2022-11-18
日蓮宗のお葬式では、他の宗派と比べてお葬式の流れが異なる部分があります。香典の相場やお焼香のマナーなど、参列する際は基本的な知識を把握しておくと良いでしょう。
今回は、日蓮宗ではない方でも心配もせずお葬式に参列できるよう、日蓮宗のお葬式マナーについて解説していきます。事前に大事なポイントを押さえておき、大切な故人様のご冥福をお祈りしましょう。
日蓮宗は、鎌倉時代中期に発生した仏教の一派です。開祖は日蓮と呼ばれる仏教僧で、戦乱で困窮していた人々を仏教の教えによって救おうとしたのがはじまりでした。
日蓮宗は多くの人々から指示され、現在では約350万人以上の信者が存在しています。
日蓮宗は、「法華経(ほっけきょう)」を経典としている仏教宗派です。法華経の教えが世界を救うと考えており、経典の中に明記されている「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」を唱えることが、何よりも大切と考えています。
日蓮宗は、仏教の根本的な考え方である「身分・性別関係なく、誰しもが平等に成仏できる」といった思想を重んじている宗派です。
日蓮宗のお葬式は、他の仏教宗派と違い会葬者・参列者全員で題目を唱えるのが特徴的です。また、戒名ではなく「法号」を授かるのも日蓮宗だけとなっています。
日蓮宗のお葬式では、「南無妙法蓮華経」と、お題目を唱えて故人様の魂を霊山浄土へ送る儀式を行います。霊山浄土とは、お釈迦様がいらっしゃる山の名称です。
「南無妙法蓮華経」を口にすることが仏になる修行と考えられており、お葬式の際は、僧侶だけでなく参列者も含めてお題目を唱えます。
日蓮宗では、お葬式の際に「戒名」ではなく「法号」といわれる名前が授けられます。違いは呼び方だけで、意味はほとんど変わりありません。
元々は産まれた際に門徒(信者)となる証として授けられていましたが、現代では亡くなった後にもらう場合がほとんどです。
日蓮宗のお葬式にかかる時間は45分~1時間ほどです。時間は他の宗派とほぼ同じですが、一連の流れが異なります。お葬式に参列した際に戸惑うことがないよう、事前に主な流れを把握しておきましょう。
①開式の宣言
葬儀社のスタッフによって、開式の宣言が行われます。
②総礼(そうらい)
僧侶や参列者が「南無妙法蓮華経」と3回唱えます。
③道場偈(どうじょうげ)
さまざまな仏様をお迎えするための曲を流します。
④三宝礼(さんぽうらい)
仏教の三宝である「仏法僧(釈迦・法華経・日蓮)」に対して礼拝を行います。
⑤勧請(かんじょう)
仏様たちをお迎えするための儀式です。
⑥開経偈(かいきょうげ)
法華経をたたえ、教えに出会えたことに感謝します。
⑦読経
経典の中の、特に大切とされている部分を拝読します。
⑧咒讃鐃鈸(しゅさんにゅうはち)
仏様たちを供養するための演奏です。ただし、僧侶の人数が少なければ省略される場合があります。
⑨開棺(かいかん)
「中啓」と呼ばれる扇子の仏具で棺の蓋を叩きながら僧侶がお経を唱える儀式です。「これから悟りに入る」と予告する意味があります。
⑩献供
茶・膳を供えます。なお、事前に供えて省略する場合もあります。
⑪引導(いんどう)
故人様をこの世から旅立たせるための引導を渡す儀式です。払子と呼ばれる仏具を3回振り、焼香を3回あげたのち引導文を読み上げます。
⑫焼香
参列者が順番に焼香をあげます。
⑬祖訓
開祖である日蓮が記した言葉を拝読します。
⑭唱題
お題目である「南無妙法蓮華経」を唱えます。
⑮宝塔偈(ほうとうげ)
法華経のすばらしさをたたえる偈文を唱えます。
⑯回向(えこう)
故人様が亡くなられた後「良いところへ行けますように」と祈る儀式です。
⑰四誓(しせい)
人々を救うとされる言葉を唱えます。
⑱三帰(さんき)
お葬式の終盤に、「仏教の三宝である仏法僧に帰依します」と誓いを行います。
⑲奉送(ぶそう)
仏様たちをお見送りする儀式です。
⑳退場:導師、式衆が退場します。
僧侶が退場し、葬儀社から閉式が述べられたら、お葬式は終了です。
仏教は、各宗派によってお葬式のマナーに若干の違いが見られます。次の項目では、日蓮宗のマナーについて「服装」「数珠」「香典」「お焼香」の順に解説していきます。
日蓮宗であっても、服装のマナーは他の宗派と変わりありません。男性、女性ともに正喪服または準喪服を着用するのがマナーです。もし「平服」と指定されている場合は、黒やネイビーといった落ち着いた色合いのものを着用しましょう。
お子さんの場合は、学校指定の制服があれば制服を着用します。もしいなければ、ダークカラーなどの落ち着いた色の衣服を用意しましょう。このとき、たとえ子どもだからといって、派手な洋服を着させるのは好ましくありません。
日蓮宗の正式な数珠は、玉が108個ある「勤行数珠」です。親玉と房が両端についているのが特徴的で、2重の輪にして使用します。ただし、必ず勤行数珠を持参するというルールはなく、すでに数珠を持っている場合、改めて購入する必要はありません。
香典に関しては、日蓮宗だけの特別なルールはありません。他の宗派と同じように、四十九日までは「御霊前」、四十九日以降は「御仏前」と表書きを記入します。また下段には氏名を書き、袋の後ろに住所・フルネーム・金額を記しますが、金額を記入する際は、漢数字の旧字体を用いましょう。
以下に、香典の相場をリストアップしましたので、金額を決める際の参考にしてください。
・両親…50,000~100,000円
・兄弟姉妹…30,000~50,000円
・祖父母…10,000~50,000円
・叔父・叔母…10,000~30,000円
・友人…5,000~10,000円
・会社関係…5,000~10,000円
・ご近所の方…3,000~10,000円
関係性によってそれぞれ異なるので、一般的な相場を把握しておくと良いでしょう。
日蓮宗のお焼香は、次の順番で行います。
①焼香台の前へ進み、ご遺族と参列者それぞれに一礼
②焼香台の前で合掌し、一礼
③右手の親指と人差し指で抹香を摘み、火種に落とす流れを3回行う
④数珠を持ち合掌
⑤焼香台から2~3歩下がり、ご遺族と参列者それぞれに一礼
⑥座席へと戻る
上記のように、細かい決まりが多々あるので、不安な方は参列前に確認しておきましょう。
日蓮宗は、お葬式で参列者が「法華経」を唱える、戒名の代わりに法号を授かるなど、他の宗派と比べて異なる点が多いです。そのため、日蓮宗のお葬式に参列する際に戸惑ってしまう方も珍しくありません。故人様のご冥福を心からお祈りするためにも、事前に宗派が分かっている場合は知識をつけておくのも大切です。