2022-11-11
社葬は企業をあげて執り行うご葬儀なので、事前の準備が非常に重要です。しかし、社葬に馴染みのない方も多く、いざ社葬を執り行うとなった際、どのように準備を始めれば良いのか分からず困ってしまうことも少なくありません。今回は、社葬を執り行うにあたって必要となる準備の内容や、当日の流れについて解説していきますので、お困りの方はぜひ参考にしてみてください。
社葬とは、通常のご葬儀とは違い、個人ではなく企業が施主となって執り行うご葬儀のことを指します。社葬は、故人様のご冥福をお祈りするだけでなく、故人様の功績をたたえるために執り行われるともいわれています。
一般的に、企業の創業者や社長、経営に携わる役員の方が亡くなった際に社葬が執り行わることが多いです。しかし、状況によって異なるものの、一般社員であっても社葬が執り行われることがあります。
「お別れ会」は社葬の別称で、内容も社葬とさほど変わりありません。しかし、社葬ではなく「お別れの会」と称する集まりは、社葬よりも少しくだけた形式で執り行う傾向にあり、故人様の功績をたたえることを重視する場合が多いです。
たとえば、ホテルで立食パーティーのような形にしたり、故人様の功績をまとめた映像を流したりといったように、比較的自由度が高い形式・演出がよく見られます。
社葬では、喪主をご遺族が、施主は企業が担当します。しかし、社葬において施主が表立って出てくることはなく、社葬の運営のサポートに回ることが多いです。
施主と喪主は、同じ意味の言葉として使われがちですが、それぞれ違う意味を持っています。喪主は、ご葬儀の打ち合わせや参列者への対応など、ご葬儀を執り行ううえで必要な事柄に関わっています。一方、施主はご葬儀の費用を負担するなど、運営のサポートに回ることがほとんどです。
通常のご葬儀では、喪主が施主を兼任するのが一般的ですが、社葬ではそれぞれの役割がはっきりと分かれるため、区別がつきやすいかもしれません。
社葬を執り行うにあたって、「葬儀委員長」をたてることがあります。葬儀委員長は、社葬全般を取り仕切る最高責任者としての役割があり、企業の代表者や重役が務めるケースが多いです。
また、葬儀委員長は施主としての役割を持っているため、社葬の準備から後処理までさまざまな業務に携わらなければなりません。
一般的に、社葬は四十九日法要の前に執り行われることが多いです。この日程に合わせられない際は、故人様が逝去されてから1~2ヶ月の間に執り行います。
他にも、四十九日法要が年末年始やお盆・ゴールデンウィーク・決算期に被ってしまう場合には、四十九日法要の日程を調整して社葬を執り行う例も見られます。
当然ですが、社葬を執り行うにはさまざまな準備が必要で、まずはご遺族へ社葬を執り行っても良いかの意思確認から始まります。その後、日時の確認や予算の設定など、行うべき事柄は多いです。
次の項目では、社葬を執り行う前に行う準備について解説していきます。
社葬を執り行うにあたって、特に大切なのはご遺族の意向です。ご遺族に対して、「なぜ社葬を執り行いたいのか」をしっかりと説明しましょう。特に盛り込むべき内容は以下の2つです。
・故人様がどれほど企業に貢献していたか
・どれほど多くの方が、故人様に生前のお礼とお悔やみを伝えたいと思っているのか
上記の旨をしっかりと伝え、ご遺族の理解を得ましょう。このとき、ご遺族は悲しみの渦中にいるため、失礼がないよう言動や振る舞いに注意してください。
社葬の当日までは、ご遺族と密に連絡を取らなければなりません。そのため役員会議を設ける必要があり、同時に葬儀委員長を決めていくことになります。
葬儀委員長は、企業の代表者が務めるパターンが多いです。また、亡くなられた方が代表者だった場合には、基本的に副社長や役員の方が葬儀委員長に任命されます。
葬儀委員を決定した後は、社葬取扱規程に沿って準備を始めます。社葬取扱規程には、社葬の有無や形式といった「社葬の指針」が明記されています。社葬取扱規程に沿って決める内容は、以下をご参照ください。
・式場
・社葬の形式
・日時、場所
・予算
・香典、供花、供物、返礼品
・参列者の予定人数
・社内での係の割り振り
(葬儀委員のメンバー、受付係、会計係、案内係、記録係、来賓対応係など)
・依頼する葬儀社の名称
式場が決まらないと、日時や予算の設定もままならないため、場所の決定は最優先で行う必要があります。また、葬儀委員で話し合われた内容は必ず議事録に残しておきましょう。
社葬の大枠が決まった後は、葬儀社との打ち合わせを行います。葬儀社を決めるときは、社葬を執り行った経験が豊富にある葬儀社に依頼すると安心です。その際に、故人様の宗派を把握しておくと、話し合いがスムーズに進みます。
次は社内への通達を行いますが、これはなるべく早めに済ませなければなりません。なぜなら、新聞で訃報記事が出てしまうなどして、情報が外部へ漏れてしまった場合、問い合わせの対応で業務が回らなくなる可能性があるからです。
また、各部署へ伝達文を回しておくと、訃報を知った外部からの問い合わせに対し、統一した対応が叶います。伝達文を回す際には、電話口では対応できない内容を確認するための連絡先を明記しておくと親切です。
社内への通達後は、社外の関係者へ社葬の案内を出さなければなりません。故人様の友人・知人にあたる方には、事前に作った連絡簿を利用して案内状を送付しましょう。
また、大切な取引先や関係団体などに連絡するときも案内状を送ります。ただし、ご葬儀と告別式を別で行う場合、告別式の案内状を出すパターンが多いです。
なお、原則として社葬の案内状に挨拶文を書く必要はありません。社葬の日時や場所、問い合わせ先の電話番号などを記入します。届いたころを見計らって、確認の連絡を入れると安心です。
また、新聞や広告に社葬の案内を掲載する企業も存在します。特に地元の有名企業になると、新聞記事として取り上げられることも少なくありません。もし広告を出す場合は、社葬の2週間前を目途に掲載してもらいましょう。
関係各社に案内状を出し終えたら、社葬当日の流れの詳細となる「社葬進行要領」を決めます。社葬進行要領の具体的な内容は、以下をご参照ください。
・式次第(具体的なタイムスケジュールなど)
・葬儀委員の役割分担
・席次
・拝礼順
もちろん、上記はあくまで一例であり、企業によって決める項目はそれぞれ異なります。メンバー全員と話し合い、実際の状況をイメージしながら社葬進行要領を詰めていきましょう。
社葬当日は、以下の流れで進みます。
①ご葬儀の導線確認や打ち合わせを行う
②参列者の受付をする
③式次第に従って社葬を執り行う
ここからは、上記3つのステップについて詳しく解説していきます。
社葬の当日は、社葬開始時刻の2~3時間前には集合しましょう。特に葬儀委員長は、供花の確認や弔電を読む順番を決めていく必要があります。その他再度各自の役割を確認し、それぞれの担当で最終チェックを行うことが重要です。
ご遺族が会場に到着したら、社葬をどのように進めていくか再度確認します。その後、供花やお供え物がきちんとそろっているかチェックし、弔電の順番を決めましょう。
受付係は参列者の香典を受け取り、芳名帳へのサインをお願いします。また、「本日はお忙しい中お越しいただき、ありがとうございます」など一言添えるようにしましょう。そして、社葬が執り行われる10~15分前には、参列者全員が着席していられるような体制を整えるのが理想です。
社葬は、事前に決めた式次第に沿って執り行われます。下記に一般的な式次第を記載していますが、これはあくまでも一例であり、状況によっては順番が異なる可能性もあるのでご注意ください。
・開式
司会者もしくは葬儀委員長によって、社葬の開始が宣言されます。
・僧侶による読経
故人様のご冥福を祈って読経が行われます。
・故人様の経歴紹介
故人様の職務経歴や企業での功績、周りからの評判などの紹介がなされます。
・弔辞
弔辞は3~4人ほどが行い、4~5分ほどにまとめるのが理想とされています。
・弔電
参列できなかった方からいただいた弔電が読み上げられます。
・葬儀委員長からの挨拶
葬儀委員長の挨拶が行われます。故人様との思い出や、これまでの業績に対する感謝の言葉などが述べられるのが一般的です。
・喪主挨拶
葬儀委員長の挨拶の次は、喪主からの挨拶です。喪主は、参列していただいた方々に向けてお礼の言葉を述べます。
・読経
場合によっては、喪主からの挨拶が終わった後に読経が行われます。
・焼香
焼香の順番は社葬を執り行う企業によってさまざまですが、喪主の挨拶の次に焼香といった流れが一般的です。
・葬儀委員長焼香
葬儀委員長による焼香が行われます。葬儀委員長は、焼香し終えたら遺影に黙とうし、ご遺族に一礼します。
・喪主焼香
葬儀委員長に続き、喪主も焼香を行います。
・ご遺族・親族焼香
喪主の焼香が終わった後は、ご遺族や親族による焼香が行われます。
・来賓者、その他参列者焼香
ご遺族や親族による焼香の後は、参列者や来賓者が焼香を行います。参列者が多い場合、代表者のみが焼香を行うことも多いです。
・閉式
葬儀委員長から、閉会の宣言が行われれば社葬は終了となります。
社葬は、執り行われた後にも行うべきことが多くあります。葬儀委員のメンバーは、社葬後に以下の項目に取り組まなければなりません。
①お礼の挨拶回りをする
②弔辞や参列者をまとめる
③社葬費用の会計処理を行う
特に社葬費用の会計処理は、税務上の観点から見てもしっかりと行うべき事項です。次の項目では、これら3点について詳しく解説していきます。
社葬後は、お世話になった方への挨拶回りが必須です。特に、弔辞をお願いした方にはできる限り顔を合わせて挨拶を行いましょう。
よほど遠方にいる方でない限り、企業の代表者が出向くのがマナーです。また、供花や弔電を用意してくれた方にはお礼状を送付します。
弔辞や参列者などの名簿をまとめ、報告書として記録しておく必要があります。記録しておくべき内容は、主に以下の3つです。
・弔辞、弔電
弔辞をお願いした方や、電報をいただいた方の企業名・役職・指名をリスト化し、保管を行います。
・参列者
芳名帳や名刺をもとに、参列者の名簿を作成します。
・香典
香典をいただいた場合、金額・企業名・郵便番号・住所・氏名・電話番号をまとめ、金額順にリスト化します。
上記の情報をまとめて作成したリストは、一部コピーして喪主へ渡しましょう。また、原本は社葬に関する資料となるため大切に保管します。
葬儀社や式場などに費用の支払いを行った後、発生した費用を計上し、会計報告書を作成しましょう。このとき、以下に挙げる費用は福利厚生費として損金算入できます。
・社葬に必要な用具一式
・火葬場の料金
・お布施
・ご遺体を搬送した車両の費用
・納骨にかかった費用
・訃報通知にかかった費用
・参列者へのお礼状または返礼品にかかった費用
・通夜振る舞い、精進落としなどの飲食代
・社葬で流したビデオや写真にかかった費用(撮影費用も含める)など
一方、以下の項目は損金に計上できないため注意が必要です。
・戒名料
・香典返しの費用
・墓地、墓石に関係する費用など
他にも、参列者からいただいた香典に関しては、企業の収益として計上可能です。収益として計上する場合は、「益金」として扱われます。香典を収益とした場合、香典返しの費用は福利厚生費(社葬関連費用)として計上できない場合が多く、交際費として処理するのが一般的です。
最後に、社葬の参列マナーについて解説していきます。社葬は、ご遺族や企業にとって大切な行事のひとつなので、失礼のないよう事前にマナーを心得ておきましょう。
社葬の香典相場は10,000~100,000円といわれています。一般の参列者は10,000~30,000円、企業の代表者名で香典を出す場合は30,000~100,000円が相場です。他にも、供物や供花を送る場合もあります。
社葬が執り行われる場合、基本的には企業の社長や幹部の方が参列するのがマナーです。また、故人様と同等の役職についている方が参列することもあります。どうしても参列が難しい場合、代理人を立てることも可能ですが、それでも役職者を選ぶ方が無難です。
企業の代表者や役職が参列できず、さらに代理人も立てられない場合は弔電を送付しましょう。このとき、宛名は喪主ではなく葬儀委員長にするのが一般的です。
社葬は、故人様のご冥福をお祈りするとともに、生前の功績をたたえるための場でもあります。また、企業をあげてのご葬儀になるため、事前準備が非常に大切です。社葬を執り行うと決まった際には、社葬取扱規程などを整えつつ、当日に向けて必要な準備を進めていくようにしてください。
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