2020-02-07
「精進落とし」といえば、「ご葬儀の時に親族が集まって行う食事」という認識はあっても、どういった意味があるのか、精進落としの流れなどについてよく知らないという方も少なくないのではないでしょうか。
そこで今回は、「精進落とし」という儀式がどんなものか、精進落としの流れやマナーなどについてご紹介します。
精進落としとは、初七日法要や火葬の後に、親族や司式者をはじめお世話になった方などにふるまう食事のことをいいます。「お斎(とき)」や「お清め」と呼ぶこともあります。
かつては仏教の思想に基づき、身内が亡くなった際に四十九日法要までの喪に服す期間に精進料理(肉・魚や酒を断った食事)を食し、忌明けに精進料理から普段の食事へと戻すことを「精進落とし」と呼んでいました。
しかし、現在では四十九日の忌明けを待たずに初七日法要をもって精進期間を終わらせるという考え方が一般的となり、「精進落とし」の意味が、「初七日法要を終えた後の会席」を指すように変化してきました。
さらに今日では、ご葬儀・告別式以降に親族一同が再び集まることが難しくなってきたために、本来であれば故人様が亡くなって7日目に営まれる初七日法要を、ご葬儀・告別式当日の火葬後あるいはご葬儀・告別式に組み入れて初七日法要を行なうこと(繰り上げ法要・繰り込み法要)が一般的になってきました。
精進落としは、以下のような流れが一般的とされています。
司式者をはじめ出席者が着席したところで喪主が挨拶を行います。ご葬儀・告別式が滞りなく執り行われたことを出席者に報告し、感謝の意を伝えます。
会食の席で乾杯はつきものですが、精進落としの席では故人様に敬意を表して杯を捧げる「献杯」を行います。故人様に捧げるためですので、静かに「献杯」と発声し、杯は控えめに掲げましょう。杯と杯を打ち合わせることも、拍手も行いません。
精進落としは司式者や親族をはじめとした方々に感謝し労をねぎらう宴席ではあるものの、故人様を偲ぶために設けられた場でもあります。そのため、故人様の生前の思い出を語らいつつもあまり騒がしくならないようにしましょう。
開始から1~2時間程度を目安とし、出席者の食事の進み具合なども見ながら、喪主または親族代表者から精進落としを終了する旨の挨拶を行います。なお、今後の法要の日程が決まっているようであれば、この時にお伝えしましょう。
帰途につく出席者に返礼品をお渡しします。会場の出口付近で別れの挨拶をしながら手渡したり、紙袋にまとめたものを会食中に出席者の足元に置いて回りお渡しすることもあります。
精進落としにお呼びする範囲は、ご葬儀・告別式の流れによって異なりますが、一般的に火葬場にお越しいただいてお骨上げしてくださった方々である司式者や故人様の会社関係の方、親しい友人・知人、親族になります。
精進落としの席に案内する時は、一般的に、一番上座に司式者(僧侶)、次に世話人、故人様の会社関係の方、親しい友人・知人、親族の順に席に着いてもらいます。喪主とご遺族は入口付近で一番の末席に座るのがマナーです。
なお、司式者が精進落としを辞退された場合は、「お膳料」と「お車代」を包んでお渡しします。
「精進落とし」に掛かる費用は、注文先や料理の種類、ランクなどによって変わってきます。葬儀社に依頼して料理を手配してもらうか、懐石料理店、仕出し弁当を注文します。注文する際は、料理の種類だけでなく参列者の料理のアレルギーもあらかじめ確認しておくとよいでしょう。出席者の中に子どもがいたら、子ども用の料理も考慮しましょう。
精進落としの料理が足りないと大変困りますし、多過ぎても無駄になってしまいますので、あらかじめ出欠確認を行い、葬儀社に相談の上、見積もりを取り、事前に確認をしておきましょう。
精進落としの際は、全員が席に着いてから、献杯の挨拶をします。(宗派や地域によっては行わないことがあります)。喪主の都合がつかない場合は、親族の代表者など代わりに挨拶を行います。
皆様、本日は大変お世話になりました。
皆様のお力添えのおかげで、通夜と葬儀・告別式を無事に終えることができました。
皆様へお礼の気持ちを込めて、ささやかではございますが、精進落としの席をご用意いたしました。
故人の思い出話をしながら、お時間の許す限り、どうぞおくつろぎください。
本日は誠にありがとうございました。
精進落としの挨拶と同じ方が献杯の挨拶を行う場合は、精進落としの挨拶に続き、「献杯」の挨拶を行います。精進落としや法事などの席で行う「献杯」は、故人様を偲び、悼むために盃を捧げることを指しますので、グラスを打ち付けて音を出したり、拍手も行いません。
それでは、これより献杯をさせていただきます。
ご唱和をお願いします。
献杯。
精進落としの挨拶をされた方とは別の方が挨拶をする場合は、はじめに簡単な自己紹介をし、故人様のエピソードや思い出話を添えた後、「献杯」と静かに言います。
皆様、どうぞお手元のグラスをお持ちください。
故○○君の友人の○○でございます。
中学生以来のお付き合いで、いつも趣味のバイクのことで語り明かしたり、ツーリングしたり、かけがいのない仲間でした。そして〇〇君は責任感があって、何かと頼れる友人でした。
故○○君を偲び、献杯をさせていただきます。
御唱和をお願いします。
故○○君の安らかなご冥福と皆様のご健勝を祈念いたしまして、献杯。
ありがとうございました。
精進落としは、1~2時間を目安としてお開きにするのが一般的とされています。出席者の食事の進み具合なども見ながら、喪主または親族代表者が締めの挨拶を行います。なお、このときの挨拶を「精進落とし締めの言葉」「精進落とし退席の言葉」とも言います。
精進落としの締めの挨拶をする時点で、納骨や法要などのスケジュールが決まっているようであれば、その際にお伝えしまししょう。
皆様、本日は、長時間、最後までお付き合いくださり、誠にありがとうございました。亡き〇〇もさぞかし喜んでいることと存じます。
まだごゆっくりしていただきたいところですが、皆様もお疲れのことと存じますのでまもなくお開きにさせていただきたいと思います。
皆様、どうぞお気をつけてお帰りください。
本日は誠にありがとうございました。
精進落としと似た会席に「通夜振る舞い」があります。
通夜振る舞いは一般参列者にも参加してもらうケースが多く、出席者の数は流動的です。また、通夜振る舞いは、故人様との思い出を語る場としての食事会という一種の「偲ぶ会」であると言えます。
一方、精進落としに出席する方は、火葬場まで同行する人、つまり親族を中心とした近しい人と司式者であり、出席する人数はあらかじめ分かっていることがほとんどです。また、精進落としも通夜振る舞いと同様に故人様を偲ぶ席という色合いもありますが、実情としては司式者や親族らの「労をねぎらう宴席」という色合いが強いです。
なお、地域によっては通夜振る舞いを親族のみで行うというように、それぞれの地域や宗旨宗派によって異なります。分からないことや不安なことがあれば、ご葬儀の担当者に確認しましょう。
現在では司式者や参列者の労をねぎらうための「おもてなし」の場としての意味合いが強い精進落としですが、皆で故人様との思い出話に花を咲かせることが何よりの供養になります。
また、残された喪主をはじめとしたご遺族にとって、精進落としは一つの区切りです。 故人様を偲びつつ、悲しみの中にも新たな一歩を踏み出すきっかけとして、穏やかな気持ちで精進落としに臨みましょう。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
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