2022-08-08
日本で「ご葬儀」といえば、仏式でのご葬儀を想像する方がほとんどです。しかし、日本には仏教のほかにも「神道」といわれる日本に古くから存在する宗教があります。
今回は、日本の伝統的な宗教である「神道」のご葬儀について解説します。仏式で執り行うご葬儀との違いや神式で執り行うご葬儀の主な流れ、香典袋のマナーなども紹介していきますので、知識のひとつとして身につけておきましょう。
神式のご葬儀は「神葬祭(しんそうさい)」と呼ばれています。日本に古くから存在する宗教「神道」の考え方に基づいて執り行われるご葬儀で、仏式とはまったくの別物とされています。なぜなら、仏教と神道ではそもそも死生観(死や生に対する考え方)が違うからです。
仏教では、死者(故人様)の魂は極楽浄土へ行き、「仏」になると考えられています。一方、死者(故人様)は家の守り神となり、子孫を見守り続けるというのが神道の考え方です。宗教と神道はそれぞれの死生観に基づいてご葬儀を執り行うため、おのずとご葬儀の内容が変わってきます。
仏式は、「故人様の魂をあの世(極楽浄土)へ送る儀式」としてご葬儀を執り行うのに対し、「日常を取り戻すための儀式」としてご葬儀を執り行うのが神式です。
神道には「先祖崇拝」と「穢れ(けがれ)」という2つの概念が存在します。「先祖崇拝」とは、その名のとおりご先祖様を大切にする考え方です。故人様の魂が家の守り神となるのも「先祖崇拝」の考え方からきています。
そして、もう1つの「穢れ」とは、「死」を意味します。神道において、「死」とは生命力が少しずつ減少していく良くない状態を指し、この状態から日常を取り戻すために執り行われるのが「神葬祭」です。神葬祭を節目として、神道では日常が取り戻されたものとします。
神式のご葬儀の流れは、仏式のご葬儀とはまったく異なります。下記で提示するのは一般的な神式におけるご葬儀の流れですが、実際は地域の風習によって若干の違いがあるとされています。
1.帰幽奉告(きゆうほうこく)
帰幽奉告は、ご自宅にある神棚や祖霊舎(仏式における仏壇のようなもの)の神様に対して、故人様が亡くなったことを報告するものです。神式では、帰幽奉告の際に「穢れ」が移らないように神棚や祖霊舎の扉を閉じて「神棚封じ」といわれる白い半紙を貼ります。
2.枕直しの儀
枕直しの儀は、故人様の枕を北枕にして安置する儀式です。このとき故人様の顔を白い布で覆い、白い小袖を着せます。また、故人様の近くに小さな祭壇を用意し、故人様が好きだったものや米・塩・水をお供えします。
3.納棺の儀
納棺の儀は、故人様のお体を清め、死装束を着せて納棺する儀式です。白い布で覆うだけの場合もあります。納棺を済ませたら、喪主から順番に拝礼を行います。その際、「二礼二拍手一礼」を行いますが、納棺の儀の場合は音を立てないで拍手をする(忍び手)のがマナーです。
1.通夜祭(つやさい)
通夜祭とは仏式におけるお通夜のような儀式で、神官が祭詞(さいし)や祭文(さいもん)を奏上します。ご遺族や参列者はその間、玉串を奉って拝礼します。
2.遷霊祭(せんれいさい)
遷霊祭は、故人様の魂を霊璽(仏式における位牌のようなもの)に移す儀式です。遷霊祭では夜の暗闇を模し、部屋を暗くして行われます。神道では、魂が動く時間帯は夜とされているからです。
1.葬場祭(そうじょうさい)
葬場祭は、仏式におけるご葬儀のようなものです。ご遺族や参列者様は葬場祭で故人様に最後のお別れをします。神職者は「祭詞奏上(さいしそうじょう)」「玉串奉奠(たまぐしほうてん)」の2つを行います。
2.火葬祭(かそうさい)
ご遺体を荼毘に付す前に行われるのが火葬祭です。火葬祭を行ったのち、ご遺体は火葬されます。
3.埋葬祭
故人様のご遺骨を埋葬する儀式です。以前は火葬場から直接ご遺骨を持っていき埋葬するのが一般的でしたが、現代では一度自宅に持ち帰る方も多いです。一度持ち帰った場合、神葬祭から50日後に行われる「五十日祭」で埋葬します。
4.帰家祭(きかさい)
帰宅後に行われる儀式が「帰家祭(きかさい)」です。帰家祭では、塩や手水で清めたのち、霊前に神霊祭が終了したことを報告します。
5.直会(なおらい)
直会は神官や関係者を労うために開く宴会のことです。この直会が終われば儀式はすべて終了となり、その後は節目の年に霊祭を行って故人様を供養します。
玉串奉奠(たまぐしほうてん)とは、仏式におけるお線香や焼香のようなものです。玉串とは、榊(さかき)の枝に紙垂(しで)と呼ばれる紙を下げたもので、玉串奉奠にはこの「玉串」を使用します。
仏式では、僧侶が読経を行っている間に焼香をあげますが、神式においてはご遺族や参列者が順番に前へ進み玉串奉奠を行います。玉串奉奠の手順は以下のとおりです。
1.順番がきたら、祭壇の前へ進む
2.ご遺族に会釈
3.神官の前へ進み出る
4.一礼し、両手で玉串を受け取る
5.玉串案(玉串をのせる台)の前まで進む
6.祭壇に一礼する
7.右手で玉串の根元を手前に持ってくる
8.根元を左手に持ち替える
9.根元が祭壇に向くように右回りさせる
10.根元を祭壇に向けて玉串案に置く
上記で解説した手順はあくまでも一般的な玉串奉奠の手順であり、地域によっては榊を使用しない場合もあるので注意しましょう。
神式のご葬儀では、仏式と同じように服装や香典の包み方に細かなマナーが存在します。次の項目では、神式のご葬儀における守るべきマナーについて解説していきます。
神式のご葬儀でも、仏式と同様に喪服を着用します。喪服のマナーは仏式と同じですが、数珠は仏式のご葬儀で使用するものであるため神式のご葬儀に参列する場合は必要ありません。
神式のご葬儀における香典は「玉串料(たまぐしりょう)」と呼ばれています。不祝儀袋は白黒もしくは双銀の水引がついてあるものを使用するのが一般的です。
不祝儀袋を購入する際、蓮の花が書かれているものを選ばないようにしましょう。蓮の花が描かれているものは仏教用の不祝儀袋であり、間違えて使用してしまう方も少なくありません。
また、表書きは「御玉串料(おんたまぐしりょう)」「御神前(ごしんぜん)」などと書くのが一般的ですが、「御榊料(おさかきりょう・おんさかきりょう)」と記入しても問題ありません。
神式では、「ご供養」「ご冥福」「供養」といった言葉は使用しません。なぜなら、どちらも仏教的な言葉だからです。神式のご葬儀に参列する場合は、どの言葉が仏式の言葉なのか事前に把握しておくと安心です。
仏教と神道を混同している方も多いのですが、これらはまったくの別物です。なかでも死生観に大きな違いがあり、執り行われるご葬儀の内容も同じではありません。神道のご葬儀に参列するときは、今回ご紹介した基本的な流れやマナーについて一度見直し、周りの人の迷惑とならないような行動を心がけてみてください。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
神式での冠婚葬祭では「玉串料(たまぐしりょう)」を納めます。これは仏教では見られないものであり、そのため「玉串料を用意しなければならなくなったけど、具体的にどんなところに気をつければいいの?」と悩んでしまうケースも少なくありません。今回は、「玉串料の詳しい内容や意味が分からず悩んでいる」という方に向けて、神道における玉串料の意味や初穂料との違い、ご葬儀における金額の相場・包み方・渡し方などについて解説していきます。
神式にてご葬儀を執り行った場合にも、ご葬儀後に仏式でいう回忌法要のような供養儀式が営まれます。家を守る神様となった先祖を祀る行事である神道の追悼儀式。日本でのご葬儀の約9割が仏式となりますので、神道の追悼儀式についてなじみが薄い方もいらっしゃるかもしれません。 そこで今回は、仏式の法事・法要にあたる神道の追悼儀式の流れや参列する際のマナーなどについてご紹介します。