2022-04-22
時代の流れとともに、ご葬儀のあり方は大きく変化しています。近年では「直葬」を選ぶご家族の割合が増加しており、形式にこだわらない方が増えてきました。
しかし、直葬を選ぶ方はまだ全体の数パーセント程度と少数派です。参列した経験のない方も多いため、どのようにセレモニーが行われていくのかを知っておく必要があるでしょう。
この記事では、ご葬儀に直葬を選ぶときに注意したい点やメリット、大まかな流れについて解説いたします。費用相場やマナーについてもお伝えしていきますので、ぜひ最後までご覧ください。
直葬とは、一般的なご葬儀の流れから「通夜式」や「告別式」などの儀式を省いた形式のことです。火葬のみを行うため、「火葬式」と呼ばれる場合もあります。
従来はお亡くなりになった翌日にお通夜、翌々日に告別式と火葬を行っていましたが、直葬の場合はご遺体を24時間以上安置した後に、火葬だけが行われます。
時折、家族葬と混同して認識している方もいますが、家族葬とは通夜式や告別式を親しい方のみで行う形式のご葬儀です。直葬の場合は、故人様を偲ぶ気持ちは同様であるものの、可能な限りのセレモニーを省略したご葬儀となっています。
直葬が選ばれる背景には、核家族化や少子高齢化、宗教観の変化などがあります。豪華なご葬儀ではなく、最期のときを静かに迎えることを希望するご遺族が増えているため、簡略化された儀式が選ばれるようになりました。
直葬では、通夜式や告別式などの儀式を行う一般的なご葬儀と比べて費用を大幅に抑えられます。
直葬を行う葬儀社の中には相場よりも低料金であることを宣伝している業者もありますが、必要な物品などが含まれておらず、追加費用が発生する可能性があります。予算内に抑えたいとお考えの方は、葬儀社を選ぶときに注意しましょう。
病院→安置所・安置所→火葬場までの搬送代
安置施設の使用料
ドライアイス
棺・骨壺・棺に納める花束など
火葬料金
運営スタッフの人件費
火葬手続き代行費用 など
直葬を行う場合、最低でもこれらの物品やサービスが必要です。追加費用がどのくらい発生するのか気になったときは、上記のリストを参考にしてください。
直葬にはメリットだけでなく注意点もあります。後から親戚間や菩提寺とトラブルになって後悔しないためにも必ず覚えておきましょう。
①:経済的な負担が軽い
②:参列者への対応が必要ない
①:ご親族やご友人・知人への配慮が必要
②:菩提寺に納骨できない場合がある
どの項目も知っておきたい内容ばかりですので、メリットと注意点あわせてご覧ください。
直葬であれば経済的な負担が軽くなるため、費用を予算内に抑えたいご遺族に選ばれています。一般的なご葬儀と違って通夜式と告別式が省かれるため、最低限の費用で火葬まで行ってもらえます。
通夜式や告別式などの儀式が省かれるため、参列者への対応が必要ありません。ご家族や少数の親戚のみで行われるため、受付係などの手配も必要なくなり、気持ちや負担を軽減できます。
直葬を選ばれた場合、通夜式や告別式を行わないので、亡くなられた方との最期のお別れができなくなる方もいらっしゃいます。そのため、あらかじめご親族の同意を得て、ご親族やご友人・知人への配慮を怠らないように注意してください。
理解を得ておかないと、後々トラブルになる可能性があります。参列を希望するご友人や知人に対しては、弔問に訪れていただく機会を設けるとよいでしょう。
お付き合いのある寺院や菩提寺がある場合、納骨できない可能性が出てくるかもしれません。直葬では僧侶を呼ばないことが多いので、お布施も不要です。
しかし、直葬を選んだことで菩提寺との関係が悪くなってしまい、戒名をつけてもらえない、納骨を拒否されてしまうなどのトラブルが発生する可能性も考えられます。そのため、直葬を選ぶときには事前に菩提寺に伝えておき、供養について相談しておくとよいでしょう。
直葬は以下の流れで進められることが多いです。
①臨終・安置
②納棺
③出棺
④火葬
⑤骨上げ
それぞれの詳細については、次項を見ていきましょう。
お亡くなりになった後は、葬儀社に連絡をしてご遺体を安置してもらう手配をします。安置場所は自宅でも問題ありませんが、法律により死後24時間は火葬が禁止されているため、ご遺体を寝かせるための布団を敷くスペースが必要です。
病院で亡くなられた場合には死亡診断書を発行してもらい、安置場所まで移動させます。病室では長時間の安置はしてもらえません。
自宅で亡くなられた場合には、事件性がないか調査が行われる可能性がありますので、ご遺体を移動させないようにしましょう。死亡診断書は、かかりつけ医が死亡の確認と死因の特定を行った後に発行します。
直葬を行うときは、ご遺体の安置場所を決めておく必要があります。自宅にスペースがない場合には、安置施設に搬送してもらうための手配を行ってください。
亡くなられた方を死装束や好んで着ていた衣類で身を包み、棺へ納めます。愛用していた品や花なども一緒に納められますが、不燃物など禁止されているものもあるので葬儀社の担当者に確認しましょう。
一般葬では、納棺後に通夜・告別式が行われますが、直葬では通夜・告別式を行わず、このままお別れの時間を迎えます。
火葬場の予約時間に合わせて、出棺します。時間に遅れることのないよう、ルートや交通状況を確認のうえ、出発するようにしましょう。
火葬場へ到着したら、亡くなられた方と最期のお別れをします。火葬前に僧侶を呼び、短い読経をしてもらうことも可能ですので、菩提寺やお付き合いのある寺院がある場合には相談しましょう。
火葬には1~2時間程度かかりますので、火葬場の控室で待機します。
火葬が終わったらアナウンスに従って火葬炉の前に行き、火葬が終わった遺骨を骨壺に収める「骨上げ」を行います。
骨上げは血縁の深い順に2人1組で同時に遺骨をはさみます。骨を足側から拾い、最後に喉仏を骨壺に納めるのが一般的です。地域によっては1人が遺骨を掴んでもう1人に箸渡しをするなど、ルールには差もあります。
このような作法が行われるのは、ご葬儀の場では、通常と「逆」を行うしきたりに準じているためです。「箸をたがえる」「2人で箸をはさむ」などの作法は一般生活においてはマナー違反ですが、日々行わない作法をすることで死やご葬儀と日常生活を切り離す目的があります。
実は、箸を使用することにも意味があります。箸わたしの「箸」を三途の川の「橋」と考えることで、故人様を三途の川へ「橋渡し」するという意味です。ここではしきたりやマナーについてご紹介しましたが、地域によって若干の違いもありますので、詳しくは火葬場にいるスタッフの指示に従いましょう。
直葬では通夜式や告別式は行われませんが、どのようなマナーがあるのでしょうか。
服装のマナー
香典のマナー
挨拶状のマナー
ご遺族の方が知っておきたい上記のマナーについて、次項で解説いたします。
直葬の場合、通夜式や告別式が行われる一般的なご葬儀ほど厳しくはありません。喪主は喪服の着用が望まれますが、その他の参列者は黒のワンピースや黒のスーツで構いません。いずれにしても派手な色の服装や肌の露出は避けて、火葬場にいる他のご遺族に不快な思いをさせない服装を心がける必要があります。
直葬は身内だけで行われるケースがほとんどのため、香典の持参は不要な場合が多いようです。ただし、香典とは本来、助け合いの精神に基づいたものですので、香典を出すことに問題はありません。
親族以外の方が出席する場合には、喪主から「香典はいりません」との意志が示されていない限り、持参する必要があります。不祝儀袋に「御霊前」や「御仏前」「御香典」と表書きし、新札でないお札を包みましょう。香典の相場は10,000~100,000円程度ですが、知人や会社関係者の場合には5,000~10,000円程度で構いません。
香典を頂いた立場の場合は、後日香典返しをしましょう。香典は即日返し、もしくは四十九日でお送りすることが多く、香典の1/3~半額程度の品をお返しするのが一般的です。
ご葬儀の場における挨拶状とは、参列に感謝するため、または無事にご葬儀を終えたことを報告するために差し出すものです。直葬の場合は身内ですべてを済ませることが多いので、亡くなられた方の逝去を知らせる死亡通知として送ります。
直葬の場合は、逝去から1~2週間程度の間に、できる限り早めに送付する必要があります。挨拶状を送る相手は、故人様が親しくしていたご友人・知人、家族関係者、ご葬儀に参列していない親族、年賀状のやり取りをしている相手などがふさわしいでしょう。
今回の記事では、直葬を選ぶときに注意したいポイントやメリット、大まかなご葬儀の流れについて解説いたしました。知っておきたいマナーや費用相場もお伝えしていますので、ぜひ参考にしてください。
直葬は近年増えてきたご葬儀の形式ですが、参列した経験がないとどのような流れで儀式が行われていくのか分かりにくいものです。親戚や菩提寺とのトラブルを未然に防ぐためにも、基本的な知識について知っておく必要があります。
直葬なら少ない予算でも故人様を偲ぶことができますが、格安を宣伝する業者の中には、ご葬儀に必要な物品を追加オプションに設定しているケースがあるので注意してください。業者選びの際には、必要な物品やサービスなどが基本料金に含まれているかなどを参考にすると、後から大幅に費用が膨れ上がる心配がありません。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
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