礼品を渡す
6:会場へ案内する
7:香典を会計係に渡す
8:弔電などが届いたら責任者に伝える
各ポイントの詳細について、次項で詳しく解説していきます。
受付係は、ご葬儀の30分~1時間ほど前に会場へ到着しているようにしましょう。また、開始前には、芳名帳・香典帳・供物記帳簿・筆記用具・電卓などがそろっているか確認してください。セレモニー直営の葬儀式場であれば、道具がそろっているケースがほとんどです。
参列者が到着したら、ゆっくりと一礼をして「本日はお忙しい中、お越しいただきありがとうございます」と述べます。このとき、ゆっくりと丁寧に伝えるのがポイントです。また、雨が降っていたら「足もとの悪い中、お越しいただきありがとうございます」などと言い換えるのも良いでしょう。
参列者からお悔やみの言葉をいただいた場合は、「ありがとうございます」と伝えます。親族が相手の場合は「お悔やみ申し上げます」と伝えましょう。また、受付係はご遺族の代わりに参列者へ対応するため、明るすぎず暗すぎず、なるべく丁寧な対応を心がけましょう。
参列者から差し出された香典は、必ず両手で受け取りましょう。その際、「恐れ入ります」「お預かりいたします」など一言添えてから受け取るのがマナーです。なお、一昔前は「ありがとうございます」などのお礼はタブーとされていましたが、近年はそれほど厳しくなくなりました。
香典を受け取ったら、芳名帳への記名をお願いします。芳名帳を指し、「こちらにご記帳をお願いいたします」と促しましょう。その際、名前・住所など必ず記載して頂きたい項目を伝えると、ご遺族が香典返しの際に困らずに済みます。
また、近年はカード式の芳名帳も増えています。カード式の際は、記入スペースを指して「あちらでご記帳をお願いいたします」と促しましょう。
当日返しの品物を渡す際には、「お持ちになってください」などと一言添えましょう。また、後日香典返しをする場合は「会葬礼状」をお渡ししてください。
返礼品をお渡ししたら、会場へ案内します。案内する際は、会場を指し「あちらで行いますので、どうぞお進みください」といったように、参列者にお声がけください。
ご葬儀が開始されたら、会計係にいただいた香典を渡します。なお、会計係は改ざん・盗難・紛失のリスクを減らすために、なるべく複数人で行うのが良いとされています。
弔電が届いた場合は、芳名帳と別に残しておきますが、御供物帳がある場合はそちらに記載しましょう。また、弔電・お供え物は、司会者や会場の担当者に渡しておくようにしてください。
受付係は多くの参列者に対応するため、身だしなみに配慮が必要です。依頼したご遺族に恥をかかせないよう、相手を不快にさせない装いを心がけましょう。次項では、ご葬儀の受付にふさわしい服装のマナーについて解説していきます。
服装のマナーについては、一般的なご葬儀と変わりありません。以下の点に配慮し、身だしなみを整えましょう。
・服
喪服を着用するのが基本で、ジャケットは、ダブル・シングルのどちらでも問題はありません。また、シャツは白無地を選びましょう。
・ネクタイ
ネクタイは無地の黒色、素材は光沢のないものを選びましょう。ネクタイピンはご葬儀の場にふさわしくありませんが、ご葬儀用の真珠のネクタイピンは許容範囲とされています。結び方は、プレーンノットかウィンザーノットなどが無難です。
・靴下
靴下も無地の黒を着用します。ただし、つま先やかかとにアクセントカラーが入っているデザインは避けましょう。セレモニーホールでは靴を脱がないため見えないかもしれませんが、寺院の場合は靴を脱ぐケースが多いです。
・靴
黒色の革靴で、ストレートチップ・内羽式が理想です。ただし、持っていないからといって、わざわざ購入する必要はありません。エナメル素材ではない黒色の革靴で、金具の装飾がないものを選びましょう。
・時計
葬儀式場では、基本的に腕時計は外します。ただし、受付係の仕事をするときは、こまめに時間の確認をする必要が出てくるため、腕時計をつけても問題はありません。だからといって、文字盤が大きすぎるものやデザイン性の高いものを着用するのはマナー違反なので、間違えないようにしてください。
・アクセサリー
アクセサリーは、基本的に外しましょう。お守りなどでブレスレットをつけている場合なども同様ですが、結婚指輪はその限りではありません。
・髪型
髪型は、おしゃれなセットではなく清潔感を意識したものにしましょう。髪色が明るい場合は、市販のカラーリング剤などを使って黒く染めるのをおすすめします。
女性の場合も、通常のご葬儀とマナーは変わりません。当日は、以下の点に配慮しつつ身だしなみを整えましょう。
・服
黒のスーツまたはアンサンブルを着用しますが、光沢のある素材や柄がついているものは避けましょう。また、フリル・レースなどの装飾品もふさわしくありません。
・ストッキング
基本的には黒のストッキングを着用します。このとき、厚手のタイツはマナー違反で、できれば透け感のある40~60デニールのものを選ぶのが無難です。
・靴
靴は、黒色のパンプスを用意します。このとき、エナメルなど光沢のある素材はご葬儀の場にふさわしくないので、できるだけ避けるようにしましょう。ヒールはあまり高くないものが好まれるので、高くても5cmほどに留めておきましょう。
・バック
バックも無地の黒色が望ましいです。ご葬儀では、クラッチバッグのような小さなバックを用意しましょう。リュック・ショルダーなどのバックや、容量が大きすぎるバックはふさわしくありません。
・アクセサリー
女性の場合、真珠のネックレスやイヤリング、結婚指輪以外は基本的に外します。ただし、真珠のネックレスであっても2連のデザインは「不幸が重なる」とされているため、できるだけ避けるようにしましょう。また、イヤリングの場合は揺れるようなデザインではなく、耳たぶに密着しているデザインを選ぶのがマナーです。
・髪型
髪が長い場合は結び、短い場合はお辞儀をした際に顔にかからないよう、ピンなどで留めましょう。髪色が明るい方であれば、市販のカラーリング剤などを使って暗くするのが無難です。
・メイク
メイクはできるだけナチュラルに努めましょう。アイシャドウは明るすぎないブラウン系にし、リップやチークは赤すぎない色を選びます。また、幅の広いアイラインや濃いつけまつ毛なども、ご葬儀の場では避けるようにしましょう。
ご葬儀の受付係を依頼された場合は、参列するとき以上に配慮が必要です。ご遺族が信頼して依頼してくれているので、期待を裏切らないよう、注意するべきポイントはしっかりと把握しておきましょう。次項で解説するポイントは、ご葬儀を滞りなく終えるためにも必要となってきます。
受付係として、ご葬儀の流れを把握しておくのは必須事項です。開始時間・終了時間・出棺時間などの予定をしっかりと聞いておきましょう。もし疑問点がある場合は、遠慮せずに葬儀式場のスタッフへ聞いておくのが大切です。
何らかの理由によって受付係ができない場合、すぐに断りましょう。一度引き受けてから断ると、ご葬儀の準備が進まなくなってしまうほか、ご遺族の心証も悪くなります。断る際は、お悔やみの言葉を述べた後に「申し訳ありませんが、どうしてもお受けすることができません」と一言添えると丁寧です。
受付係は基本的に持ち場を離れられないため、焼香はご葬儀が開始する前に済ませておくのが一般的です。ご遺族や喪主に、「お先にお焼香をさせていただきます」と言葉をかけてから焼香をあげましょう。
ご葬儀の案内状に香典辞退の文言が記載されていた場合、基本的に参列者は香典を持参しません。しかし、なかには「どうしても受け取ってほしい」と持参してくる方もいらっしゃいます。この場合、「申し訳ございませんが、故人の遺志により香典は辞退申し上げます」と丁寧に伝えましょう。
忌み言葉とは、弔事の場においてふさわしくないとされている言葉です。以下の言葉が忌み言葉とされているので、使用しないように注意しましょう。
【例】
・重ね重ね
・いろいろ
・度々
・しばしば
・くれぐれも
・わざわざ
【例】
・再び
・また
・続いて
【例】
・死ぬ
・急死
・生きていたころ
ご葬儀の受付は、ご遺族に代わって参列者への対応をし、芳名帳への記載を促すのが主な仕事です。依頼された際は、基本的に断らずお受けしましょう。もし引き受けられない事情がある場合は、理由を丁寧に説明したうえで断るのがマナーです。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
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